そんなこと言ったら下着だってグラビアアイドルが見せてるじゃん
「あ、おはよー」
私たちが部室に戻ると、あーるちゃんとそらくんが起きていた。
「おはようございます。綺羅名先輩とたかしちゃん先輩は早起きですね」
「私はそんなだわ。たかしちゃんは六時に起きたそうよ」
「六時。早いですねえ」
今は七時十四分だった。
「そろそろ起こす?」
「何時解散でしたっけ?」
「九時よ。てか細谷先生はどこに行ったのよ。結局昨日あの後現れなかったじゃない。電気消してもらおうと思ってたのに、結局私が消したんだから」
「そうなんだ。先生どうしたんだろう」
「どうせどっかで寝てるのよ。いっつも寝てるんだから。むしろ昨日は起きててくれた方じゃない?」
「確かに細谷先生授業中も眠そうですからね」
「教科なんだっけ?」
「男子の体育です」
「あ、そうだったわ。うちにラグビー部があったらラグビー部の顧問だっただろうね」
「細谷先生体おっきいもんね」
「じゃあ起こすか。こっちは麗夏起こすから、そっちは日々人起こして」
「了解です」
私たちは眠っているれいかちゃんを起こし始めた。
「ほら、麗夏、起きなさい」
「うんんん」
「れいかちゃん、起きて!」
「ううん」
れいかちゃん、全然起きない。すっごい眠ってる。いつも十時に寝るって言ってたから多分夜更かしして眠いんだろうな。
「麗夏! 麗夏! ……起きないわね。すっごい寝てるわ。抵抗してくる。これを起こすのは至難の業ね。とりあえずこちょこちょしてみましょ」
きらなちゃんは、れいかちゃんの出ているお腹や脇腹や腋をこちょこちょした。しかし、れいかちゃんは微動だにしなかった。
「効かないわね……。相当寝てるのね。それにしても、本当に貧乳よね。なんでこんな小さいのかしら。もう少しあってもいいと思わない? なんていうの? 貧乳ていうか、ペチャパイ?」
「誰がペチャパイよ! 人が寝てると思って好き勝手言って! 全部聞いてたんだからね!」
「やば、聞かれた!」
「ほら、揉んでみなさいよ、ちょっとは柔らかいんだから!」
「わー! れいかちゃん、そらくんもいるからお胸隠して隠して」
れいかちゃんは怒ってパジャマを捲って胸をきらなちゃんに突き出した。
「わ、わかったからしまいなさい。悪かったわよ。全然起きないし見てたら気になっちゃって」
「気になっちゃってじゃないよ! 最悪の目覚めよ」
「れいかちゃんおはよー」
「たかちゃんおはよー。たかちゃんは良い子だねえ」
半分目を閉じながら、起き上がってれいかちゃんが言った。とっても眠たそうだった。
「そっちはどう? 起きた? って、起きてるわね。てか、あんた見たわね?」
「みみみ見てないっす。おっぱいなんて見てないっす」
見たんだ、ひびとくん。
「ほら、だからあんなことしちゃダメなのよ!」
「もう過ぎたことは仕方ないでしょ? それに下着なんてほとんど水着と同じなんだから別に見られても良いわよ」
「いいわけあるかい! ダメよ!」
「なんで、きらちゃんは谷間見せてるでしょ」
「谷間はいいのよ。海外のセレブも見せてるでしょ」
「そんなこと言ったら下着だってグラビアアイドルが見せてるじゃん」
「ま、まあ、確かにそうだけど……」
き、きらなちゃんが押し負けてる。れいかちゃん強い。
「そもそもきらちゃんがばかにするのが悪いのよ!」
「そ、それはごめんって。寝てると思って……」
「寝てたってそんなこと言わないでよ! ばか! きらちゃんのばか!」
「あああ、麗夏、ごめん。ごめんー」
れいかちゃん泣いちゃった。私はれいかちゃんの頭を撫でて、ぎゅーって抱きしめた。
「あああん、たかちゃんー。きらちゃんがいじめるー」
「こら、きらなちゃん、めっ!」
「うう、ごめんって。もう言わないから。絶対言わないから」
きらなちゃんはれいかちゃんの横に座って頭を撫でた。
「見られたくないのに見られちゃった」
「ひびとくん、忘れてね? さっき見たことは全部忘れてね?」
「は、はいっす。がんばるっす」
「ひびとくんもいいこいいこ。れいかちゃんもいいこだよー」
「たかちゃあん」
よしよし。ふふふ、なんだかいつもと違って私がお世話しているみたいで不思議な感じだった。いつもなら私が泣いて、れいかちゃんとかきらなちゃんにお世話してもらうのに。ちょっとお姉さんになった気分になった。