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たかしちゃん  作者: 溝端翔
第二部 たかしちゃんと竹達くん
122/275

ただし……くん

「好きじゃないよう」


 どっちも。


 竹達くんも私のことが好きじゃないし、私も、竹達くんのことが好きじゃない。


 友達としては『好き』だけど、恋愛感情として『好き』じゃない。と思う。最近きらなちゃんもお母さんも彼氏だとか好きだとか言うから竹達くんを変に意識してるだけ。そう、変に意識してるだけで好きなんかじゃない。と……思う。


「まあそんなに忠のことを考えてないでさ。この際誰が誰を好きとかどうでもいいわ! とにかく、たかしちゃんは忠って言えばいいのよ。わかった? た!」


 きらちゃんが私の目を見て『た!』と言った。それ以外は何も言わない。ずっと私の目を見ている。


 これは、復唱しろってことなんだろうか……。


「た?」


「だ!」


「だ?」


「し!」


「し?」


「そう! 言えるじゃない! はい、続けてー! た! だ! し! はい!」

「た……だ……うう、無理だよう」

「なんでかなあ、じゃあこれは? 天!」

「天!」

「弟ならいけるのね」

「天はだって弟だもん、言えるよ」

「じゃあさ、お兄ちゃんだと思えば? そしたら呼べるんじゃない?」

「えええ?」


 竹達くんが……お兄ちゃん……。うう、なんかそれはそれで恥ずかしい。


「うう」

「あー。無理か。これはもう何回もやるしかないわね。たかしちゃん? 今日は逃さないわよ?」

「き、きらなちゃあん」


 きらなちゃんの目は本気だった。


「これはたかしちゃんの為なのよ。私は恋の後押しをしないといけないから」

「だから恋じゃないんだってばあ」


 きらなちゃんはすぐそうやって好きとかに繋げようとするんだから。


「忠!」

「ただ……うう」

「忠!」

「ううう」

「竹達!」

「竹達くん」


 竹達くんは言える。大丈夫。


「じゃあ日々人!」

「ひびとくん」

「宙!」

「そらくん」

「なんで後輩なら言えるのよ。どう言うことなの?」

「だって、年下だから……多分」

「んー、じゃあ蹴人!」

「しゅうとくん。あっ、ちが、これは違くて」

「ほーん、蹴人は呼べるんだ。たかしちゃん、ほんとに忠が好きなんじゃないの? だから言えないんだよ。恥ずかしくって。だって、忠と同じ同い年の蹴人の名前は言えるんでしょ?おかしいもん。やっぱりそうだって。絶対そうだよ! たかしちゃんは忠のことが好きなんだよ!」


 そ、そうなのかな……。私、竹達くんが好きだから言えないのかな。でも阿瀬君を蹴人くんて言ったのはつい言ってしまっただけだし……。


「蹴人!」

「しゅうとくん」


 あれ、言える。


「一!」

「はじめくん」


 あれれ、言える。


「忠!」

「ただ……ううう」


 ダメだ、やっぱり恥ずかしい。何でか竹達くんだけ恥ずかしい気がする。


「じゃあこれはあれだね、やっぱりたかしちゃんが忠のことを好きなんだよ」

「ち、違うよう。そんなことないよう」

「じゃあ忠って言えるはずだよ。そうじゃないと好きってことになっちゃう」


 えええ、そんなことになっちゃうの?


 じゃあ頑張って言わないと。


 うう、た、ただ、ただし。くん。ただしくん。ただしくん。


「ただし……くん」


 言えた。もうほとんど無理矢理だった。でも言えた、頑張った。でもよかったー、これで私は竹達くんが好きとかじゃないんだ。あ、いや、好きだけど、そう言う意味じゃなくって。


「たかしちゃん、顔真っ赤だよ」

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