部室のドアにもぶつかった。もう全部ぶつかった
「よし、今度こそ布団ね。みんなの分ってなると何度か運ばないといけないわね」
「うん、一気には持っていけないね」
「ちょっとずつ運びましょ」
まずは掛け布団を持って天文部室に持っていく。大きくて前が見えなくてドアの隙間を通るときにぼんとドアにぶつかった。
「いてっ」
「ちょっとまだあ? もう持ってきたんだけど」
「先輩早いっすよ! まだブルーシート敷き終わってないっす」
「綺羅名先輩、そこでちょっと待っててください。もうすぐ終わるんで」
布団を持って行くのが早すぎた。まだブルーシートが敷き終わってなかった。
うー、だんだん重くなってきた。前が見えない。よろけてこけちゃいそう。
天文部室のまえに、きらなちゃん、れいかちゃん、私の順に布団を持って並んでいた。なんだか想像したらおかしくなってきた。
「ふふふふ」
「たかしちゃん何笑ってんの。大丈夫?」
「なんかおかしくって」
「たかちゃんがおかしくなっちゃった!」
「おかしくなってないよう。なんかみんな布団持って立ってるなあって思ったらおかしくって。ふふふ」
「そう言われればなんかバカみたいね」
「確かに、こんなこと人生で一回きりかもしれない」
「でしょー? ふふふ」
「でも笑うほどではないわ」
「そ、そうだね」
「ていうかまだー? 前見えないから全然わかんないんだけど!」
「実はたかしちゃん先輩が笑い始めたところくらいには終わってました!」
「終わったなら早く言いなさい。とりあえず掛け布団から持ってくるから。どっかに寄せといて」
「はーい」
きらなちゃんが誰かに布団を託した気配がした。何も持っていないきらなちゃんが準備室に戻っていった。
「たかしちゃん先輩、手伝います!」
「ありがと」
部室の入り口でそらくんが布団を受け取ってくれた。私はその布団をそらくんに任せて新しい布団を取りに行った。まだまだ布団が山積みになっている。
えっと、全員で八人だから、八個布団を運ばないといけないんだ。
あれ?
先生の分もいるのかな?
もう一度、敷布団を持ち上げる。準備室を出るときやっぱりドアにぶつかった。
「いてっ」
「はいはいはい、こっち、受け取ります」
「ありがとう」
今度はひびとくんが受け取ってくれた。準備室に戻ると、敷布団はなくなっていた。じゃあ次は敷き布団だ。敷き布団はさっきよりも重いけど前が見やすかった。これならもうぶつからないな。
どん。
「いてっ」
またぶつかってしまった。どうしてだろう前見えてるのに。
「たかしちゃん先輩、もう少しっす。頑張ってください」
ひびとくんとそらくんとあーるちゃんとすれ違いざまに応援された。三人は自分の掛け布団を取りに行ったのだろうか。と言うことはこれは私のお布団だ。頑張ろう。
どかっ。
「いてっ」
部室のドアにもぶつかった。もう全部ぶつかった。なんでこんなにぶつかるんだろう。中に入ると、布団が二枚並べられているのがチラリと見えた。掛け布団はこんもりと山盛りにされて端に寄せられている。
「わあ、雪山みたい」
「ああ、たかしちゃん、シートの上は土足禁止よ」
ブルーシートは部室全体に敷かれていた。その上にふとんが乗っている。私は踏んではいけないところを踏んじゃったみたいだった。
「あわわ、ごめんなさい」
「いいのよ。もうすぐ運び終わるからたかしちゃんは靴脱いで布団の上に乗ってなさい」
「手伝わなくていいの?」
「うん、もう人数は足りてるから。あとは日々人たちと、麗夏と私で終わり!」
「わかった。待ってるね」
私は靴を脱いで、ブルーシートに乗った。あ、そうだ。
「布団渡してー。靴脱いでー」
私は靴を履いて布団を持って来たあーるちゃんから布団を受け取った。
「ありがとうたかしちゃん先輩」
「あーるちゃんいらっしゃい」
私は綺麗に並べるようにして敷布団を敷いた。
「失礼します……。あはは、たかしちゃん先輩の家ですか? ここは?」
「あ、いや、そういうつもりじゃないけど。ふふふ。いらっしゃい」
次々と布団が来た。私とあーるちゃんは受け取ってはブルーシートの上に綺麗に敷くを繰り返した。
「ふうー。疲れたー。できたね、寝床」
「うん、みんなどこで寝るの?」
星見先輩と干柿さんの布団は別の場所に、二つ並べて敷いた。たぶんその方がいいと思った。三つずつ二列に並んでいる。何も考えずに並べちゃったけど、これでよかったんだよね。この形だと、足か頭をみんなで合わせて寝ることになると思う。そういえば天以外の男の子と寝るのは初めてだ。今更だけど恥ずかしくなってきた。
けど、きらなちゃんもれいかちゃんもいるから大丈夫。心配ないと思う。
「私、真ん中がいいなあ」
真ん中だったらお隣にきらなちゃんとれいかちゃんが来てくれて、より安心できる。




