あはは、雨だあ。冷たくて気持ちいい
大ありなんだ。なんだろう、すごく気になる。
「そうなんだ。そういえば、阿瀬君とはいつ知り合ったの?」
水がようやく腰の位置まで溜まってきた。あともうちょっとだ。
「んー、小一になる前かな。だから、年長さん? 私がここに引っ越してきた時、蹴人も丁度同じ時期に引っ越してきたんだよね。私の方が少し早かっただけど、お隣に同い年のお友達が引っ越してきたって思って嬉しかったんだよねえ」
「お隣がお友達かあ。いいなあ。楽しそうだなあ」
「そうそう、それでね、蹴人がね、窓からこっちに移ってこようとして落ちたことがあったんだよね」
落ちた!
「えええ、阿瀬君大丈夫だったの?」
「命に別状は……ていうか、全然平気だったんだけど、それ以降窓から渡っちゃダメって怒られちゃって。まあ、それからもこっそりやってるけど」
「ふふふ、やってるんだ。最近は?」
「最近はやってないかなあ、中学生になってから話す機会減っちゃったねえ。窓越しには話すけど。宿題やったーとか、早く寝なさいよーとか」
「ふふ、お母さんみたい」
「今でこそ蹴人はサッカー部のエースだけど、昔はおっちょこちょいでずっと私が面倒を見てたからねえ。なんか同い年なのに同い年って感じしないのよね」
あの阿瀬君が昔はおっちょこちょいだったんだ。
「じゃあ阿瀬君の方が弟?」
「弟って感じでもないのよねえ。一応……好きだし……。なんか、面倒みたい、守ってあげないとって思う」
「なるほどお、私もきらなちゃんに守ってもらってるし、阿瀬君は守られ仲間だったのかあ」
「そんな大層なことはしてないどねー。とか言ってるうちにだいぶ水溜まったよ」
水は胸の辺りまで溜まっていた。
「二人だと狭いねえ。おりゃ」
「わあっ。やったなあ! とりゃあ!」
「うわっは、きたきた。ここまで溜まればたかしちゃんもできるのね」
「お水気持ちいねえ」
「ねー、我ながらいいこと考えついたわ」
きらなちゃんはいっつもすごい。次から次へと楽しいことを考えつく。恥ずかしいこともあるけど、それも含めて私はとっても楽しい。
「シャワー!」
「わーああばばわー、気持ちいー」
「なんだあ、嫌がると思ったのに」
「きらなちゃん貸して」
「はい」
きらなちゃんからシャワーを受け取った。
「それっ!」
「ぶー」
「ふふふ、ぶーってなにー?」
「ほんとだ、気持ちいね。それ逆さにしたら雨になるんだよ?」
「こう?」
ばだばだとシャワーの雨が浴室に降り注いだ。
「あはは、雨だあ。冷たくて気持ちいい」
「でしょ、でもこれやると天井びしょ濡れになってお母さんに怒られるんだけどね」
「えええ」
私は慌ててシャワーの雨をやめた。天井はびしょ濡れでもう遅かった。
「あはは、たかしちゃんがやったんだー。私やってないもーん」
「うわーん、きらなちゃあん私怒られる? 怒られる?」
「さあどうだろう。怒られるかなあ。私しーらない」
「いやーん、やだやだー怒られたくないよう。きらなちゃんも一緒にしたことにして? ね?」
「どーうしよっかなー」
「わーん、きらなちゃああん。お願いだからあ」
「しっかたないなあ、シャワー貸して。それっ!」
私からシャワーを受け取るときらなちゃんはシャワーの雨を降らせた。これで同罪だ。一緒に怒られてくれる。きらなちゃんは優しいなあ。
「はっ、いいこと思いついた」
「なになに?」
「おりゃあー」




