一緒にお買い物……!
「あう、み、見てないよう」
ちょっとみてたけど。嘘ついちゃった。
「うっそだあ、ちっちゃいとか思ったでしょ!」
そ、それは……。
「でもいいんだもん、この方が水泳の時水の抵抗がないから早く泳げるんだもん」
「そうなんだ。小さい方が有利なの?」
「有利だと思うよー。水の抵抗が少ないからね」
「そっか。なるほど」
スポーツってそういうこともあるんだ。
「きらちゃんみたいにでっかいと大変だろうなあって思う」
「そうかなあ、水着である程度締め付けられるから意外と楽よ?」
きらなちゃんが床に置いた鏡を見てお化粧をしながら返事をした。
「そんなこと言ったらちっちゃい私が損じゃんか。小さい方が得なの! わかった?」
れいかちゃんがきらなちゃんの頭を掴んだ。
「わかったわよ。貧乳の方がお得です」
「こらー! 貧乳とかいうなー!」
れいかちゃんがきらなちゃんの頭をブンブンと揺さぶった。
「わああわあかったから。今揺らさないで、眉毛書いてるとこだから」
「あはは、ごめんごめん。ねーねー、あのさー。提案なんだけど、今度みんなでプール行かない?」
「おっいいねえ。じゃあさ、水着も一緒に買いに行くってのはどう? スクール水着じゃつまんないじゃん」
れいかちゃんときらなちゃんと一緒にお買い物……!
「いこいこ! 水着はちょっと恥ずかしいけど、みんなでお買い物行きたい!」
「じゃあさ、八月十一日がちょうどサッカー部もバスケ部も休みだからさ、みんなプールに誘っちゃおうよ。ここも蹴人も忠も一も!」
ただしくんも?
それはちょっとはずかしいな。
「お! いいねえ、じゃあみんなで市民プール行く? それとも電車乗ってでっかいプール行く?」
「うーん、みんなに聞いてみよう。でもでっかいプールいいよね。ウォータースライダーとか流れるプールとか」
「じゃあほぼほぼでっかいプールだなあ。あそこなんて言うんだっけ」
「アピなんとか!」
「あはは、それだ。アピなんとか。アピなんだっけ?」
「忘れちゃった。まいいじゃん。じゃあ買いに行く日も決めないとだなー。前日にさ、買いに行ってさ。たかしちゃん家かわたしん家にお泊まりするってのはどう? あーでも荷物増えちゃうかー」
「パジャマなしにしたら荷物減るよ! いいね、私の家でもいいよ?」
「れいかちゃん家!」
行ってみたい。どんなお家なんだろう。絶対綺麗なんだろうな。
「お、たかしちゃんが食いついた。麗夏ん家でもいいね。ま、それはまたおいおい決めるかー」
「うん! すっごい楽しみ」
「ねー!」
「たかしちゃん? わかってると思うけど『プール』に行くんだからね。それもみんなで。恥ずかしいとか言って水着にならないのは無しよ? 忠にも蹴人にも一にも、水着姿見られるんだからね?」
そっか、プールってことはそういうことだ。水着って下着みたいなアレだよね。緊張してきた。恥ずかしくなってきた。どうしよう。
「あはは、たかちゃん緊張してるー。かわいいなあ。彼氏に水着披露する。くらいのつもりでいればいいのに」
「た、ただしくんに見られるのが一番恥ずかしい……」
考えるだけでもう恥ずかしい。水着なんて裸みたいだし……。
「そ、それは後で蹴人と一に謝った方がいい発言ね」
「あう。そ、そういうつもりじゃないもん」
「まあでも、何とかなるでしょ。たかしちゃんの水着は私たちがしっかり選んであげるからね。その代わり、たかしちゃんもちゃんと私たちの水着選んでよ?」
「うん、頑張る」
「とまあ、そんなこんなでメイクも終わったわ」
メイクしたきらなちゃんは、うんと可愛くなっていた。ううん、メイクする前からうんとかわいい。でも、そうじゃなくって、綺麗な顔が更に綺麗に可愛くなっていた。
「きらちゃんメイク上手だねえ。私全然メイクとかしたことないなあ。たかちゃんは?」
「わ、私もほとんどしないなあ。たまにリップとかつけるくらい。でも可愛くはならないかなあ」
「私が教えてあげよっか? と言っても私もお母さんに教えてもらっただけなんだけどね」
「きらなちゃんのお母さん、お化粧上手なんだ!」
「うん! すっごいうまいよ。お母さんのメイク前とメイク後を見てほしい。本当に!」
「そ、そんなに違うんだ」
「私も高校生とかになったらメイクとかするのかなあ」
れいかちゃんの目はとても遠い目をしていた。
私も上手くなって、可愛くなりたいなあ。ただしくんに褒められるくらいに。
「あー、今たかしちゃん忠のこと考えてたでしょ」
「え、か、考えてないよう」
突然の図星に咄嗟に嘘をついてしまう。
「うっそだあ、またデレデレした顔になってたもん。どうせ、メイクが上手くなって忠に可愛いって言ってもらいたいなあ。とか考えてたんでしょ」
「うっ、ううう」
「たかちゃんは初々しいねえ。私は彼氏とか考えたことないなあ。恋愛って全然わかんない」
「わ、私もわかんなかったんだよ? 恋愛って全然わかんなかった。けど、気がついたら、好きになってた……」
「何それー! かわいいー!」
れいかちゃんに頭を撫でられた。
むう、可愛くないもん。
「じゃあそろそろ学校行く?」
「うん、行こっか」
「ダイワ中学校。久々だなあ。ワクワク」
私ときらなちゃんはセーラー服で、れいかちゃんだけ体操服に下はジャージで、みんなリュックを背負って部屋を出て、ギシギシと降りて玄関に向かった。