今日のご飯何かな?
「ね! 意外と覚悟できるもんでしょ」
「うう、覚悟はできたけど、緊張するよう」
心臓がバクバク音を立てている。
「大丈夫、忠なら来てくれるから。断ったりしないから。見せるって約束したんでしょ? じゃあ絶対来てくれるわ。あいつ、ああ見えて優しいからね。たかしちゃんを任せるにはまだまだだけどね」
「うん、頑張る」
胸の奥が痛い。緊張する。どうしよう、ご飯食べれるかな……。
「きらなちゃんは阿瀬君と遊んだりしないの?」
「な、ななななんで蹴人?」
「だって、きらなちゃんの好きな人でしょ」
私は仕返しをした。きらなちゃんの好きな人は絶対阿瀬君だ。恋という感情が少しもわからない私でも、好きなんだろうなって思う。
「あ、遊ばないわよ。そりゃ、小学校の頃はよく遊んでたけど、中学になって部活入って全然遊ばなくなったわね」
きらなちゃんは少し寂しそうな顔をする。
「またみんなで一緒に遊ぼ! まだサッカー教えてもらってないし、まだまだ遊べるよ!」
私は元気づけるように言った。きらなちゃんがしょぼくれてる所は見ていられない。
「そーだね! また休み教えてもらって一緒に遊ぼ! また水風船する?」
「水風船楽しいけど、もう二回もお母さんに怒られたからなあ……」
「今度は初めから水風船で遊ぶって伝えとけば大丈夫だよ。服も濡れてもいい服にしてさ。ホースも準備しておくから!」
「そっか、そだね。お母さんに先に言っておけばいいのか。うん、そうする」
きらなちゃんと話すのはとても楽しかった。そういえば、きらなちゃんにもまだ電話をしたことがない。初めてお友達に電話をするのが男の子になってしまった。
うっ、思い出したら緊張してきた。
「ふふ、たかしちゃん忠のこと考えて緊張してるでしょ。ドキドキ?」
「うん、ドキドキ。私、おばあちゃんとかに電話かけたことあるけど、友達に電話かけるの初めてなの。それが男の子になっちゃった」
「そうなの? それはドキドキだね」
きらなちゃんは笑った。
「もう、ドキドキだよう。先にきらなちゃんに電話しておけばよかった……」
「あはは、もう遅ーい。たかしちゃんの最初の電話は忠です! けってーい!」
「うう、きらなちゃんのばかあ」
「あはは」
緊張するけど、心臓が飛び出しそうだけど、全然嫌じゃなかった。今日は頑張る。頑張って電話をかけるって決めた。
「たかしちゃんの恋の始まりかあー……。初々しいなあ……」
「だからー! 違うんだってば!」
ぺしぺしときらなちゃんの肩を叩いて否定した。確かに竹達くんのことは毎日考えるし、気にはなるけれど、でも、本当にわかんないんだもん。
すうっと鼻にいい匂いが入ってきた。お母さんがご飯を作り始めた気配だ。
「ねえねえ、きらなちゃん。今日のご飯何かな?」
「ん? えーっとねえ」
二人で鼻ですんすん匂いを嗅いで、晩御飯を当てようとした。
「この匂いはコロッケだね! 間違いない!」
「えーほんとー? コロッケってこんな匂いだっけ。私はパスタだと思うなあ。カルボナーラ!」
「えええ、たかしちゃん鼻ほんとに付いてる? 絶対コロッケだって、この匂いは蒸したじゃがいもだよ」
「えーパスタを茹でる匂いじゃない?」
絶対パスタの匂いだとおもう。間違いない。
「そもそもパスタなんて茹でたらもうご飯出来あがっちゃうよ? ご飯まだでしょ?」
「あー、そっか。天帰って来てからだもんねご飯。じゃあパスタじゃないのかあ」
パスタの匂いだと思ったのになあ。
「ほら、ね! だから絶対コロッケだよ。間違いない」
「ほんとかなあ。うーん、難しいなあ」
「ね、見に行ってみる?」
「そうだね、見に行ってみよっか」
私たちはコソコソと下に降りて台所の方に向かった。




