体がふわふわして、頭もふわふわして
「でも、あのたかしちゃんがねえ。ねえ、ちゅーってさ。どんな感じなの?」
「ううう、えっと、恥ずかしいよう」
「お願い、私したことないんだもん。たかしちゃんしか知らないの。教えて!」
きらなちゃんに懇願されたら、断れない。
「えっと、体がふわふわして、頭もふわふわして、気持ちい感じ……」
「そうなんだー。私も蹴人とちゅーしたいなあ」
きらなちゃんが上を見上げながら言った。
「告白しないの?」
「だって、振られたら怖いじゃん。私あいつに嫌われてるっぽいしさ」
「そんなことないよう、阿瀬君もきらなちゃんのこと好きだと思うよ? 多分、両思いだと思う」
「ほんとー? でもいっつも喧嘩みたいになるよ?」
「うんー、わかんないけど、でも、きらなちゃんなら大丈夫って思うなあ」
私がみるに阿瀬君はきらなちゃんのことが好きなんだと思う。だけどきらなちゃんは信じてくれないんだよなあ。
「そうかねえ、まあ、考えとくわ。そういや十一日がここも蹴人も忠も一も休みなんだって。だからみんなで遊ばない? またあそこの公園でさ。水風船とかサッカーとかしようよ」
「うん! 遊びたい。またみんなに会いたい!」
「よし、決まり! またみんなに電話しておくわね」
「うん! 今度は寝坊しないようにする!」
やった、またみんなで遊べるんだ。あ、でも、ただしくんと付き合い始めたの、みんな知ってるんだよね……なんか前と違った緊張感があるなあ。うう、緊張してきた。
「ふふ、今から緊張してどうすんのさ。もうバシッと、忠には俺の嫁だって紹介してもらうつもりだから」
「よ、嫁って」
私、ただしくんと結婚するのかな……。
「いま忠と結婚したとこ想像したでしょ?」
「うっ、な、何でわかったの」
「そんな顔してたわよ。丸わかりよ」
きらなちゃんは頭を撫でてないのになんで思考を読めるんだろう。こんなんじゃきらなちゃんに何も隠し事ができない。
「それにしてもさあ、たかしちゃんは忠のどこが好きなわけ?」
「え、えっと。……わかんない」
「あはは、何それ! でも好きなんでしょ?」
「うん、好き……」
「なんかないの? ここが好きーみたいな。顔が好きーとか、声が好きーとか」
「あ、声は好きかも。顔も、好きかも。あと、背が高いとこ。と、……お父さんに似てるとこ」
「お父さんに似てるの?」
「……ちょっとだけ」
「たかしちゃんのお父さん見たことないからなあ。そっかあ、でも何となくわかったわ。全部好きなのね」
「うん、全部好き」
「忠も羨ましいわねえ、たかしちゃんにこんなこと言わせるなんて。私も言ってもらいたいわ」
「うん? きらなちゃんのこと大好きだよ?」
「んもう! たかしちゃんは!」
きらなちゃんが私を抱きしめた。私もきらなちゃんを抱きしめた。
「たかしちゃーん」
「きらなちゃーん」
ぎゅうー。
バタンという音と共に天が入ってきた。
「わっ、お姉ちゃんたち何してるの? 恋人?」
あわわわ。
「あはは。恋人じゃないわよ。たかしちゃんの恋人は忠だもん。私とたかしちゃんはお友達!」
「わーわー! わー! きらなちゃん、しー! まだ誰にも言ってないんだから!」
「え、そうなの、ごめん、言っちゃった」
「お母さーん! お姉ちゃんときらなちゃんが恋人かと思ったらお姉ちゃんとただしくんが恋人だってー!」
「わー! こら! 天! いっつもノックしなさいって言ってるのにい!」
天は下に降りていった。ああ、お母さんにバレちゃった。もうだめだ。




