っていうか、ほとんどない。と思う。
「あら、見かけない子ね?」
お母さんが居間から出てきた。
もう、わざわざ出てこなくたっていいのに。
「御城麗夏です。お邪魔します」
「あ、麗夏ちゃんね、たかしちゃんから聞いてるわ。水泳部なんですって?」
「はい、水泳部です」
「もう、お母さん! お話広げなくていいから! 私たちは私の部屋に行くから!」
「はいはい、ゆっくりしていってね」
「はい! お邪魔します!」
お母さんはおせっかい焼きだ。何かあったら自分も混ざろうとしてくる。もう。
私は引き戸を開けて、二人を招いた。
「ここがたかちゃんの部屋かー。綺麗だねえ」
「れいかちゃんの部屋の方が絶対綺麗な気がする」
「そんなことないよー。でも汚くはないかなあ」
「やっぱりー!」
二人で話していると、きらなちゃんが鞄をゴソゴソし始めた。
「どうしたのきらなちゃん」
「あ、私今から化粧するから、二人喋ってて」
やっぱりお化粧するんだ。れいかちゃん迎えに行くときは間に合わなかったからあきらめたんだ。きらなちゃん、お化粧なんてしなくても全然綺麗なんだけどなあ。
「そうだ、れいかちゃん。私お顔洗ってきていい?」
「いいよ、私どこに座ればいい?」
「どこでもいいよ! 座布団もあるし、ベッドもあるし、勉強机の椅子もあるし」
「わかった。テキトーに座っとくね」
「すぐ戻ってくるからね。あ、ぬいぐるみ。そこに置いてあるから見てていいよ」
「やったー、行ってらっしゃーい」
私は一階の洗面所に降りた。前髪を濡らさないようにヘアバンドをつけて、セーラー服を濡らさないようにタオルを巻いた。一度顔に水をかけてから泡をつけて顔を洗う。水でよく流して首に巻いていたタオルで顔を拭いた。うん、綺麗。大丈夫。
階段をギシギシと登って、部屋に入ると、きらなちゃんは床に座ってまだお化粧をしていた。れいかちゃんは勉強机の椅子に座ってくるくると回っていた。
「あはは、れいかちゃん何やってんの」
「暇だったからー。私回るの好きなんだよね」
「でも気持ち悪くならない?」
「気持ち悪くなってきたら反対向けに回って回復するんだよ。こうやってー」
といってれいかちゃんは反対向けに回り始めた。
「たかちゃんもやるー?」
「やらなーい。私すぐ酔っちゃうから」
「そっかー」
くるくると回るれいかちゃんを横目に、きらなちゃんに聞いた。
「この後どうするの? もう制服着ちゃってるけど、部活まで何して遊ぶ?」
きらなちゃんはお化粧をしながら返事をしてくれた。
「あのねー、私の化粧が終わったら学校に行くのよ」
「えっ、学校?」
まだドキッとする。学校は少し怖い。
「まだ部活まで時間あるよ? そー、だからみんなで部活見学でもどうかなーって。部活六時からでしょ。だからそれまで見学しよう! ってことで、麗夏、そこの体操服とジャージ着てくれる? これならうちの生徒って思われるから」
「なーるほど! きらちゃんあったまいい! これたかちゃんの?」
「うん、私の、入るかなあ」
「入る入る。そんな身長違わないし、大丈夫大丈夫。お、高橋って書いてある。今日は私は高橋さんだ。」
れいかちゃんは体操服に着替え始めた。れいかちゃんの胸はきらなちゃんと違って控えめで、私よりも小さいと思った。っていうか、ほとんどない。と思う。
「あー! たかちゃん、私のおっぱい見てたでしょ」




