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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと部活動
142/211

たかしちゃん、体操着とジャージ準備しといて

「あ、もしもし、麗夏さんいますか?」

「麗夏は私ですけど、どなたですか?」


 うっすら会話が聞こえてくる。私は受話器に耳を近づけて、会話を聞いた。


「あ、ごめんごめん、綺羅名よ。吉良綺羅名」

「え、あー! きらちゃん。どうしたのこんな時間に?」

「うん、あのね。明日遊べない? あ、違う、明日じゃなくて明日と明後日」

「明日も明後日も部活があるねえ。急だねえ。どしたの? なんかあった?」

「なんかあったって言うか。なんていうか。明日さ、部活の合宿があって、学校にお泊まりするんだけど、麗夏もどうかなって思って」

「お泊まり? てことは着替えとかいるんだ。でも楽しそうだなあ。部活休んじゃおっかなあ。てか、それ私行っていいの? 怒られない?」

「着替えはパジャマくらいかなあ。あと多分怒られる。めためた怒られると思う。けど、怒られた後帰れとは言われないと思う。麗夏の家遠いし」

「あはは、なるほどねー。そんなうまく行くかなあ。でもうまくいかなかったとしてもそれはそれで楽しそうだなあ。帰れって言われたら帰ろっかなあ。最悪お母さんに迎えに来てもらえるだろうし」

「じゃあ、来る?」

「うん、行く。天文部だよね? 星見るんだよね? 行きたい。私準備するね」

「パンツ忘れちゃダメだよ?」

「あはは、パジャマだけでいいんでしょ。じゃあ、どうしよっかなあ明日の十二時にいつもの公園でいい?」

「あー、それより金子さん来れる?」

「金子さんって、あの駄菓子屋さん?」

「そうそう、私いまたかしちゃんの家泊まってるからさ。金子さんとたかしちゃんの家近所なのよ」

「そうなんだ。じゃあそうする。ってことはいまたかちゃんいるの?」

「うん、受話器から聞こえる麗夏の声を盗み聞きしてるわ」

「あははー、たかちゃんかわいい。ねえ、ちょっとかわってよ。お話したい」

「いいよー、はい。かわってって」


 えっ、それは考えてなかった。電話でお話しするのはちょっと緊張する。


「も、もしもし? れいかちゃん?」

「もしもし? たかちゃん? 久しぶりー」

「ひ、久しぶり」

「なになに? 緊張してるの? もー、緊張なんてしなくていいのに」

「うう、だって、久しぶりだから」


 それに電話だし。


「たかちゃんのお家金子さんの近所だって聞いたからさ。明日お家寄っていい? お家入っていい?」

「うん、いいよ。何にもないけど」

「ぬいぐるみとかあるでしょー。私、見たかったんだよね」

「うん! いいよ! 見せてあげる!」


 嬉しい、見せたい。れいかちゃんにも見てほしい。


「じゃあ、明日十二時くらいに金子さんに行くから、迎えに来てね」

「うん、迎えに行く!」

「てことだから、また明日ねー!」

「うん、また明日―」


 ガチャリ。といって電話が切れた。


「あら? 電話切れたの? なーんだ、私に返ってくるもんだと思ってたわ。まあいいや。これで第一段階作戦は成功ね。次は第二段階ね」


 第一段階はれいかちゃんを誘うこと、じゃあ第二段階は何だろう。


「第二段階って?」

「それは明日のお楽しみ!」

「ちぇー」

「たかしちゃん、体操着とジャージ準備しといて」

「うん、わかった。けどなんで?」


 何に使うんだろう。運動するのかな。それはちょっと嫌だなあ。


「なーいしょ」

「教えてくれてもいいのにー」

「明日のお楽しみよ」


 私たちは部屋に戻った。

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