きらなちゃんは全然不良じゃない
「私です! 初めまして天君。私は綺羅名っていいます。たかしちゃんのお友達です。今日は一緒にご飯を食べるからよろしくね」
「わあ! お姉ちゃんの友達だ! 僕初めて見た! 僕は高橋天って言います。天高くの天って天って書きます。よろしくお願いします」
天って、こんなに行儀良くできるんだ……。私にはいつも無愛想で生意気なのに、なんかむっとしちゃう。
「あ、私はねえ、綺麗な羅針盤の名前で綺羅名って書くのよ」
「綺麗も羅針盤もまだ習ってない! それよりきらなちゃんって……。すっごい金髪だね! 僕のクラスにも茶髪の人はいるけどこんなに金髪の人は居ないよ! 不良みたい! もしかして不良? 悪いことしてる人?」
天はいきなりきらなちゃんに失礼なことを言った。もう。
「こら天! きらなちゃんはそんなことしないし不良でもないよ。とってもいい人なんだから!」
「あはは、たかしちゃんも最初は私のこと不良だって思ってたくせにー」
「う、だって、怖かったんだもん」
「金髪なのに不良じゃないのかあ。でもすごいね! 金髪だあ、いいなあ、僕も金髪にしたいなあ……」
「お、天君も金髪がいい? やってあげよっか?」
私は天の金髪姿を想像した。……ううん、だめ、似合わない。天はそのまま黒髪がいい。
「やったー! お母さん、僕金髪にしていい?」
「ダメよ。学校で怒られちゃうでしょ」
天はお母さんに怒られた。よしっと思った。
「ちぇ、きらなちゃんは学校で怒られないの?」
「怒られるわよ、担任の先生にいつも黒に戻せって言われるわ」
「えー! 戻さないの?」
「戻さないの、私はこの髪型気に入ってるもの」
「わー! やっぱりきらなちゃんは不良だー! お姉ちゃんが不良のお友達作ったー! お姉ちゃんなのに!」
「お姉ちゃんなのにって何よ、いいでしょ、きらなちゃんはすっごく優しいんだから」
天にとって、初めてみる私の友達はどう映っているんだろう。
やっぱり不良?
でも、きらなちゃんは全然不良じゃない、とっても優しくて思いやりのある素敵な友達なんだ。それを天にも知ってほしい。けど、それをどう説明していいか分からなかった。いじめられていた事は言えない。だから、助けてくれたことも言えない。きらなちゃんの魅力をそれ以外で伝えないと……。
「きらなちゃんはね、スポーツも得意なんだよ! ドッチボールなんかしたら天なんて一発でやられちゃうんだから」
「そうなの? 女の子なのに? すごーい! うちのクラスにもきみかちゃんっていう強い女の子いるけど僕まだ負けたことないよ! きらなちゃんにだって僕負けないよ、僕結構強いんだから」
確かに天は運動神経がいいからきらなちゃんに勝てるかもしれない。くそう、なんて言ったらいいんだ。
「まじかー。じゃあお姉ちゃん負けちゃうかもなあ。天君はなんかスポーツやってるの?」
「うん! 最近ねー、野球始めたの。土日行ってるんだー、楽しいよ!」
「そうなんだ、野球かあ。お姉ちゃんは野球はちゃんとやったことないから天君には負けちゃうかも」
絶対そんなことないのにきらなちゃんは謙遜をした。なんか大人だなあ。
「ほんと? 今度キャッチボールしようよ! 僕ね、フライを取るのが上手ってコーチに褒められたんだよ!」
「そうなんだ! すごいね! うん、いいよ。今度しよう。あ、でもお姉ちゃんグローブ持ってないや」
「あーそっかあ、じゃあ素手でしよ! 僕も素手でするから」
「痛くない?」
「痛くないように投げるから大丈夫」
「うんうん、じゃあ今度しよう!」
「やったー! お母さんもお姉ちゃん下手くそだからキャッチボールしてくれる人いなかったんだー! お父さんは全然休みじゃないし。嬉しい!」
きらなちゃんは天と遊ぶ約束した。私をほったらかしでそんなことをして、やっぱりむっとした。




