じゃあ私おばあちゃんかも
「十二時ってことはだいぶん眠れるねえ。夜更かしし放題だ」
「そうだね、でも私少し眠たくなってきた」
目を擦りながら言った。
「たかしちゃんいつも何時に寝てるの?」
「えっと、十時くらい」
「はやーい! 私十二時くらいまでは確実に起きてるよ?」
「ええ! そんな夜更かししてるの? 朝起きられる?」
「いや、ぎりぎりよ。だからたまに遅刻するのよ」
ああ、だからきらなちゃん遅刻するんだ。そういうことだったか。
「あはは、だめじゃん。私が学校行き始めたら遅刻とかしたらダメなんだからね?」
「そうだねえ、たかしちゃん守んなきゃだもんねえ」
「今日は早く寝る練習する?」
私はベッドに寝転んできらなちゃんに言った。
「しなーい、夜更かしするー。ほら、寝てないで起き上がって!」
「もう、きらなちゃんったらー」
きらなちゃんに手を引かれて私は立ち上がった。いつも座っている場所に私は座った。きらなちゃんはベッドの上に座った。
「でも、麗夏来れるってなってよかったね」
「うん、部活休むって言ってたねえ。大丈夫かな?」
「大丈夫よ、麗夏なら大丈夫」
「そっか、なら大丈夫か。れいかちゃんくるの楽しみだなあ」
「そうね、久しぶりよね。芽有たちに水風船投げてからは一回しか遊んでないもんね」
「うん、それもあの夕焼けの公園だったから、れいかちゃんがこっちに来るのはとっても久しぶりだね」
「思いっきり遊ぼうね。思いっきり楽しもう!」
「うん! 思いっきり楽しむ!」
ふわああ。あくびが出てきた。まだ九時過ぎなのに眠たくなってきた。でも、今日は夜更かしをするんだ。頑張るんだ。
「何あくびしてんの! まだまだ夜はこれからよ!」
「ううん、だっていつもこの時間になったらもうお布団に入ってるから」
せっかくきらなちゃんがお泊まりに来てるのにどんどん眠気が襲ってくる。
「おばあちゃんみたいな生活ね」
「おばあちゃんって九時過ぎには寝るの?」
そういえばおばあちゃんって何時に寝てるんだろ。
「なんか早寝早起きってイメージがあるじゃない?」
「そっか、じゃあ私おばあちゃんかも。ふわあ」
我慢しようとしても欠伸が出てしまう。目には大粒の涙が溢れ出した。
「もう、そんなこと言うならお布団入る? そういえば私どこで寝ればいい?」
「え、一緒にお布団に入るんじゃないの? 私ずっとそうだと思ってた」
「狭くない?」
「たしかに狭いけど、楽しいかなって。それに、予備のお布団って多分ないし。そうじゃなかったら床に寝ることになっちゃうよ?」
「じゃあ床に寝よっかなあ」
「えええ! 一緒に寝ないの? 私楽しみにしてたのに!」
「あはは、冗談よ。一緒に寝ようねえ」
「やったー。私壁際―」
ベッドに飛び乗って壁際に寝転がった。
「もう寝るの? もう」
「寝ないよー、ねんころしてお話しするの……」
「そっか、じゃあ失礼して……。これ、私落っこちるかも……」
「ふふふ、落っこちないようにこっちにもっと引っ付いて。ぎゅーってしてえ」
「こう? ぎゅーう」
「そうそう……。もっとぎゅーって……」
気がついたら寝落ちていた。きらなちゃんにぎゅーってしてもらってとても幸せだったことを覚えてる。隣を見ると、きらなちゃんがこっちを向いて眠っていた。時計は六時二十三分。私はきらなちゃんを抱きしめてもう一度寝ることにした。




