きらなちゃんおじさんみたい
「わ、私たちも早く着替えよ」
慌てるようにして私たちはパジャマに着替えた。大丈夫、セーラー服も畳んで床に置いておいた。ボタンもかけ間違えてない。カンペキ。
「きらなちゃん、着替え終わったよ」
「私もー。おっけーおっけー」
「あ、怜も着替えた?」
そうだ、干柿さんもいるんだった。
干柿さんは星柄のパジャマに着替えていた。
「うん、着替えた」
はっ。喋った!
「よし、じゃ。おっけー、着替えたよー」
きらなちゃんが外の先生に向けて声をかけた。
「おーし、じゃ、入るぞー」
ぞろぞろと細谷先生を先頭に男子たちが入ってきた。みんなパジャマに着替えていた。
「ほら」
星見先輩が手を伸ばして、多分、干柿さんを呼んだ。干柿さんは少し俯きながらその手を掴んで教室を出ていった。多分、屋上に行ったんだ。
「青春ねえ」
「きらなちゃんおじさんみたい」
「おじさんじゃないわよ」
「だって、青春ねえって。ふふふ、おじさんみたい」
「だからおじさんじゃないってば!」
「ふふふ、ごめんなさい」
「じゃ、とりあえず机どかそうか。みんな、持ってくれー」
みんなで机の端を持って教室の隅に寄せた。それだけで教室が広くなった感じがした。
「よし、布団取りに行くぞー」
布団、どこに取りに行くんだろう。
「先生! 布団どこにあるの?」
「隣の教室が準備室になってて、そこに布団があるからみんなで準備してくれ。大丈夫、洗濯はしてあるから綺麗だぞ」
「先生―。鍵はー?」
「さっき開けておいた。あ、先にブルーシートを敷いてくれよ。じゃないと地べたにそのまま布団敷くことになるからな」
「はーい。行こ! たかしちゃん! 麗夏!」
「うん!」
「いこっか」
私たちは隣の部屋の準備室に向かった。準備室の中には使われていない本や望遠鏡などがおいてあって、その中に、布団がブルーシートの上にドカンと置いてあった。
「ブルーシートどこだろう」
「見当たんないわねえ。この下に敷いてあるやつ使うのかしら……」
「違うんじゃない? 多分どっかにあるよ。探そう」
「先輩、どうですか?」
そらくんが様子を伺いながら入ってきた。
「それがね、ブルーシートがないのよ。どこ探しても」
「やっぱり、先生がブルーシートは布団の上に置いてあるって言ってました」
「布団の上? 布団の上て布団しかないけど……。まさか」
きらなちゃんが布団を捲った。すると下からブルーシートが出てきた。
「だー! なんなの? 知ってるなら先生が取りに来てくれてたらよかったのに。なんで宝探しみたいなことしないといけなかったのよ。最初から言っといてよ」
「だから、僕が伝えに来ました」
「遅いっての! まあいいわ、三人でブルーシート敷いてきてくれる? 私たちは布団持ってくから」
「任されました!」
そらくんはブルーシートの束を抱えて持っていった。




