きらなちゃんはゆっくりクローゼットを開けた
「ごちそうさまー」
「ごちそうさまでした」
「食器洗いはお母さんに任せなさい。あなたたちはお部屋に行って遊んでるといいわ。お母さんも食器洗い終わったらお部屋に行くからね。メイクの練習するんでしょ?」
「あー、忘れてた。お風呂入る前にするつもりだったんだった! まあいっか、顔洗うだけでも、別に体までメイクするわけじゃないからね」
「私、お化粧なんてほとんどしたことないよ」
「大丈夫。お母さんに任せときなさい。すっごく可愛くしてくれるはずだから」
「うん、ちょっと緊張する……」
「あはは、じゃあ上行ってようか」
私たちはごちそうさまをして二階のきらなちゃんの部屋に戻った。
「ねえ、きらなちゃん」
私はクローゼットの前に正座をした。
「ん? なーに?」
「開けていい?」
「ダメー! ダメダメダメー!」
「なんでえ、そんなに隠されると見たくなっちゃうよ。あ、そうだ、黒髪きらなちゃんは? どこ?」
「あ、えっとねえ……。そ、そういえばそんな写真なかったようなー」
慌てた顔でとぼけて見せるきらなちゃんは嘘ついていることが丸わかりだった。
「うそー! きらなちゃん嘘ついてる! わかるもん」
「くっ、バレたか。みせたいのは山々なんだけど、見せるにはこのクローゼットを開けるしかないんだよね……」
「みせてみせて!」
「だって、恥ずかしいし……」
「私だって恥ずかしいけど頑張ってやってきたもん! 今日だってきらなちゃんの恥ずかしいお洋服きたもん」
「私の服は別に恥ずかしくないわよ」
そっか、きらなちゃんにとっては恥ずかしくないんだった。
「ふふ。ねえ、ちょっとだけ。お願い」
「お願いするたかしちゃんがかわいいっ!」
「もう、そんなこと言っても誤魔化されません」
「だめかあ。じゃあ、目瞑ってて、アルバムだけ取り出すから。クローゼットの中みないで」
「えええー、そんなに恥ずかしいの? 見たいなあ。私もなんか見せるから。だからお願い。みせてみせてー」
「だってたかしちゃん恥ずかしいのないじゃん」
「ないけど……」
きらなちゃんはうーんと唸って、ほっぺを赤くしながら言った。
「じゃあ、おんなじ写真撮ってみせてくれる?」
「おんなじ写真?」
「そ、たかしちゃん一人じゃ取れないから忠にも手伝ってもらわないといけないんだけど……。今から見せる写真とおんなじ写真撮ってみせてくれるなら、みせてもいいかも」
「ええー? ただしくんと? 一緒に写真かあ、撮ったことないから確かに恥ずかしいかも。でも、いいよ。どんな写真? みせてみせて!」
「絶対に笑わないでよ?」
「笑わないよー」
「絶対に忠とおんなじ写真撮ってね?」
「うん! 撮る!」
「じゃ、開けるね」
きらなちゃんはゆっくりクローゼットを開けた。中は綺麗に整頓されていて。写真が何枚も飾られていた。
「わ、わー!」
初めて綺羅名ちゃんの黒髪時代を見た。ツインテールじゃなくて片っぽだけのツインテール。サイドテールっていうんだっけ。で、髪は今と同じくらいの長さで、癖っ毛だ。
「かわいいー! 新鮮ー! 黒髪のきらなちゃんだ。お化粧してないんだね。でもかわいい、綺麗ー」
「やっぱ綺麗っていうんだね」
「うん、きらなちゃんは綺麗だよ。美人さんだよ」
「私ね、かわいいって言われたくて、髪型とかメイクとかかわいいよりにしてるんだ」
「かわいいの方がいいの? でも、かわいいよ? かわいいけど綺麗! あ、ここの写真、隣に写ってるの全部阿瀬くんだ、わー! このお写真のきらなちゃん阿瀬くんのほっぺにちゅーしてる!」
「そうよ! この写真を見せたくなかったのよ。恥ずかしすぎるでしょ」
「これ何年生の時?」




