うん、美味しい……
「お姉ちゃんだってキャッチボールくらいできるもん」
私はほっぺたをぷっくり膨らしながら天に言った。
けど天はすぐさま言い返してきた。
「お姉ちゃんはキャッチボールできないよーだ。お姉ちゃんが投げたボール全然僕のところに飛んでこないしさー、僕が投げてもきゃーって逃げるばっかりでキャッチもしてくれないもん」
確かに私はボールが怖くて逃げちゃう。天の言うとおりだ。
「むうう、くそう。いいなあきらなちゃんは運動ができて。私は全然できないからなあ」
「でもたかしちゃんは裁縫ができるじゃん。私にはできないもん。私のお母さんは裁縫できるんだけどねえ。今着てる制服改造してくれたのお母さんだよ」
「そうなんだ、制服改造してって言って怒られなかった?」
「うん、お母さんはねー、まあこれくらいならって言って許してくれたよ」
「すごいね! 私のお母さんだったら発狂しちゃうかも」
今度試しに言ってみよっかな。学校行ってないし良いよって言ってくれるかも。
あ、でもお胸が出るんだよね。それは恥ずかしいや。
「本当は自分で出来ればいいんだけどねえ。今度たかしちゃんに裁縫教えてもらおっかなあ」
きらなちゃんは私の目を見て言った。
「うん、いいよ! 教えたげる!」
「やったー!」
きらなちゃんと私も約束した。これで天と五分五分だ。きらなちゃんは私のものだ。天に取られてなるものか。
「ねえ。お姉ちゃんたちいつも何して遊んでるの?」
「んー? お話したりとかかなあ」
「それだけ?」
「うん、だいたいお話ししてるかな」
「何それ暇ー! もっと体動かして遊びたくなんないの?」
「お話しして遊んでるんだよ。天は子供だからなあ……ふふふ」
「あー! お姉ちゃん僕のことばかにして! お話しくらい僕にだってできるもん!」
「はいはい、じゃあご飯にしましょうねー。たかしちゃん、肉じゃが運んでくれる?」
お母さんに頼まれて、肉じゃがをみんなの前に運んだ。きらなちゃんは私の隣に座ってくれる。
「はいじゃあ天君」
「大盛!」
「じゃあ次たかしちゃん」
「ふつ―」
「じゃあ綺羅名ちゃん」
「え? えっと、大盛?」
「で、母さんはこれくらいね」
お母さんはいつも通りみんなの分のご飯をよそってくれた。
「じゃ、いただきます」
「いただきまーす」
自分で作った肉じゃがは、初めてにしては美味しかった。
「美味しいね!」
「うん、ご飯もいい感じに炊けててよかったよ」
「これお姉ちゃんたちが作ったの?」
天が不思議そうに聞いてきた。
「そうだよ。どう? 美味しいでしょ?」
「うん、美味しい……」
なぜかテンションが下がっている。何か問題でもあるんだろうか。生意気だ。
「美味しいなら美味しいって喜んで言いなさい!」
「あはは、でも本当に美味しいね、私料理とかほとんどしたことなかったからちょっと自信ついたや。家でもたまに手伝ったりしようかなあ」
肉じゃがを食べながらきらなちゃんが嬉しそうに言った。
「ねえ! また今度一緒に作ろ! きらなちゃんのお家でも作ってみたい!」
私はきらなちゃんのお顔を見てお願いをした。
「いいね!」ときらなちゃんは私の頭をなでた。すごく嬉しくなって私は肉じゃがを頬張った。
「んー、じゃがいもほろほろ、美味しい」
「糸蒟蒻ってなんでこんなに美味しいんだろうね」
「玉ねぎも甘くって最高」
「でしょ、天?」
「うん、美味しい」
「なんで悔しそうなのよ!」
なんか嫌な感じ。せっかく作ったって言うのに。
「だって、お姉ちゃん運動音痴なのに美味しいご飯作れるなんて……」
「運動音痴は関係ないでしょ! ありがたく食べなさい!」
「はーい」
もぐもぐ、ぱくぱく。みんなで肉じゃがを食べた。付け合わせのサラダもぺろっと食べたけど、結局最後まで私は食べていた。
「たかしちゃん、癖治ってないんだね」
「癖?」




