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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと部活動
156/211

体育館裏で何してたのー?

「ほら、ここなら先輩にも後輩にも見つからないでしょ?」

「そ、そうだな。なんか、今日のたかし積極的だな……」

「うん、あのね。ここはね、私の悲しい経験の場所なの。でもね、あのね」


 私は口籠った。なぜかうまく口にできなかった。


 ただしくんは私の頭を撫でた。思考がきゅうっと吸い取られる感じがする。


「ふーん、そうか。じゃあ、今日からは幸せな経験の場所になるな」

「んっ?」


 ただしくんは私の顎をくいっと上げて、ちゅーをした。


 ここは誰にも見られない場所。


 怖かった場所は、今、幸せな場所になった。


 体がフワッとして気持ちがいい。


「ただしくん。今日、かっこよかったよ」

「たかしも、今日もかわいい」

「えへへ。なんでかな、気がつけばこんなにもただしくんが好き」


 ただしくんをぎゅーっと抱きしめた。ただしくんも抱きしめ返してくれた。ただしくんの匂いがする。あせ、いっぱいかいてたなあ、ただしくんの汗の匂いも好きかもしれない。私って、変態さんかな。


「うん?」

「どうしたの?」

「いや、誰かに見られた気がした」

「えっ、み、見られたかなあ」

「いや、わからんけど、とりあえず戻るか。もう綺羅名たち来てるかもしれないし」

「うう、待って、今顔真っ赤だから。ただしくん、先戻ってて」

「わ、わかった。待ってるからな。バレないようにこっちからいくわ。」

「うん」


 ただしくんは体育館裏を来た道とは反対の方に出て行った。

 うう、顔が熱い。私、学校でちゅーしちゃった。その場にしゃがみ込んでもじもじした。


 私ってこんなに積極的だったっけ。でも、この場所が怖いだけの場所じゃなくなった。じゃなくて、部活してるただしくん、カッコ良すぎて、引っ付きたくなっちゃったんだもん。でも、でも、初めはちゅーはするつもりじゃなかった。ただ抱きしめたかっただけだった。けど、思考、また読み取ってくれた。ちゅー、してほしいって思った。


 はあー、思い出したらもっと顔赤くなって行ってる気がする。これじゃあ出られないよう。


 ふうー。


 ふうー。


 目を瞑って何度も深呼吸をした。呼吸を整えた。


 よし、大丈夫。もう大丈夫。


 目を開いて、立ち上がり、見渡した。


 うん、怖くない。


「ただしくん、おまたせー。あっ」

「ふふふ、たかしちゃん、おかえりなさい」

「ふふふ、たかちゃん、おかえりなさい」


 きらなちゃんとれいかちゃんがもう来ていた。というか何か企んだような顔をしている。


「な、なになに」

「たかしちゃーん? 体育館裏で何してたのー?」

「たかちゃーん、何してたのー?」

「え、えええっと。さ、散歩?」


 私はとぼけた。というかとぼけるしかない。本当のことなんて言えない。


「私たちねー。ねー麗夏―」

「ねーきらちゃーん」

「ううう、ど、どうしたのさ。た、ただしくん……」

「いや、あのな……」


 ただしくんの元気がない。なになに。どうしたの。何があったの。


「たかしちゃんの秘密、みーちゃった」

「たかちゃんの秘密、みーちゃったー」

「ひ、秘密?」


 さっきのちゅー、見られちゃった?

 ううう、やめとけばよかった。誰にもバレない場所だって日向さん言ってたのに。


「さっきハグしてたでしょ、私たち見ちゃったもんねー」

「見ちゃったもんねー」


 は、ハグ……ってことは、ちゅーは見られてないんだ。よかった。ふうー、よかった。

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