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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと部活動
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怪しい顔できらなちゃんは言った

「たかしちゃん、起きて。もう十一時半だよ」

「え、もうそんな時間?」


 時計を見ると十一時三十四分だった。


「わあー、れいかちゃんきちゃう。着替えなきゃ着替えなきゃ」

「大丈夫よ、そんなに慌てなくても間に合うって」

「でも、だって、あと二十分くらいしかないよ?」

「大丈夫大丈夫」


 きらなちゃんがゆっくりとベッドから降りた。私も追いかけるようにベッドから飛び降りた。


「わー、お着替えどうしよっかなあ、なに着よう」

「そんなの決まってるじゃん」

「えっ?」

「セーラー服セーラー服。セーラー服着るのよ。だって学校に行くんだもん、制服着ないと」

「で、でも学校は夜からでしょ?」

「ふふーん、私に考えがあるのよ」


 怪しい顔できらなちゃんは言った。怪しい、何かを企んでいる顔だ。


「ま、いいからいいから、セーラー服着なさい」

「ううー、わかったけど、なんか恥ずかしいこととかしない?」

「大丈夫よ、任せといて」


 私は久しぶりにセーラー服に着替えた。かけていたセーラー服は、ずっと触っていなかったから、肩のところに少し埃が積もっていた。

 きらなちゃんもこっそり持ってきていたセーラー服に着替えた。


「この体操服とジャージは?」

「あ、いいのいいの、とりあえずそこに置いといて」


 何に使うんだろう。私が着るのかな。


 セーラー服着たのに?


 考えてもわからなかった。


「よし、たかしちゃんもリボンつけたことだし、迎えに行こっか」

「待って待って、お顔洗ってないよ」

「うーん、大丈夫」


 きらなちゃんは私の顔をまじまじと見て言った。


「洗わなくて平気よ。キレイキレイ。行きましょ」


 こうなったらきらなちゃんは止まらないんだ。私はきらなちゃんに手を引かれて玄関に降りた。靴を履いて、玄関の戸を開ける。


「行ってきまーす」


 きらなちゃんが大きな声で言った。


「い、行ってきまあす」


 寝起き二十分で家を出た。きらなちゃん、お化粧とかしてないのにいいのかな。


「とりあえず迎えに行くだけだから。大丈夫大丈夫、考えてるから安心して」


 金子さんの前についた。今日はお金を持ってきていないから駄菓子は買えない。ただ待ち合わせの場所に使っちゃってごめんなさい。って思った。


「もうすぐ来ると思うんだけどなあ」

「家出るときは五十六分だったもんね」

「それにしてもぐっすり寝ちゃったわ。まさかこんな時間まで寝ちゃうとはね。たかしちゃんと寝るとリラックス効果ありそうね」

「昨日、私いつの間にか寝ちゃってた」

「ほんとよ! お布団に入るなりすぐ寝ちゃうんだから。まあたかしちゃんの寝顔見てたら私も眠たくなってその後すぐに寝たけどね。一人で夜更かししても暇だったし」

「ね、寝顔……、恥ずかしい」

「可愛い寝顔だったわ。忠にも見せてやりたいところね」

「うう、ただしくんに見られるの、一番恥ずかしいかも」

「ふふ、やっぱり好きなのねえ」

「ううう、好き……だけど」

「それにしても麗夏……。あ、きたきた! おーい!」


 れいかちゃんはスカートをひらひらさせながら、自転車を漕いでやってきた。自転車で四十分くらいかかるって前に言ってたような気がする。


「あーきらちゃん、たかちゃんおはよー。って二人とも何で制服?」

「これには訳があるのよ。まあまあ。じゃ、たかしちゃん家行こっか」


 れいかちゃんは自転車から降りて、自転車を押しながら歩いた。背中には少し大きめのバッグを背負っている。


「たかちゃんちこの辺なの?」

「ほんとすぐそこよ。すぐそこっていうか、ここよ」

「わあ、ほんと近いんだね、じゃあこっち住んでた時、金子さん行く度に前通ってたんだなあ」

「でしょ、驚きでしょ。まいいわ、入って入って」

「ふふふ、きらなちゃん私の家の人みたい」


 きらなちゃんが先頭で玄関の戸を開けた。


「ただいまー!」

「ただいまあ」

「お邪魔しまーす」


 三人の声が合唱団みたいに綺麗にはもった。

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