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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと友達
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仕返ししちゃえ

「何言ってんのさ。きらちゃんは助けてくれたじゃん。私が引っ越したのは全然関係ないよ。お母さんが引っ越そうって言って、それで引っ越したんだよ。いじめられたからじゃないの。むしろ謝るのは私の方なの。ずっと引っ越しするって言えなくてごめんなさい。本当は引っ越すずっと前から言いたかったんだけど、言ったら今すぐ離れ離れになっちゃうような気がして、怖くて言えなかったのそしたら、気づいたらもう引っ越しの日になっちゃって」

「そうなの? いじめられたから引っ越したんじゃないの?」

「違うよ。確かに日向さんたちにはいじめられたし、辛かったけど、きらちゃんがいたから私楽しかったよ。一緒に泳ぐのだって楽しかったもん」

「私のこと嫌いじゃないの?」

「嫌いじゃないよ! 見てこれ。私の宝物なの」


 御城さんは自分の髪を止めていた星型のピンを取って私ときらなちゃんに見せた。キラキラと光って可愛いピンだ。


「あ、これ」

「うん、きらちゃんに貰ったやつだよ。私の宝物。私ずっと引っ越すって言えなかったこと後悔してたの。それに会いに行かなかったのは私もだよ。ずっと怖かった。ありがとうリボンちゃん。今日やっと言えたよ」

「私も、守れなかったことずっと後悔してた」

「何を言ってるんですか! きらちゃんには守られてました! 心配しなくてもきらちゃんはずっと友達だよ。ありがとう」

「そっか。よかった。たかしちゃん、ありがとう」

「たかしちゃん?」


 そうか、御城さんにはまだ私の本当の名前を言ってないんだった。ちょっとやっぱり怖いなあ。でも言わないと。


「あのね、私の名前。高橋たかしっていうの。変でしょ」


 ちょっと苦笑いになってしまう。やっぱりまだ慣れないなあ。


「あはは、かわいい! 変わった名前だね! じゃあたかちゃんだ! 私は御城麗夏、麗夏って呼んで!」

「れいかちゃん」

「はーい。え、じゃあ今日は二人で会いにきてくれたんだ。すごいね? 私の友達が私の友達と知らないところで友達になって、その二人が会いにきてくれるなんて」

「そうです」

「ねね、お話しよ。そっちはどんな感じ? こっこちゃんは相変わらず?」


 こっこちゃんてここちゃんの事かな。


「ここは相変わらず男みたいな脱ぎっぷりよ」

「きゃー、まだ私には真似できないなあ。すごいねえこっこちゃん」


 やっぱここちゃんだった。


「じゃあじゃあシューくんは?」

「蹴人はいまだに変わらずって感じね、何かにつけて絡んでくるし、まあサッカーはうまいわね」

「ふーん、相変わらずイチャイチャしてんだ」

「イチャイチャなんてしてないわよ! そ、それでいうならたかしちゃんは忠のことが好きなのよ」


 きらなちゃんが真っ赤になって言った。


「違うもん、お友達だもん。ぬいぐるみ仲間だもん」

「あはは、ただしーも相変わらずかー。ってなるとはじめんも相変わらずだろうな」

「うん、みんな相変わらずよ。いつでも麗夏が帰ってくるのを待ってるわ」

「そっか。久しぶりに遊んでみたいなあ」

「遊ぼうよ! 絶対! 麗夏はまだ水泳やってるの?」

「やってるよ。きらちゃんは?」

「私やめちゃった。今は天文部に入ってる」

「そっか、やめちゃったのか。私のせい?」

「ううん、違うよ。ちょっとせいかもしれないけど」

「ぐぬぬ、やっちまったか……」

「でもいいの。今は今で楽しいから」


 綺麗に沈む夕日を見る事なく、三人でいろんな話をした。


 たわいもない話がとても楽しくて、時間が過ぎるのがとても早かった。気がつけば日は沈みあたりは暗くなっていた。


「たかしちゃんはね、メアリたちにいじめられたのよ。髪も切られたの」

「あ、そうだよね。前はこの辺まであったもんね。ひっどいことするなあ。ありえない」

「本当、日向さんたちは酷い、と思う」

「ほんとメアリたちには困ったものだわ」

「なんか仕返ししてやりたいよねーこうなったら」


 れいかちゃんが両腕をぶんぶんと振って鼻息を荒くした。


「私のお母さんも、仕返ししちゃえって言ってた」

「仕返しかー。でも変に刺激したら逆効果な気もするからなあ」

「そっかー」

「そうだよね」


 仕返しか……。ちゃんと考えた事なかったな。だって、私一人じゃ絶対できないから。でも、確かにちょっとくらい仕返ししたっていいってお母さんも言ってたし。仕返しができるならしたいかもしれない。


 怖くない方法で。


「なんかいい方法ないかなあ」


 でも、たとえ自分が酷い目に遭わされたからって言って、いじめをするのは嫌だから。もっと楽しく仕返しがしたいなあ。仕返しかあ。みんなで水風船で遊んだときは楽しかったなあ。あの時も当てられた仕返しみたいに投げ合ったけど、楽しかった。


「み、水風船は?」

「それだ!」


 二人は私の顔を指差してニヤリと笑った。

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