表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと部活動
158/275

そんな勇気が

「やった。開いてる」


 靴を脱いで、上履きに履き替えた。上履きの中には何にも入ってなかった。ほっと心を撫で下ろした。


「私は靴下のままでいいや」


 れいかちゃんは靴下のまま、二階の教室に向かった。


「鍵空いてるかなー」


 きらなちゃんがドアを開くと、ガラガラと音を立ててドアが開いた。


「やった! 開いてる!」


 私たちは教室に入った。

 久しぶりの教室。私の席はあのままだろうか。私はゆっくりと自分の席に向かって歩いた。

 うん、いつものまんまだ。何もされてない。普通の机……とはちょっと違うんだっけ。


 机の中を覗くと、乾いた泥がへばりついていた。


「うわあ、ひどいねこれ」


 れいかちゃんが覗いてびっくりしている。


「私の時のいじめそこまでひどくなかったよ。ペンなくなったり、体操服なくなったり、そんな程度だった。何これ、泥だらけじゃん。ひっどーい」

「もう物は入れらんなくなっちゃった」


 私は机の中をつーっと指でなぞった。指には乾いた砂がついた。


「芽有たち、ほんと許せないよね」

「ううん、いいの。日向さんたちのことは、もうあの水風船を投げた時に解決したの。許すとか、許さないとかじゃないけど、あれで一区切りにしよっかなって思ってる」

「たかしちゃん、強いねえ」

「全然、強くないよ。まだ学校にも行けてないし」

「ううん、強いよ。ねえ麗夏?」

「うん、とっても頑張り屋さんだと思う」


 私は自分の席に座った。前を向いて、黒板を見る。この光景が懐かしく感じる。また、学校行きたいなあ。


「きらなちゃんはなんで教室に来たの?」

「あー、えっと、久しぶりにたかしちゃんと教室でおしゃべりしたかったから?」

「ええーそれだけ?」

「うん、それだけ」


 きらなちゃんは、私のことを考えて、ここに連れてきてくれたんじゃないかなって思った。本当にたったそれだけの理由でも、少し学校に対して勇気が湧いてきた。もしかしたら学校に行けるかも知れない。そんな勇気が。


「私、学校、行きたいなあ」

「こよ! 学校でいっぱい遊ぼ!」

「うん! いっぱい遊びたい!」

「うんうん! あ、でも、たかしちゃんのお母さんに怒られるかなあ、学校行かせたくないって言ってたし」

「ううん、大丈夫、お母さんならわかってくれると思う。きらなちゃんもいるし、ただしくんもいる。絶対守ってくれる人が二人もいるんだもん、わかってくれると思う。まだ怖くて、夏休み終わってからも行けるかどうかはわかんないけど」

「いいなー、私もダイワ中学校がよかったー」

「れいかちゃんは別の学校だもんね」

「私もみんなと遊びたーい。ずるいずるい!」

「ふふふ、駄々っ子だ」

「麗夏もちゃんと遊ぶ時は呼んだけるから。麗夏の事だって、忘れた事ないもん。ずっと、離れてても友達だよ」

「そっかー、ありがと! 私も、二人のことずっと覚えてる! 大の友達だよ!」


 それから、机に座って授業ごっこをした。れいかちゃんは私ときらなちゃんの間の席に座っていた。問題も出されていないのに、手を上げて問題を答えたり、国語の授業みたいにクラムボンを言ってみたり。きらなちゃんが先生をやったり。楽しくて、みんな天文部のことをすっかり忘れていた。


「わあ! 忘れてた! 天文部!」

「ああ本当だ! もう六時半だよ! 学校ごっこしてる場合じゃなかった! 遅刻だ!」

「でも久しぶりにみんなと授業できて楽しかったー!」

「私も! れいかちゃんと授業できて楽しかった!」

「言ってる場合じゃない! 急いで急いで! 授業おしまい!」


 みんなわたわたと席から立ち上がって、椅子をしまった。


「さ、走るわよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ