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たかしちゃん  作者: 溝端翔
第二部 たかしちゃんと竹達くん
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今日のご飯何かな?

「ね! 意外と覚悟できるもんでしょ」

「うう、覚悟はできたけど、緊張するよう」


 心臓がバクバク音を立てている。


「大丈夫、忠なら来てくれるから。断ったりしないから。見せるって約束したんでしょ? じゃあ絶対来てくれるわ。あいつ、ああ見えて優しいからね。たかしちゃんを任せるにはまだまだだけどね」

「うん、頑張る」


 胸の奥が痛い。緊張する。どうしよう、ご飯食べれるかな……。


「きらなちゃんは阿瀬君と遊んだりしないの?」

「な、ななななんで蹴人?」

「だって、きらなちゃんの好きな人でしょ」


 私は仕返しをした。きらなちゃんの好きな人は絶対阿瀬君だ。恋という感情が少しもわからない私でも、好きなんだろうなって思う。


「あ、遊ばないわよ。そりゃ、小学校の頃はよく遊んでたけど、中学になって部活入って全然遊ばなくなったわね」


 きらなちゃんは少し寂しそうな顔をする。


「またみんなで一緒に遊ぼ! まだサッカー教えてもらってないし、まだまだ遊べるよ!」


 私は元気づけるように言った。きらなちゃんがしょぼくれてる所は見ていられない。


「そーだね! また休み教えてもらって一緒に遊ぼ! また水風船する?」

「水風船楽しいけど、もう二回もお母さんに怒られたからなあ……」

「今度は初めから水風船で遊ぶって伝えとけば大丈夫だよ。服も濡れてもいい服にしてさ。ホースも準備しておくから!」

「そっか、そだね。お母さんに先に言っておけばいいのか。うん、そうする」


 きらなちゃんと話すのはとても楽しかった。そういえば、きらなちゃんにもまだ電話をしたことがない。初めてお友達に電話をするのが男の子になってしまった。


 うっ、思い出したら緊張してきた。


「ふふ、たかしちゃん忠のこと考えて緊張してるでしょ。ドキドキ?」

「うん、ドキドキ。私、おばあちゃんとかに電話かけたことあるけど、友達に電話かけるの初めてなの。それが男の子になっちゃった」

「そうなの? それはドキドキだね」


 きらなちゃんは笑った。


「もう、ドキドキだよう。先にきらなちゃんに電話しておけばよかった……」

「あはは、もう遅ーい。たかしちゃんの最初の電話は忠です! けってーい!」

「うう、きらなちゃんのばかあ」

「あはは」


 緊張するけど、心臓が飛び出しそうだけど、全然嫌じゃなかった。今日は頑張る。頑張って電話をかけるって決めた。


「たかしちゃんの恋の始まりかあー……。初々しいなあ……」

「だからー! 違うんだってば!」


 ぺしぺしときらなちゃんの肩を叩いて否定した。確かに竹達くんのことは毎日考えるし、気にはなるけれど、でも、本当にわかんないんだもん。


 すうっと鼻にいい匂いが入ってきた。お母さんがご飯を作り始めた気配だ。


「ねえねえ、きらなちゃん。今日のご飯何かな?」

「ん? えーっとねえ」


 二人で鼻ですんすん匂いを嗅いで、晩御飯を当てようとした。


「この匂いはコロッケだね! 間違いない!」

「えーほんとー? コロッケってこんな匂いだっけ。私はパスタだと思うなあ。カルボナーラ!」

「えええ、たかしちゃん鼻ほんとに付いてる? 絶対コロッケだって、この匂いは蒸したじゃがいもだよ」

「えーパスタを茹でる匂いじゃない?」


 絶対パスタの匂いだとおもう。間違いない。


「そもそもパスタなんて茹でたらもうご飯出来あがっちゃうよ? ご飯まだでしょ?」

「あー、そっか。天帰って来てからだもんねご飯。じゃあパスタじゃないのかあ」


 パスタの匂いだと思ったのになあ。


「ほら、ね! だから絶対コロッケだよ。間違いない」

「ほんとかなあ。うーん、難しいなあ」

「ね、見に行ってみる?」

「そうだね、見に行ってみよっか」


 私たちはコソコソと下に降りて台所の方に向かった。

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