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第八話 一旦の終幕――、闇の中の語り

 そこはどこともとれる闇の奥――、二人の人物が相対し会話している。


導師長「ふむ……、勇者はいまだ動かず――と?」

導師「はい……、彼は本当に【事実】を知らないのかも知れません」

導師長「いや……、そう判断するのは早急であるだろうな、――そう判断して、世界の破滅へとつながる可能性を見逃したでは済まない話だ」

導師「……」

導師長「世界の事実を知った、かつての他の勇者のように――、星神システムそのものの消滅を望むようになるとも限らん」

導師「それは――、どうでしょうか」

導師長「ふむ……、そうか、君は彼の【かつての旅の仲間】でもあったね?」

導師「はい……、だから、私には彼がそのような方法を取るとは思えないのです」

導師長「ふむ……」

導師「星神システムはこの世界の根幹に根付いている機能です。それが失われればまさしく滅亡に匹敵する災厄が世界にもたらされる――、それは当然でしょう。でも、だからこそ――、そういった人々が苦しむ選択を、あの【勇者様】が選ぶとは到底思えないのです」

導師長「だからこそ……、彼は世界の真実を知りながらあえて動いていない――、もしくは動けない、――と?」

導師「多分、それが真実なのでしょう。現在の【勇者様】は、おそらく星神システムを正すための情報を集めているのだと――、私は考えています」

導師長「ふむ――、たとえ、それが真実であろうと、我らは世界滅亡への可能性を排除せねばならぬ。かの勇者が心変わりする可能性はゼロとはいえまい?」

導師「……」

導師長「とりあえずの監視は続けよう。そして、世界の真実を知っている素振りを彼に認めた場合――、我らは行動を起こさねばならぬ」

導師「それは――、彼を……」

導師長「かつて【世界を滅ぼしかけた勇者】と同じだ――。世界のためにこそ【魔王が消えて不要になった勇者】を処分しなければならぬのだ――」


 その言葉に【導師】は深い悲しみを得る。

 ゆえに【その人物】はただひたすら【勇者様】の、【世界の真実】に関わることのない、平穏で平凡な余生を願うのだった。


 この時をもって、この物語の時間は一旦巻き戻り――、勇者と魔王の始まりの戦いの記憶へと続いてゆく。


 ――第一章了。次回より【ヴァンドレイク王国編】開幕。

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