ドアが開いて、金髪の女の子が出て来た
「ん……」
目が覚めると。両脇にきらなちゃんとれいかちゃんが眠っていた。上を見上げるとあーるちゃんが眠っていた。
「また寝ちゃった。今何時だろう」
天井の星は暗がりの中まだ微かに光っていた。蓄光ってすごいなあ。
暗い部屋に掛けられた時計を見ると六時ちょうどだった。いつもの時間だ。私は布団から起き上がって、その場に立ち上がった。
ふふ、れいかちゃん寝相悪いんだな。
れいかちゃんは布団を脱ぎ散らかして足が敷き布団からはみ出していた。そらくんは綺麗に上を向いて動かない。死んでるんじゃないかって思ったけど、息をしていたから大丈夫そうだった。
きらなちゃんもれいかちゃんもぐっすり眠っているから起こすのが忍びなかった。昨日何時までお話ししてたんだろう。どうしよっかなあ。みんなが起きるまで何をしよっかなあ。
そうだ、屋上開いてるかな。
「よいしょっと」
ブルーシートの外側に置いてあった靴を履いて、パジャマのまま私は部室を出た。
「わっ」
眩しい、もうこんなに明るかったんだ。部室はカーテンが閉まっていたから気づかなかった。目が痛い。準備室、開いてるかな。
私は準備室のドアを開けた。がらがらと言ってドアが開いた。準備室の中は、布団がなくなってがらんとしていた。昨日みんなで運んだことを思い出して楽しくなる。このドアのところ、絶対ぶつかったなあ。屋上、行ってみよ。私はきっちりとドアを閉めて屋上に向かった。
階段をゆっくりと登る。できるだけ音が立たないように気をつけて。屋上に続く扉の前に来ると、なぜか少しだけ緊張した。
ガチャ。
「あ、あいた」
先生、鍵閉めてなかったんだ。先生、いい加減だなあ。れいかちゃんの時もそんなに怒ってなかったし。見た目で怖いと思ってたけど、実はそんなことないのかもしれない。
屋上に出ると清々しい空が広がっていた。今日も晴天だった。昨日も綺麗に晴れていたけれど、今日はそれ以上に晴れているような気がする。
屋上のフェンスまで近づいて下を見てみる。
まだ誰一人学校にいなかった。もしかしたら、私しかいないのかもしれないっていう錯覚に陥りそうなくらい、誰もいなくて静かだった。
「静かだなあ」
私はベンチのようになっている屋上の縁に座って、上を見上げた。
「確か、あっちの方にデネブがあって、あっちにベガで、あっちにアルタイルだっけ。今は星は一つも見えないけど、どこにあるんだろう。おんなじ場所にあるのかなあ」
照りつける夏の太陽は暑いけど、吹き抜ける風が涼しい、私はしばらくそこで風と空と無人の学校を楽しんでいた。
ガチャッ。
わっ、誰か来た。
どうしよう、どうしよう。先生だったら怒られるかもしれない。
ドアが開いて、金髪の女の子が出て来た。きらなちゃんだ。
「あ、たかしちゃんいた! おはよー」
「おはよー。きらなちゃん早起きだね」
「ううん、眠いよ。なんかパッと目が空いたらたかしちゃんがいなかったから探しにきたの」
「今六時半くらいでしょ。寝ててもいいんだよ?」
きらなちゃんは眠そうに目を擦っている。
「ううん、もう起きた。たかしちゃん起きてるから私も起きる」
「ふふふ、眠そうだよ?」
「いいの! それにしてもこんなとこで何してたの?」
「うーんと、なんとなく来てみたら空いてたから風に当たってたの」
「そうなんだ、飛び降りとか考えてない?」
「考えてないよう。私は死にたくないもん」
「そっか。よかった」
きらなちゃんは私の隣に座って私の手を握った。私も握り返した。




