本当にきらなちゃんは思いついたら即行動だなあ
ついに外に出てしまった。手でお尻を押さえる。ズボンは履いてるけど、見られたら恥ずかしいような気がする。
「たかしちゃん緊張してるねえ。そんなに恥ずかしい? ほら、見て、私ちゃんとズボン履いてるよ?」
きらなちゃんはシャツを捲ってズボンを見せた。
「そ、そんなことしたらダメだよきらなちゃん!」
「あはは、大丈夫なんだって。たかしちゃんもやってみなよ」
「やりません!」
「ちぇー。まあいいや、行こっか」
私たちは金子さんに向かって歩き始めた。いつもは人なんて歩いてないのに、今日に限って三人もすれ違った。絶対見られた。すごく恥ずかしかった。
「ね、誰も変だって言わないでしょ?」
「う、うん」
「金子さんもかわいいって言ってくれるよきっと」
「そうかなあ」
私の家の前にくると、きらなちゃんが立ち止まった。
「ちょっとたかしちゃんち寄っていい?」
「いいけど……なにするの?」
「たかしちゃんのお母さんに新生たかしちゃんを見せてあげるの」
「えええ。恥ずかしいからいいよう」
「だめだめ、これはもう決まりだから」
「き、決まりなの?」
「ね、決まりだとしょうがないでしょ?」
ううう、もう絶対断れないやつだ。私は諦めて、きらなちゃんに引っ張られて私の家に入った。
「たかしちゃんのお母さーん!」
玄関からきらなちゃんが私のお母さんを呼んだ。お母さんがびっくりした顔で居間から顔を出した。
「きらなちゃん? どうしたの? たかしちゃんならきらなちゃん家に泊まりに行った……ってあら、たかしちゃん。かわいい格好してるわね」
「ね! ですよね! かわいいですよね!」
「うん、とってもかわいいわ。たかしちゃんあんまりそう言う格好しないからとても新鮮だけど。この服はきらなちゃんの服?」
「はい。着せ替えっこしてたんです。それで似合ったからたかしちゃんのお母さんに見せたいなあって思って、帰ってきました!」
「金子さんに行きたいんじゃなくて、お母さんに合わせたかったんだ。もう、それならそうって言ってくれればよかったのに」
「ううん、金子さんに行きたいのは本当。たかしちゃんの家の前通って思いついたんだよ」
本当にきらなちゃんは思いついたら即行動だなあ。困っちゃう。でも、お母さんに変だって言われなかった。変じゃないんだ。足出てるから恥ずかしいって思ったけど、そんなに変じゃないんだ。
「たかしちゃん、それ、下はズボン履いてるの?」
「履いてます!」
きらなちゃんが私の服を勝手に捲ってズボンを見せた。
「ひゃあ! きらなちゃん、恥ずかしいよう」
「ズボンだってば」
「なら大丈夫ね。そんなに短いのにパンツなのかと思ったわ。それにしても二人ともかわいいわねえ。写真、取ってあげようか?」
「お願いします!」
「ちょっと待っててねー」
お母さんは居間に消えていった。写真に残されちゃうなんて、恥ずかしすぎる。私はできるだけ隠れるように、服の裾を下に引っ張った。でも長さは変わらなかった。
「あったあった。インスタントカメラだけどねえ。二人ともこっち向いてー」
パシャッ。と言ってシャッターが切れた。
「うん、たぶん上手く撮れたと思う。また現像したらきらなちゃんの分も用意するからね」
「やったー。ありがとうございます!」
「じゃ、じゃあお母さん。行ってきます」
「行ってきまーす」
「はあい、行ってらっしゃい」
私たちは家を出て、金子さんに向かった。
金子さんの前に着くと、金子さんが閉まっていることに気づいた。
「あら、金子さん閉まってるわ」
「本当だ。どうしたんだろう」
駄菓子屋に入る扉の前に貼り紙がしてあった。
『風邪をひいたので、しばらくお休みします』




