ふっ、何もかもさ
水着を着たきらなちゃんのお胸がぺったんこになっていた。
「きらなちゃんの水着ってなんかかっこいいね、ダイワ中学校の水着はこれなの?」
なんだかきらなちゃんの水着は赤とか黄色とかで模様もついていて格好良かった。
「ううん、これは私が水泳部入ってた頃の競技用。ね、胸ぺったんになるでしょ? 水の抵抗無くすためだと思う」
「うん、なんかかっこいい。ちょっと羨ましい」
私の水着はただのスクール水着だ。きらなちゃんいいなあ。
「他の人はたかしちゃんとおんなじ感じのやつだよ。一緒かどうかまではわかんないけど」
「そうなんだ。でも私、水着を着てお風呂に入るの初めてだよ」
「そうなの? 私何度かやったことあるよ。一人でだけど」
「ふふふ、なんでそんなことしたの?」
「うーん、思いついたから?」
「ふふふふ、きらなちゃんは面白いねえ」
「そうかねえ。じゃ、入ろっか」
二人でお風呂場に入った。きらなちゃんちのお風呂場は私の家のお風呂場よりも少し大きかった。それに床のタイルも壁も真っ白で綺麗だった。
「わあ、綺麗だねえ」
「そ? たかしちゃんとこも相当面白かったよ? 古民家って感じがして!」
「私はこっちの方がいいなあ、綺麗だし、虫も出なさそうだし」
「たしかにね……。とりあえず汗ながそっか」
「そうだね」
きらなちゃんはシャワーを出した。お湯と水を切り替えるハンドルを、思い切り水の方に回して、私にかけてきた。
「にゃっ、冷たーい。びっくりしたあ。でも気持ちいよ!」
私は汗を洗い流すように腕や足を手で擦った。
「じゃ次私にもかけてー」
「はあい」
無防備なきらなちゃんの顔に水をかけた。
「ぶばっ」
「ふふふ」
「やったなあ! ていっ!」
簡単にシャワーを奪い取られてしまった。
「ばばばば、きらなちゃん、ストップストップ」
顔にかけるきらなちゃんの手を掴んで、止めた。
「あはは、やっぱ水浴びって楽しいねえ」
「暑い時にはちょうどいいかもしれないね」
きらなちゃんは自分の体にシャワーを当てて、汗を洗い流した。
「やっぱつからないとね」
水道をシャワーから蛇口に変えて、きらなちゃんは浴槽に水を溜め始めた。まだ溜まっていない浴槽に、きらなちゃんは座り込んだ。
「ほら、たかしちゃんもおいで」
「うん」
全然水の貼られていない浴槽に座るのは初めてだった。お風呂掃除を任された時に、空っぽの浴槽に入って掃除はするけれど、座り込むことはない。なんだか不思議な感じだった。
「全然水入ってなーい、不思議ー」
お尻にだけ水がある感じがする。徐々に水位が上がってくる。ちょっとこそばゆい。
「えええ、これもやったことないの? 楽しいんだよ、どんどん溜まっていくの」
「やったことないよう。初めましてだよ」
「徐々に水に浸かっていくのがまた楽しいんだー。ちょっと溜まった水でも遊べるしね。おりゃ」
きらなちゃんが少し溜まった水を手ですくってかけてきた。
「わー、おりゃー」
私もやり返さんとばかりに水をすくってかけた。
「ふふふ、たかしちゃんへたっぴだなあ。全然水飛んできてないよ」
「あれえ。いっぱい取ったのに。おりゃー」
今度こそ。水をすくってきらなちゃんにかけた。
「あはは、全然だよーたかしちゃんはもっといっぱいにならないとダメそうだな。おりゃ! おりゃ!」
「うわー! なんでえ? 何が違うんだろう」
「ふっ、何もかもさ」
きらなちゃんは少し格好をつけて言った。
「ふふふ、何そのポーズ。何もかも?」
「そ、何もかも、私とたかしちゃんは何もかも違うんだー」
「ふふふふ、変なポーズ取らないで。でも確かに……何もかも違うかも」
「だから仲良しなんだー。ねーたかしちゃん」
きらなちゃんは向かい合って座っていたのを、横に向いて座り直した。私もおんなじように横になってきらなちゃんにもたれかかった。