私、シュシュなら作れるよ……多分
「生姜とかネギとかいる?」
「じゃ、じゃあおネギ貰おっかな」
他人の家でご飯を食べるのは初めてで緊張する。大丈夫かな、失敗しないかな。
「はい、つゆに入れるよね?」
「うん、入れる」
きらなちゃんが何もかもやってくれた。つゆにはおネギと氷が浮かんでいる。おそうめんは一人ずつ綺麗にすのこ?みたいなものの上に置かれて一人分ずつ用意されていた。私の家ではザルにいっぱいのおそうめんが入っていて、各自そこから取って食べるスタイルだから、不思議な感じがした。
「じゃ、いっただっきまーす」
「いただきまあす」
ツルツルっとつゆにつけたおそうめんをすする。美味しい。ひんやりとしていて、とても涼しい気持ちになる。おネギ、美味しい。
「いっぱい食べてね。足りなかったらまたゆでてあげるから」
「はーい」
きらなちゃんはずるずると啜りながら返事をした。
「なんか、手料理とかじゃなくってごめんなさいね。今日は暑いからおそうめんがいいかなあって思って」
「ぜ、全然大丈夫です。美味しいです」
「よかった。たかしちゃんのそのリボン、かわいいわね」
「わあ、ありがとうございます。私の宝物なんです。小さい時におばあちゃんにもらいました」
「綺羅名にはそんなものないのよねえ。この間、私も宝物欲しいって騒いでたのよ?」
「そうなんですか」
「あーあー、そんなこと言わなくていいってー。そういうのは個人情報って言うのよ」
「いいじゃない、たかしちゃんなんだし」
「別にいいけどさー」
宝物かあ。私が何かあげられるもの、あるかなあ。
あ、でもそれを宝物にしてくれるって決まったわけじゃないか……。
でも、きらなちゃんに何かあげたいな。いつも仲良くしてくれるお礼に。
「私、シュシュなら作れるよ……多分」
「シュシュ作れるの? すごーい!」
「きらなちゃん、いつもシュシュつけてるから、きらなちゃんにあったシュシュ、作ってもいい? プレゼントしたい」
「ええ! 本当に? いいの? 欲しい! すっごく欲しい。私、あげることはあっても貰うことってほとんどないんだよね」
「ちょっと時間かかるけど、いい?」
「全然いいよ! 作ってほしい! たかしちゃんからもらったものなんて! 絶対宝物になるよ!」
「ほ、本当?」
「絶対の絶対!」
「じゃあ絶対作る! 生地とか買いに行くの、一緒にくる?」
「うわー、迷う。んー、どうしよっかなあ。迷いすぎる」
きらなちゃんは頭を何度もかしげて考えている。なんだかかわいい。
「……よし決めた! ついて行かないことにする! 私は出来上がるまで関わらない! 絶対見ない! 決めた!」
「じゃあ、きらなちゃんが来るときはちゃんと隠しておかないとね」
「うん、そうして! やったー! お母さん、シュシュだって!」
「よかったわねえ。でもたかしちゃん、大丈夫?」
「全然大丈夫です。きらなちゃんのためだって思ったらすっごく作りたくなりました」
「そっか、ありがとうたかしちゃん」
「本当ありがとー、一生大事にするよ」
「ふふふ、まだできてないよ」
おそうめんを食べ終わって、私たちは部屋に戻ってきた。




