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たかしちゃん  作者: 溝端翔
たかしちゃんと友達
112/211

リボンちゃん?

「それで、どこに連れてってほしいって?」

「おばあちゃんの入院してた病院の近くの丘の上にある公園」

「そんなとこがあるの?」

「あるの。そこで夕焼けが見たいの。綺麗だから」

「もうこんな時間なのね。いいわ、連れてってあげる。だけどどこかに連れてってほしいならもっと早く言いなさい」

「ごめんなさい。でも、すごい夕日が綺麗なんだよ」


 私とお母さんが話している間、きらなちゃんは不思議なくらいに静かだった。私はきらなちゃんの頭を撫でてあげた。きらなちゃんはちょっと不安そうな顔でニコッと笑った。


 私ときらなちゃんはお母さんの運転する車の後部座席に座って公園に向かった。きらなちゃんはすごく緊張した顔をしていた。


「大丈夫。きらなちゃんはきらなちゃんだから」


 すっごく余計なお世話かもしれないと思ったけれど、私にできる二人への恩返しは、二人を繋ぐことだと思った。もしかしたらこのために私は大和中学校に転校してきたのかもしれないとまで私は思った。ちょっとメルヘンチックで誰かに知られたら恥ずかしいけれど、本当にそう思った。


「ここであってる?」


 お母さんが公園の横に車を止めた。その公園は前きた時と同じように公園の中央に大きな木が立っていて、小さくて静かな公園だった。


「うん! お母さんここで待ってて」

「どれくらい?」


 あ。どれくらいだろう。御城さんがいつくるかも、そもそも来るかもわからない。


「えっと。一時間くらい」

「ええーやだあ。一時間も? じゃ夕焼けの時間に迎えに来るからここで遊んでなさい。お母さんは近くのスーパーでお買い物してくるからね」

「はーい」


 遠ざかっていく車を見届けてから公園に入った。

 ベンチにブランコ、それから大きな木。たったそれだけの公園。木の上にはまだ誰もいなかった。


「座って待ってよっか」

「うん」


 …………。


 無言の時間が続いた。私も、きらなちゃんも緊張して俯くことしかできず、全然お話ができなかった。家にいるときはあんなにもお話が出来るのに、全く話題が出てこない。どうしよう、私が連れてきたんだから私がどうにかしないいと。どうしよう。困った。


「リボンちゃん?」


 声のした公園の入り口を見ると、そこには少し焼けた肌で少し荒れた髪を星のピンで止めたフリフリの白いワンピースを着た女の子が立っていた。


「御城さん!」


 心臓が高鳴る。きらなちゃんの方を見るときらなちゃんは顔を隠すように顔を背けていた。私と言ったらドキドキして仕方がない。


「リボンちゃんだよね! 髪短くなってて違うかと思った! どうしたの? おばあちゃんのお見舞い?」

「ううん、おばあちゃんはね。もう大丈夫だった。本当はね、全然病気じゃなくって、私の勘違いだったみたい」

「そうなんだ。よかったね」


 御城さんは自分のことのようにホッとしてくれた。とても暖かくて、嬉しかった。


「そ、そうじゃなくて、今日は御城さんに会いにきたの」

「私に? なになに。嬉しいな。あの時はまたねって言ったけど、もう会えないと思ってたから」

「私も、もう会えないかと思ってた。でも会えた、すごいね! すごいね! えっとね、えっとね」


 私はきらなちゃんの手を掴んで立ち上がった。きらなちゃんは立ち上がらなかったけれど、御城さんはきらなちゃんに気づいた様子でじっくりと様子を伺った。


「……えっ。もしかして、きらちゃん?」

「えっ、わ、わかるの?」


 きらなちゃんは少し涙を浮かべながら御城さんの方を向いた。


「うん。わかるよ。見た目、髪の色とか髪型とかがすごく変わってたから最初は気が付かなかったけど。わかるよ! だってきらちゃんだよ? なんで? すっごい金髪じゃん。何があったの」

「これは……芽有たちに馬鹿にされないように」

「えっ?」

「あのね、麗夏。私、私」


 きらなちゃんはいつものような元気な声ではなく、震えた声で話した。


「私、麗夏に謝らないといけないのに。ずっとずっと謝りたいって思ってたのに、今まで何にもできなかった。ううん、しなかった。私逃げてたの」


 御城さんはきらなちゃんの顔をじっと見つめて話を聞いていた。


「先生に聞けば、麗夏がどこに引っ越したかなんて簡単にわかるのに、ずっと何もしなかった。ごめんなさい。芽有たちのこと、麗夏がいじめられてるのに気付いたのに守れなかった。辛い思いさせて、転校までさせちゃった。本当にごめんなさい。もっと早くに謝りに来ないといけなかったのに、私、怖くて。出来なかった」


 きらなちゃんはゆっくりと頭を下げた。その頭を御城さんはゆっくりと撫でた。


 きらなちゃんはびっくりしたように顔を上げた。

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