ううう、きらなちゃんが怖い。鋭すぎる。
「もう二時かー」
「早いねえ、まだ何にもしてない気がするのに」
「あはは、たかしちゃんその服着てるの忘れてるでしょ」
あ、そうだった。お着替えしたんだった。それに、この格好で金子さんまで歩いて行ったんだ。忘れてた。河童に全部持って行かれてた。
「よーし、じゃあ何する? たかしちゃんの恋バナでもする?」
「もう! またあ! 昨日天文部だったんだから、何にも起こってないよう」
「でも、電話はしたんでしょ?」
「え、なんで知ってるの? もしかしてただしくんから聞いた?」
「いや、なんとなくよ。感よ感」
「ばかあー、感で当てないでよう。電話はたまにただしくんからかかってくるけど。昨日だってたまたまだったのに。なんで当てるのさあ」
「私はなんでもわかっちゃうのよ」
ううう、きらなちゃんが怖い。鋭すぎる。
「で、なんの話したの?」
「普通だよう。ただしくんの部活のこととか、天文部のこととか、あとおやすみなさいとか」
「それだけえ?」
「あ、あとプールのことについて聞かれたよ。わかんなかったからわかんないって言っておいた」
「プールね。そっか、さっさと電話しないとね、いきなり三日後プール行くって言ってみんな行けるかな」
「どうだろう、みんな水着とか持ってるのかなあ」
「まあ水着は多分あるでしょ。多分だけど……。てかもうみんなで買い物行きたいなあ。今日夜にみんなに電話してみるよ。明後日水着買いに行って、明明後日プール行くんだけどって。まあ最悪麗夏とたかしちゃんと私の三人で遊びに行こっか」
「うん、みんな来れるといいなあ。水着は恥ずかしいけど……」
「大丈夫よ、プール行ったらみんな水着なんだから」
「それはそうだけど……」
「うーん、それにしても、ふむう、何しよっか」
「もうお着替えはしたもんねえ。何しよっかあ。きらなちゃんの宿題でもする?」
「えええ! 絶対やだ! そんなのやりたくなーい!」
「私、雲藤先生が夏休み入ってから持ってきてくれたからやってるけど、もう終わりそうだよ?」
「はやっ! いいなあ、そっかあ、手伝ってもらおっかなあ。でも遊びたいしなあ」
「きらなちゃん頭いいからすぐ終わるんじゃないの?」
「あのね、宿題っていうのは書くのが面倒なのよ。問題の内容は別に問題ないのよ」
やっぱり、きらなちゃん頭いいなあ。でも書くのが苦手なのかあ。宿題は書かないといけないからなあ。
「でも、私はきらなちゃんの代わりに書いたりはしないよ? 一緒に考えるだけー」
「だよねえ……。まあ宿題は置いときましょ、そんなのやりたくないから。最悪夏休み最終日に全部やるわ」
「そ、そうなると、夏休み最終日は遊べないね……」
「あああ、そっか! ダメじゃん! じゃあちょくちょくやることにする! とりあえず今日はしない! せっかくたかしちゃん泊まりに来てくれてるんだもん。宿題なんかしてる場合じゃないよ!」
「そっかあ。宿題しないかあ。じゃあ何しよっか」
「どうせだったら公園で遊ぶ? サッカーボールでも蹴ろうよ!」
「公園かあ」
この格好でお外に行くのに慣れるにはちょうどいいかもしれない。でも運動も苦手だしなあ。
「だめ? サッカーボール蹴るだけ! パスっこ! 試合はしない。そもそも二人じゃ試合はできないしね」
「うん、じゃあちょっとだけ」
きらなちゃんに教えてもらったら。もしかしたらちょっと運動音痴がなくなるかもしれない。
私たちは靴を履いて外に出た。




