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たかしちゃん  作者: 溝端翔
第二部 たかしちゃんと竹達くん
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うん、美味しい……

「お姉ちゃんだってキャッチボールくらいできるもん」


 私はほっぺたをぷっくり膨らしながら天に言った。

 けど天はすぐさま言い返してきた。


「お姉ちゃんはキャッチボールできないよーだ。お姉ちゃんが投げたボール全然僕のところに飛んでこないしさー、僕が投げてもきゃーって逃げるばっかりでキャッチもしてくれないもん」


 確かに私はボールが怖くて逃げちゃう。天の言うとおりだ。


「むうう、くそう。いいなあきらなちゃんは運動ができて。私は全然できないからなあ」

「でもたかしちゃんは裁縫ができるじゃん。私にはできないもん。私のお母さんは裁縫できるんだけどねえ。今着てる制服改造してくれたのお母さんだよ」

「そうなんだ、制服改造してって言って怒られなかった?」

「うん、お母さんはねー、まあこれくらいならって言って許してくれたよ」

「すごいね! 私のお母さんだったら発狂しちゃうかも」


 今度試しに言ってみよっかな。学校行ってないし良いよって言ってくれるかも。

 あ、でもお胸が出るんだよね。それは恥ずかしいや。


「本当は自分で出来ればいいんだけどねえ。今度たかしちゃんに裁縫教えてもらおっかなあ」


 きらなちゃんは私の目を見て言った。


「うん、いいよ! 教えたげる!」

「やったー!」


 きらなちゃんと私も約束した。これで天と五分五分だ。きらなちゃんは私のものだ。天に取られてなるものか。


「ねえ。お姉ちゃんたちいつも何して遊んでるの?」

「んー? お話したりとかかなあ」

「それだけ?」

「うん、だいたいお話ししてるかな」

「何それ暇ー! もっと体動かして遊びたくなんないの?」

「お話しして遊んでるんだよ。天は子供だからなあ……ふふふ」

「あー! お姉ちゃん僕のことばかにして! お話しくらい僕にだってできるもん!」

「はいはい、じゃあご飯にしましょうねー。たかしちゃん、肉じゃが運んでくれる?」


 お母さんに頼まれて、肉じゃがをみんなの前に運んだ。きらなちゃんは私の隣に座ってくれる。


「はいじゃあ天君」

「大盛!」

「じゃあ次たかしちゃん」

「ふつ―」

「じゃあ綺羅名ちゃん」

「え? えっと、大盛?」

「で、母さんはこれくらいね」


 お母さんはいつも通りみんなの分のご飯をよそってくれた。


「じゃ、いただきます」

「いただきまーす」


 自分で作った肉じゃがは、初めてにしては美味しかった。


「美味しいね!」

「うん、ご飯もいい感じに炊けててよかったよ」

「これお姉ちゃんたちが作ったの?」


 天が不思議そうに聞いてきた。


「そうだよ。どう? 美味しいでしょ?」

「うん、美味しい……」


 なぜかテンションが下がっている。何か問題でもあるんだろうか。生意気だ。


「美味しいなら美味しいって喜んで言いなさい!」

「あはは、でも本当に美味しいね、私料理とかほとんどしたことなかったからちょっと自信ついたや。家でもたまに手伝ったりしようかなあ」


 肉じゃがを食べながらきらなちゃんが嬉しそうに言った。


「ねえ! また今度一緒に作ろ! きらなちゃんのお家でも作ってみたい!」


 私はきらなちゃんのお顔を見てお願いをした。

「いいね!」ときらなちゃんは私の頭をなでた。すごく嬉しくなって私は肉じゃがを頬張った。


「んー、じゃがいもほろほろ、美味しい」

「糸蒟蒻ってなんでこんなに美味しいんだろうね」

「玉ねぎも甘くって最高」

「でしょ、天?」

「うん、美味しい」

「なんで悔しそうなのよ!」


 なんか嫌な感じ。せっかく作ったって言うのに。


「だって、お姉ちゃん運動音痴なのに美味しいご飯作れるなんて……」

「運動音痴は関係ないでしょ! ありがたく食べなさい!」

「はーい」


 もぐもぐ、ぱくぱく。みんなで肉じゃがを食べた。付け合わせのサラダもぺろっと食べたけど、結局最後まで私は食べていた。


「たかしちゃん、癖治ってないんだね」

「癖?」

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