『変わってちゃダメですか?』だって
あ、そういうことか。
私の顔が一気に赤くなるのがわかる。
「ヒューヒュー」
「可愛いじゃん。うらやましいなー」
「ねえ彼女ちゃん、お名前は?」
うぅ。こんないっぱいの男子は無理だ。絶対馬鹿にされる。
「たかしっす」
ただしくんが代わりに言ってくれた。
「たかし。って変わった名前だねえ」
うっ、ううう。
「変わってちゃダメですか?」
「いや、ダメじゃないけど……そんな睨むなよ」
ただしくんが助けてくれた。今のただしくん、すごくかっこよかった。
心がキュンとなるのがわかった。痛くて気持ちいい。幸せな気持ちだった。
「たかしちゃんは何得意なの?」
「え。えっと、お裁縫です」
「裁縫かー、男子には無縁のものだな」
「ねえ聞いていい?」
「え、は、はい」
「チューした?」
「あ、ああわわわ。ななな内緒です!」
「ばか! 内緒じゃなくてしてないって言えって!」
「うわー、したんだー、いいなあ」
「竹達この後体育館五周追加ね」
「おーい、お前らクールダウンしろー」
「はーい」
先生の声に部員の人たちはばらばらーっと散っていった。
「すまんたかし、恥ずかしい思いさせちまった」
「う、ううん。大丈夫。ちょっと怖かったけど」
「じゃ、もう部活終わるから俺もクールダウンしてくるわ。たかし外で待っててくれるか?」
「うん、わかった。また後でね」
ふう、あんな背の高い人たちに迫られるとは思わなかった。怖かったけど、ただしくんがいてくれたから全然大丈夫だった。
私はただしくんに言われた通り、体育館の外に出て、体育館の入り口から見て左がわの階段に座って待つことにした。多分もうそろそろきらなちゃんとれいかちゃんもくると思う。
「まだかなあ」
しばらく待ってもきらなちゃんとれいかちゃんはこなかった。
暇だけど、することがない。きらなちゃん、大丈夫かなあ。ただしくん何してるのかなあ。今何時かなあ。そういえば体育館に時計があるんだから見てくればよかったなあ。部活が終わりってことはもう六時くらいだよね。
まだかなあ。
足を伸ばしてぱたぱたと右に左に持ち上げては下ろす。なんかお裁縫の道具持ってきたらよかったなあ。まさかひとりぼっちになるなんて。
でも、怖くないなあ。一人ぼっちだけど、後ろの体育館にはただしくんがいるし、グラウンドにはきらなちゃんもれいかちゃんもいる。意外と学校、怖くないな。休みだからかな。休みの日にも天文部の活動があればいいのに。火金だけじゃなくって。
そうだ。さっきのただしくんかっこよかったなあ。
『変わってちゃダメですか?』だって。
きゃー。
ただしくんってあんなにかっこよかったんだ。ぬいぐるみを見てるところと、水風船を投げるところしか知らなかったから、違う一面が見れて嬉しいな。また見にきてもいいかな。そういえば今日は急に来ちゃったからびっくりしたかな。
「よっ、お疲れ様」




