そこには、綺麗に光る、月が大きく映し出されていた
「どれどれ?」
「あれあれ! 一番光ってるのがある。左! 近くにも光ってるのあるの、あれベガとアルタイルかな?」
「あっ! 本当だ。てかこの星座盤どうやって見るの? 見方全然わかんないんだけど」
「どこどこ。あれかなあ?」
見つからない、わかんない。
「たかしちゃん何やってるの。あそこだって」
「あそこあそこ!」
二人が指を指してくれる。多分、あの辺だ。
あ、あれだ!
「あった! あれかー! 多分あれだ! わー凄い光ってる」
「その周りにもあるでしょ、二つ。みてみ!」
「その周りにもー……。あっ! あった! どれがデネブで、どれがベガで、どれがアルタイル?」
「さあ、どれがデネブ?」
「どれがアルタイル?」
「星座盤に乗ってるんじゃないの?」
「なんかねえ、見方わかんないんだよねえ。ほら、これ、向きおかしいでしょ?」
確かに、書いてある向きと、見ている向きとは全然違った。
「うーん、形的に左にあるのがデネブっぽいねえ」
「逆さになってるってこと?」
「うーん、見方はわかんないけど、なんとなく」
「でも、確かに言われてみれば左がデネブっぽいわ。白鳥も見えてきそうだし。なんとなくだけど」
「ふふふ、なんとなくって。じゃあ正解はわかんないんだね。でも綺麗だねえ。これが夏の大三角形かあ」
「デネブわかっても白鳥とか全然わかんないね」
「見えてきそうで、見えないわね」
「こぐまさんは?」
「えーっとねえ。こっちかな……」
「ふふふ、全然わかんないね」
「あいつら見つけられたのかな」
きらなちゃんは天体望遠鏡を覗いているひびとくんのところに走っていった。
「私たちもいこっか」
「そーだね。天体望遠鏡も見たいし」
「あんたたち、夏の大三角形見つけた?」
「いや、見つけてないっす。でも望遠鏡すごいっすよ、月めっちゃ綺麗に見えるっす」
「ほんと? 見せて見せて!」
きらなちゃんはひびとくんを押しやるようにして天体望遠鏡を奪い取った。ひびとくんは少しよろけてこけそうになった。
「わー本当だ。すっごーい、こんなに綺麗に見れるもんなの? 月人見えるかも」
「綺羅名先輩、月人はいません」
「た、たとえよたとえ。ほら、二人も見てみ、すっごいから」
そんなにすごいんだ、どんなだろう。
「あ、れいかちゃん先見ていいよ」
「何言ってんの、たかちゃん天文部なんだから先みなよ。ほれほれ」
れいかちゃんに背中を押されて、天体望遠鏡の前に出た。
「あ、ありがとう。じゃあ先見よっかな」
私はゆっくりと覗いた。そこには、綺麗に光る、月が大きく映し出されていた。すごい、模様まではっきりとわかる。月ってこんな形なんだ。少し陰って月がかけているところもはっきりと見えた。
「すごい! すっごい綺麗! れいかちゃんも見て見て!」
「うん、みる! ……わー、綺麗だねえ。月ってウサギがお餅をついてるように見えるって言うけど、全然わかんないね」
確かに、うさぎさんには見えなかったなあ。
「星とか月とか、そこにあるし綺麗なんだけど、よくわかんないね」
「ふふ、そうだね。見えるのによくわかんない」
「こぐま座とか全然わかんないもんね」
「どっかにはあるんだけどなあ」
「どこかなあ」
「探すかー!」
私たちはもう一度さっきの場所に座って、こぐま座を探した。こぐま座だけじゃなくて、かんむり座とかおとめ座とかてんびん座とかも探してみた。だけど、星が多すぎて、どれがどの星か全然わからなかった。




