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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんとお泊まり
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トラップってなんだろう。罠……かな?

「あっついねー」

「夏だもんねえ」

「たかしちゃんちょっと待ってて、ボールとってくるから」


 きらなちゃんは私にそう言い残して阿瀬君の家の方へ入っていった。


 ガレージには車が停めてあって、その奥に入っていったきらなちゃんが見えなくなっているから、いま何をしているかわからないけれど、多分、車の後ろにある倉庫みたいなところを探ってるんだと思う。きらなちゃんの家にも車の後ろに倉庫みたいなものが置いてある。きらなちゃんの家の車はうちの車よりちょっとおっきい。


「お待たせお待たせ。ボール持ってきたよ」

「それ、阿瀬君の?」

「そうだよ。蹴人の」

「勝手に使って怒られない?」

「大丈夫大丈夫、いつも使ってるから。じゃあ行こ!」


 いつも使ってるって誰がだろう。


 公園の、遊具がある方じゃない、グラウンドになっているところに、私ときらなちゃんは離れて立った。きらなちゃんの足元にはボールが置いてある。


「よっし! じゃあ行くよー!」


 きらなちゃんはボールを蹴った。


「わあああ」


 速い。転がってくるボールが速い、強い。私は頑張って足を出したけど、当たることもなくボールはそのまま私の後ろに転がっていった。


「あはは、ごめんごめん、相手が蹴人の感覚で蹴っちゃった。もっとゆっくりの方がいいね」


 私は後ろに転がって行ったボールを走って取りに行き、手に持ってさっき立っていた場所に戻ってきて、足元にボールを置いた。


 緊張する、ボール蹴れるかな。


 私は足を振り上げてボールをきらなちゃん目がけて蹴った。でも、残念なことに、きらなちゃんの方には転がらず、右に逸れていった。


「おお、いいじゃん、こっちまで届いたよ! 威力は問題なしだね! あとはコントロールだ。意外といい線いってるじゃん」

「そ、そうかな」

「そうだよ、運動音痴とかいってたから、ボールにも当たらないのかと思った」

「そ、そんなことは……なかったみたい」


 そんなことないよ。って言いたかったけど、もしかしたらその可能性を否定できなかったのでいうのはやめにした。


「じゃあ次私ねー、さっきよりもゆるーく蹴るからちゃんと受け取ってねー!」

「はあい」


 きらなちゃんが、今度は緩く蹴ってくれた。そのボールは綺麗に私の足元に転がってきた。私はそのボールを踏ん付け……ようとしたらそのまま後ろに転がっていった。


「違う違う、ボールは踏むんじゃなくて足に当てるだけでいいんだよー」

「踏まないの?」

「踏まないの、足に当てるだけ」

「わ、わかったあ」


 また、私は後ろに転がって行ったボールを取りに走って、定位置に戻ってきた。足元にボールを置いて、蹴ろうとした時、きらなちゃんが走り寄ってきて、アドバイスしてくれた。


「あのね、ボールを蹴るのはつま先じゃなくて、足の側面で蹴るの。こっちの内側のね。それで、反対の足は軸足って言うんだけど、軸足の先を、蹴りたい方向に向けるの、そしたらそっちの方向に転がっていくからね。そーっと蹴ってみ? あ、だけど、私に届く強さでね」

「う、うん、わかった」


 えっと、軸足は、きらなちゃんに向けて。足の横でそーっと、でもきらなちゃんに届くように、蹴る!


「おお! うまい! うまいじゃんたかしちゃん!」


 ボールはゆっくり転がって、きらなちゃんのちょっと手前で止まった。惜しい、もっと強く蹴らないときらなちゃんには届かないのか。そーっと蹴りすぎたな。


「上手上手! これならすぐ上達するよ! たかしちゃん全然運動音痴じゃないじゃん!」

「私、運動音痴じゃないのかなあ」


 綺麗に蹴れたことが嬉しくってはしゃいじゃう。もしかしたら私は運動音痴じゃないんじゃないかとすら思えてきた。次はきらなちゃんに届くように蹴ろう!


「蹴るのはほぼほぼオッケーだね、じゃあ次はトラップだ」

「トラップ?」


 トラップってなんだろう。罠……かな?

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