なんだか一緒に暮らしてるみたい
「あら、何? どうしたの?」
あ、お母さんに見つかっちゃった。
ってそりゃそうか。お母さんが作ってるんだもん。隠れられるわけなかった。
「えっと、今日のご飯何かなあって」
「ん? 今日のご飯は肉じゃがよ?」
お母さんは具材を炒めながら簡単に答えを言った。その答えは私たちが予想していたものとは違った。
「んあっ! コロッケじゃなかった。惜しい!」
「惜しくないよう。全然コロッケじゃないじゃん」
「何? コロッケがよかったの?」
お母さんが不思議そうに見ている。
「ううん、きらなちゃんがね、匂いでコロッケじゃないかって予想してて」
「あらそうなの。今日は肉じゃがよ。あ、ちょうどいいわ、二人とも手伝ってくれる?」
私たちはお母さんに言われるまま、晩御飯作りを手伝った。これが意外と大変で、お母さんは毎日こんなことをしてるんだと思うとすごいと思った。たまにはお手伝いしよう。でもお手伝いするなら勉強しなさいって言われるんだよなあ。
今日は勉強しなさいとは言われずに、きらなちゃんと二人で分担して作業をした。もうお母さんは指示をするだけでほとんど見ていた。
「これ、炒めるのよ。まずはしっかり炒めてね。その方が美味しくなるから。あ、ご飯炊いてない。きらなちゃん、ご飯炊いてくれる?」
「え、えっと。どこにお米が……」
「はいこれ、お米ね。しっかり研いで水を入れてから炊飯器に入れるのよ?」
「は、はい。頑張ります」
私がお肉や野菜を炒めている横で、きらなちゃんはえっさえっさとお米を研いでいる。なんだか可笑しくなってきて笑いが込み上げてきた。
「ふふふ、なんかおかしい」
「えっ、何が? お米洗ってるだけだよ」
「きらなちゃんがうちでお米研いでるのがなんか変。ふふふ」
「今度わたしん家でもたかしちゃんにお米研いでもらうんだから」
「あはは、何それへーん」
「たかしちゃん、焦げないようにね」
「は、はーい」
私たちは協力して肉じゃがを作った。
「きらなちゃん、わたし混ぜてるからお醤油入れて」
「はいはーい」
なんだか一緒に暮らしてるみたいでとても楽しかった。
「はい、じゃあ後は煮込んで味を染み込ませるだけだからね。二人ともありがとう」
「はーい」
肉じゃが作りは、多分、無事で終わった。美味しいといいなあ。お母さんに指導してもらったからきっと美味しいはず。
「ご飯までもうすぐだろうから、居間でテレビでもみてる?」
「そうだね、そうしよっか」
おばあちゃんの入っているこたつに二人で入ってテレビを眺める。夕方のワイドショーがやっていた。時間はもう六時二十二分だった。
きらなちゃんもう少しで帰っちゃうなあ。
「ただいまー!」
ドタドタと廊下を走って、居間に天が飛び込んできた。
「あら、おかえりなさい。今日は早いのね」
お母さんが台所から顔を出して天に言った。
「うん、今日はみんな早く帰っちゃった。用事があるんだって。僕もなんか用事ないかな」
「ないわよー、あ、そうだ。綺羅名ちゃんが来てるわよ。晩御飯も作ってくれたの」
「きらなちゃん?」




