私は火星人の味方になります
「いや、それにしても日々人が満点とってるなんて衝撃的すぎてまだ引きずってるわ……」
「唯一の特技なんでそんなこと言わないで欲しいっす」
「だいたいねえ、その喋り方からばかの感じが滲み出てるのよ。なのに何よ満点って」
ひびとくん、凄いなあ。私も満点とってみたい。その前に学校に行かなきゃだけど。
「たかしちゃん満点とったことある?」
「ううん、一回もない」
「麗夏は?」
「私もないなあ」
「私だってないわよ。ってことはよ? 今ここで一番頭がいいのは日々人ってことになるわけでしょ?」
「そうだね」
ひびとくんすごいなあ。
「くうー! なんか悔しいわ、次のテスト絶対満点とってやるんだから! ちなみに、得意な教科は?」
「ないっす」
「はあ? じゃあ苦手な教科は?」
「ないっす。全部普通に出来るっす」
全部できるんだ。音楽とかも得意なのかな。
「だめだ……、天才だったのね……。日々人が天才だなんて、信じたくないわ」
「でも、テストが終わったら忘れちゃうので今聞かれても全然答えられないっすよ? そんときだけっすね」
「ににんが?」
「し」
「出来るじゃないのよ!」
「いや、流石に九九はできるっすよ。それはバカにしすぎっす」
「まあ確かに、ちょっとバカにしすぎたわ。ま、日々人の話はこれくらいにしましょ」
「そうだ。火星って見えるんですよ? 先生天体望遠鏡あるって言ってたし。私、火星が見たいです」
あーるちゃんが嬉しそうに言った。
「そうなんだ。火星って見えるんだ」
「そうですよ! 火星見えるんです。だから天体望遠鏡楽しみなんです! うちじゃ高くて買ってくれないから……」
あーるちゃんは悲しそうにに天井を見上げた。
「でもね? アルちゃん? 火星が見れたとしても、火星人なんか見えないからね? いるとして、いるとしてよ? 天体望遠鏡って言ってもそんないいもんじゃないんだから見えないの」
「そういうものですか?」
「そういうものよ。火星は見えたとしても、火星人は絶対に見えないわ」
「ちぇー。火星人みたかったなあ」
残念そうにしているあーるちゃんは可愛かった。
「残念ね。火星人が地球を侵略してくるまで待つのね」
「そしたらそしたら、私は火星人の味方になります」
「まあ、侵略なんかしてこないけどね」
「してこないんですか。友好的に来るってことですか?」
「そういうこっちゃないわよ。火星人なんていないんだから」
「火星人はいます! 見てくださいこのフォルム!」
あーるちゃんは立ち上がってカバンを持ってきた。カバンにはたくさんタコみたいな火星人のキーホルダーが付けられている。
「これが、この空のずっと上にいるんです!」
「い、いな」
「いるんです!」
「わ、わかったわよ。いる、いる。います。火星人は存在します」
「わかればよろしい」
「あんたねえ、別にいいけど私一応先輩よ?」
「あ、失礼しました。でも綺羅名先輩が火星人いないとかいうからですよ」
今度から、あーるちゃんには絶対に火星人いないって言わないでおこう。すっごく怖かった。
「あーるちゃん、火星人はいるもんね?」
「たかしちゃん先輩流石です!」
「裏切ったわねたかしちゃん」
「だって、あーるちゃんすっごく怖かったんだもん」
私は、聞こえないようにコソコソ話をした。
「だから前も言ったでしょ、アルちゃんには火星人の話はNGだって」
「うん、気をつける」
「火星人がいるならさあ、水星人とか木星人とかもいるのかなあ」
れいかちゃんが不思議そうにいった。




