とても久しぶりに通学路をセーラー服を着て歩く
「お邪魔しましたー」
「あ、私も、お邪魔しましたー」
「あら、もう帰るの? どこかに行くの?」
お母さんが居間から顔を出した。
「うん、学校行ってくる」
「もう?」
「うん、みんなで部活見学しようって!」
「そっか、気をつけていってらっしゃいねー」
はーいと声を揃えて言った。
「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
さっきも外に出たけど、今日はいい天気だった。雲ひとつない青空。星を見るのには絶好の日だ。曇りとか雨じゃなくてよかった。
「よーし、しゅっぱーつ」
とても久しぶりに通学路をセーラー服を着て歩く。心臓がバクバクと高鳴る。少し、ほんの少しだけ恐怖を感じていた。日向さんたちにあったらどうしよう。日向さんたちとはあれ以来、水風船を投げ合って以来、会っていない。あったら何か言われるだろうか。大丈夫だろうか。怖くなってきらなちゃんの裾を掴んだ。
「たかしちゃん、大丈夫。私も麗夏もついてるから。だから安心して。それに、芽有たちはチア部だけど、行ってないみたいだから。今日会うなんてことは絶対にないわ。夏休みにわざわざ部活に来るような奴らじゃないもの。多分、どっかで遊んでるはずよ」
「そっか。よかった。ちょっと不安だった」
「大丈夫大丈夫。私に任せなさい」
「うん、ありがとう。きらなちゃん。」
十五分くらいかけて歩いて、学校に着いた。学校は私が通ってた頃と同じ形をしていた。そりゃ、そうなんだけれど、そうじゃなくって、何だか不思議な感じがした。
「よーし、じゃあまずサッカー部でも見に行きますか」
「阿瀬君がいるから?」
「たかしちゃん? いつからそんなこと言う子になったの? 違うでしょ、ここがいるからよ。わかった? ここがいるから」
「はあい」
きらなちゃんには冗談が言える。とても楽しい。
「きらちゃんとシューくんって両思いでしょ? 何で付き合わないの?」
れいかちゃんがズバッときらなちゃんに聞いた。どストレートだ。
「だああ! ばか。両思いかなんてわかんないでしょ?」
「ふーん、自分のことになると鈍感なんだー」
「だって、もし。もしも両思いじゃなかったらどうするのさ。私、立ってられなくなっちゃうよ。だから今はこのままでいいの。もっと蹴人が私のことを好きってわかったら告白するわ」
「こう見えて意外と奥手なんだねえ、きらちゃんって」
「ふふふ」
きらなちゃんが可愛くって笑っちゃう。
「うるさいわよ麗夏。たかしちゃんも笑わない。さ、行くわよ」
「わあー、でも本当に入っちゃった。バレないかな? 怒られないかな?」
「変装してるから大丈夫なはずよ。あんたは今高橋なんだから。ただ、水泳部の顧問のなゆたんとか麗夏のこと知ってる先生には見られちゃダメよ?」
「オッケー、見つかりそうになったら逃げるわ」
「よし、それでいい。たかしちゃんも一緒に逃げるのよ?」
「わ、私も?」
「みんなで逃げないとはぐれちゃうでしょ」
「そ、そっか。頑張る」
そんな話をしながらグラウンドに出た。グラウンドでは半面で野球部が、もう半面でサッカー部が部活をしていた。




