たかしちゃんをこうやって着せ替え人形して遊ぶんだー
今度は丈が長い裾がキュッとした、スエット生地の半袖だった。私は言われるがままにその服に手を通してきてみる。ちょっとワンピースみたい。だけど、それにしては丈が短すぎるなあ。と思いながら私は鏡を見た。
「わあ! きらなちゃん! 私履いてないみたいになってる!」
丈の長いスウェットの裾が、履いている短パンをちょうど隠して、本当に下にはズボンを履いていないみたいに見えた。こんなミニスカ履いたことない。
「お、いいねえ可愛いねえ。めちゃくちゃ似合ってる。たかしちゃん可愛いからなんでも似合うねえ。その服で忠とデートとかしたらイチコロよ?」
「うう、絶対できないよう。これは恥ずかしすぎるよう。本当に履いてないみたい。自分で気になって仕方がないよう」
どうしてもスウェットの裾をきゅっと下に引っ張ってしまう。
「そうかー、それは残念だなあ。服貸してあげようかと思ったのになあ」
「ううう、絶対無理だよう」
「ま、私は見れたからいいや。いつでもたかしちゃんをこうやって着せ替え人形して遊ぶんだー」
「私お人形じゃないよ!」
私のことを着せ替え人形ってきらなちゃんは言った。私の家に来た時は絶対きらなちゃんを着せ替え人形にしてやろう。
「まあまあまあ、可愛いなあ」
こんこんこんとノックが聞こえてきた。
「入っていいよー!」
え、えええ。私、こんな格好なのに?
私は全力で裾を両手で抑えた。
「紅茶持ってきたわよー。あら、可愛いわね。似合ってるじゃない二人とも」
「いいでしょー。これねえ、たかしちゃんのワンピースだよ。私がワンピース着るの珍しいでしょ。たかしちゃんはねー私の服着てるの!」
「着替えっこね、いいわねえ。二人とも可愛いわ」
「じゃ、私たちは着替えっこパーティの続きするから、紅茶ありがとねー」
「またおかわり欲しくなったら言ってね」
「はーい」
きらなちゃんのお母さんは変な格好をしている私には触れずに外に出て行った。コップに紅茶を二つお盆に乗せて持って来てくれた。
「はあ」
恥ずかしかった。そっか、きらなちゃんのお母さんにとってこの格好は普通なんだ。でも恥ずかしいものは恥ずかしい。慣れないものは慣れない。
「もう、きらなちゃん、私こんな格好なんだからね! 恥ずかしいんだからね!」
「なんで? 普通の格好じゃん、それにお母さんだよ?」
「なんでじゃないよう、お母さんでも恥ずかしいものは恥ずかしいの!」
「そんなもんかあ、じゃあ次なんの服着せようかなあ……」
「まだ着るの?」
「もうちょっとー」
きらなちゃんは服を出したり出したりして、服を選んでくれた。選んでくれたでいいのかな。わかんないけど、でも、きらなちゃんは私のためにしてくれてると思う。きらなちゃんの周りには服がいっぱいになっていた。私の周りにも、着た服がいっぱいだ。後でちゃんと片付けないとな。
「これこれ、これとかどう?」
きらなちゃんの出したのは、黒のふわりとしたミニスカートだった。
「わあ、こんなのパンツ見えちゃうよ」
「そう? 意外と見えないものよ。気をつけてればね。まあ、履いてみなさい。あ、服かあ、どうしよっかなあ、このエリザベスのTシャツとかどうかな。本当はエリザベスかどうかわかんないんだけど、なんとなくそう呼んでるの」
実写の海外の女性が印刷されたTシャツだった。私だったら絶対選ばないし、買わない。なんだかとても楽しくなってきた。普段着れない、着ないお洋服が着れるのは楽しい。丈が短くて恥ずかしいのばっかりだけど、これで外に出るわけじゃないから全然大丈夫。
「どう?」
私は着替えてくるっと回った。
「こらこら、そんなことしたらパンツ見えるよ」
普段ロングスカートでくるりと回るから、いつもの感じで回ってしまった。
「えっ、見えた?」
私はスカートを抑えた。
「見えたわ、というか着替えてる時に見えてるからね。もう遅いけどね」
「ううう、確かに……」
「でも、たかしちゃんミニスカート似合うねえ、てか本当になんでも似合うねえ。ちょっと待って。……これ履いてみて」




