二人がいたら、本当に安心だって思える
「っていう……事が……あって」
私の顔は真っ赤になっている。手に汗もかいている。相手がきらなちゃんとは言え、ただしくんとの間にあったことを話すのはとても緊張したし恥ずかしかったし、心臓がバクバクいった。
次の日、きらなちゃんが遊びにきてくれて、きらなちゃんがなにがあったか詳しく聞かせろって詰め寄ってきた。どうやら私がとてもデレデレしていたらしい。いつも通りだと思ったのに、全然違ったみたいだった。
私は、流石にきらなちゃんに隠し事はできず、一通り全部伝えた。きらなちゃんは顔を真っ赤にしたりムッとしたりキョトンとしたりして少し面白かった。
「私のたかしちゃんなのに! なに勝手に忠に明け渡してんのよ!」
「だって、好きだって分かっちゃったんだもん」
「かー! あのたかしちゃんが簡単に男のことを好きだなんて! くそーたかしちゃん忠に取られちゃった」
「取られてないよ。私の一番の友達はきらなちゃんだもん」
「でも彼氏は忠なんでしょ?」
「そ、そういうことになりました……」
「きー! くそう、いずれはこうなるとは思っていたけれど、こんなにも早くこんなことになるなんて! 後押しなんてするんじゃなかったわ」
きらなちゃんは悔しがっているのになぜか笑って言った。
「それでね、見て、このサメのぬいぐるみ。貰ったの」
「あれ? それ忠の好きなサメじゃん。貰ったの?」
「うん、その代わり、私の黒猫のぬいぐるみをあげたの」
「あー、あのたかしちゃんに似てるやつ」
「えええ、きらなちゃんも? ただしくんもあの黒猫さん私に似てるって言ってた」
「たかしちゃんは黒猫っぽいもんね。しっかし、たかしちゃんに似てるぬいぐるみを持って帰るなんてちゃっかりしてやがるな」
「ふふふ、似てるって言ってたから私があげたんだよ。い、いつでも私を思い出してほしいなあって思って」
今、私は顔が真っ赤になってると思う。
「もう! たかしちゃんってもっと引っ込み思案だったでしょ。なにはっちゃけちゃってんの!」
「なんか、昨日は振り切れちゃった。ちょっと自分でも人見知り直ったような気がする」
「学校、これそう?」
「うーん、まだちょっと怖い。きらなちゃんもただしくんもいると思うと心強いけど、まだちょっと怖いなあって思う」
二人がいたら、本当に安心だって思える。
「そっか、来れるといいね。やっぱり彼氏と学校生活は過ごした方が思い出になるもんね」
「そ、そうだね。そうだ、きらなちゃん、もう教えてくれてもいいでしょ」
「なにを?」
「きらなちゃんの好きな人。私の好きな人は教えたもんね?」
「な、ななな内緒よ」
「だめー! 内緒はだめー!」
私はきらなちゃんに飛び掛かって脇をこちょこちょした。
「あはははは、わ、待って、待って待って。あははは。わかった、言う、言うます。言うますから」
「ふふふ、言うますってなに。だれ? 誰なの?」
「えっとね、あの、えと、ほら」
私は手をわきわきしながらきらなちゃんににじりよった。
「わかった、わかったから。こちょこちょはなし!」
「はい、じゃあ教えて」
私は立ち止まってきらなちゃんんをじっと見た。
「た、たかしちゃんの性格が変わっちゃった……」
「ふふふ、昨日からなぜか元気になりました」
ふふん、と腰に手を当てていつもの綺羅名ちゃんみたいに踏ん反り返った。
「忠め。これはこれで可愛いからいいけど、私の立場が……」
「なんかすごく吹っ切れた気分だよ。幸せーな気持ち」
「でもよかったね。忠のおかげだね」
「ううん、きらなちゃんのおかげだよ。だって、きらなちゃんがいなかったらただしくんうちに呼んでないもん。それに、ただしくんと付き合うってことになる前はずっときらなちゃんが支えてくれたんだもん。私、ただしくんも好きだけど、きらなちゃんも大好きだよ」
「うわーん、たかしちゃーん! 私も大好きー」
きらなちゃんが私に抱きついて泣いたふりをした。私も抱きしめ返して私も泣いたふりをした。




