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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとお泊まり
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でさ、たかしちゃんに質問なんだけど、このニンジンって中だと思う?

「お母さん、ちょっと寒くない?」

「それはあなた達が水遊びしたからよ?」


 きらなちゃんは体を抱きしめるようにしている。


「そう言うことかー。ってかもう七時十五分じゃん! ご飯の時間じゃん!」

「まだなにもできてないけれどね。あ、でもご飯だけは炊いといたわ。だから二人でカレー作ってね」

「お母さんの助言は?」

「んー、無しにしましょうか。カレーのパッケージの裏にレシピが書いてあるから、それを見たら二人でもできるわ。それに使う材料はお肉以外全部出しといてあげたからね。じゃあお母さんはお風呂に入ってくるから、よろしくね」

「はーい。任せて! たかしちゃんがいるから大丈夫」

「それは頼もしいわね。よろしくね、たかしちゃん」

「は、はい!」

「ふふふ、じゃあね」


 きらなちゃんのお母さんはリビングから出ていった。

 ついに晩御飯作りが始まった。

 私たちはキッチンに行った。流し台の上にはジャガイモとニンジンとタマネギ、それからカレーのルウが置いてあった。


「今日、きらなちゃんのお父さん帰ってくるの?」

「ううん、今日は帰ってこないよ。今日からフライトあるんだって」

「フライト?」

「うん、私のお父さんパイロットなんだ。空港の近くに住めばいいのに、わざわざこんな田舎に住むって馬鹿だよねえ。帰ってくるのも行くのも大変なのに。田舎がいいんだってさ」


 パイロット……。


「ええー! きらなちゃんのお父さんってパイロットだったんだ! すごい! かっこいい!」

「でしょー、見た目も結構イケメンよ。お母さんはいい男を掴んだと思うわ。お父さんもだけど。たかしちゃんのお父さんはなんの仕事してるの?」

「んー、大工なんだって。でもあんまり詳しくは知らないや。橋を作ったりとかしてるらしい」

「そうなんだ、お父さんの仕事気にならないの?」

「気になるけど、難しそうだし、それに仕事の話よりしたい話がいっぱいあるから聞いてないなあ」

「なるほどねえ。これさ、材料全部使っていいのかな?」

「パッケージに書いてあるって言ってなかった?」


 二人でカレーのパッケージの裏を見た。


 十二皿分。

 肉 五〇〇グラム。

 タマネギ 中四個。

 じゃがいも 中三個。

 にんじん 中一本。

 サラダ油 大さじ2。

 水 一四〇〇ミリリットル。


「十二皿分も作るの?」

「うん、多分」


 食べ切れるかなあ。


「ていうかこのタマネギとかの中ってなに? 大中小の中?」

「多分、その中だと思う」

「でさ、たかしちゃんに質問なんだけど、このニンジンって中だと思う?」


 きらなちゃんはニンジンを一本もってニンジンをじっと眺めていた。


「わ、わかんない。でもその人参は小さいと思う。多分」

「ってことは小ってこと? 小なら二本? 三本?」

「二本かなあ? きらなちゃん、このじゃがいもは、中?」


 こんどは私がじゃがいもを持ってきらなちゃんに聞いた。


「いや、わかんないわ。じゃがいものサイズなんて全然わかんない」

「じゃがいもは袋の中には五個入ってるねえ。玉ねぎも五個入ってる。人参は三本だね」

「中ってのが全然わかんないわ! このじゃがいもは大きいの? 小さいの?」

「わかんない。おおきい! って思うくらいには大きくはないねえ」

「小さい! ってほど小さくもないわね。でも中くらい! って言うほどでの大きさでもない気がするわ」

「ど、どうする?」

「ううーん」


 きらなちゃんはすごく考え込んだ。ついにはしゃがみ込むくらい考え込んだ。


「よし!」


 立ち上がってきらなちゃんが大きな声を上げた。


「わっ、びっくりしたあ」

「あはは。でも決めたわ、もう全部使う! 全部小よこの野菜達は! 少ないよりは多い方が美味しいでしょ!」

「なるほど! 大は小を兼ねるだね!」

「そう言うこと! で、レシピは……」

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