なんだろう?
それから何度も忠くんはゴールを決めていた。相手のシュートを手で止めていた。すごくかっこよかった。ぬいぐるみを見てるただしくんはかっこいいけど、可愛いんだって思った。
今何時だろう。もうずっとただしくんを目で追っかけている。休憩時間になってもただしくんはこっちにきてくれなかった。部員のお友達と話して笑っていた。そんな姿もかっこいいって思った。私って、本当に、気づけばただしくんのことが好きになってたんだなあって思った。
「ねえ、私サッカー見に行ってきていい?」
れいかちゃんがこそっと聞いてきた。
「きらなちゃん怒んないかなあ?」
「もうそろそろ大丈夫じゃないかなあ、むしろ誰かいたほうが安心するかもと思って」
「そっか、じゃあ私も」
「ああ、いいよいいよ。たかちゃんはただしーみてな。たかちゃんただしー見るのすごい楽しそうだし。また戻ってくるから。じゃ、私行ってくるね」
「そ、それなら、待ってるね。ちゃんと戻ってきてね?」
「うん、ちゃんと戻ってくるから安心して。それにここにはただしーいるし安全でしょ」
「そっか、そうだね。じゃあまた後でね」
「うん、行ってくるね」
れいかちゃんは体育館から出ていった。私は一人になってしまった。でも、ただしくんがいる。大丈夫、怖くない。
ダン。ダン。ダン。
キュッ。キュッ。キュッ。
体育館にバスケ部員の声とボールと靴の音が鳴り響く。見ているうちにだんだんルールがわかる。ことはなかった。全然ルールがわからないまま試合が流れていく。ハイタッチしたり。悔しがったりする人もいる。とりあえず、ボールが入れば嬉しくて、ボールが入らなければ悔しいってことはわかった。
多分、ていうか絶対?
多くゴールにボールを入れた方の勝ちなんだよね。
ピーっと顧問の先生が笛を吹いて全員が集まった。
先生が何かなはしている。
もう練習は終わりかな?
結構長く見ていた気がする。
わかんないけど多分二時間くらい?
先生が話し終わって、部員同士でザワザワとし始めた。何だかこっちをチラチラ見ている気がする。今はパンツは見えてない……よね。うん、見えてない。一体何だろう。
すると、ただしくんが部員の塊の中から押し出されるように出てきた。
なんだろう?
ただしくんがこっちに来る。その後ろにぞろぞろと部員の人たちもついてくる。
な、ななななんだろう。みんな背が高い。怖い。
「よ、ようたかし。れ、練習見にきてくれてありがとう」
「う、ううん。ルールはわかんないけど、楽しかったよ。聞きたいんだけど、輪っかにボールが入ったら一点?」
「いや、そこの線の中からのゴールが二点で、その線の外からのゴールが三点」
「ほう、なるほどお。また今度詳しくルール教えて! 私バスケットボール覚えたい」
「い、いいぞ。教える教える」
「それと、頭どうしたの? 何つけてるの?」
「ああ、ヘアバンドか? 前髪が邪魔だからこれで抑えてるんだよ」
「ふうん、そうなんだ」
「こ、こんなもんでいっすか?」
ただしくんは後ろを振り返って部員の人たちに話しかけた。
なんだろう?
「いや、ダメっしょ、もっとちゃんと紹介してよ」
「そうそう、先輩差し置いて彼女いるとか許し難いし」
「えっと、俺の、彼女っす」
私は部員の人たちに紹介された。