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黒蟻女王、魔導王国を滅ぼす決意を固める

「魔王は寵姫を何人も侍らせていて、中には娘をもうけている寵姫もいる。魔王討伐の折に散り散りになったが大部分が討伐、または囚われの身になっている」


 そんなことフェリクスに説明されるまでもない。しかし指摘せずに黙っておく。人間側がどれほど魔王様の事情を知っているか把握する必要があるからな。フェリクスの口ぶりからすればおおよそは暴かれてるようだがな。


「んで、勇者一行の一人だったフェリクスがどうして魔王様の御息女を助けようとしてるんだよ? まさかそのせいで人間どもから敵視されてんのか?」

「彼女達は人類の敵だった。少なからず人々に害を成したのは事実。なら罰せられて当然だろう。俺が彼女を救おうと思い立ったのは俺達勇者一行が人類から見限られてからだ。向こうが身勝手に俺達を切り捨てるなら、俺だって我儘を通すまでだ」

「ふぅん。魔王様の御息女をどうして救いたいかはこの際聞かないでおくわ。つまりはフェリクスは魔王様の御息女の救出に魔王軍残党の力を借りたいと?」

「然り。ロザリーほど大規模な勢力を持つ魔物なら魔王軍との繋がりもあるだろう? どうか取り次いでもらえないか?」


 フェリクスは深々と頭を下げてきた。

 妾、大いに悩んだ末、ワーカーアントに彼女を呼んでくるよう指示した。


 しばらくすると小屋の戸を開けてイヴォンヌが入ってくる。


「何かご用かしら? わざわざ私を人間の前に連れてくるなんてよほどの事情があるよう……って、雷撃勇者!?」


 いつものように優雅に髪を掻き上げたイヴォンヌは、フェリクスを見るなり距離をおいて身構えた。対するフェリクスの方も腰にぶら下げていた剣の柄に手をやって戦闘態勢に入ってしまう。


 やっべ。そう言えば双方の事情を鑑みたらこうなるのは目に見えてたわ。いやー悪いね、想像力が働いてなくてさ。このまま眺めるのもいいんだが、話が進まないから強制終了させてもらうぞ。


「お前は白蟻王妃!? 生きていたのか……!」

「それはこちらの台詞よ! まさかロザリーが救った人間がお前だったなんてね」

「ちょうどいい。何度立ちはだかろうと剣の錆にしてやろう」

「ふん、人類にも裏切られて孤立したお前など怖くもないわ。せめてもの慈悲よ。我等の糧になるがいい!」

「はいはい、二人共落ち着けよ」


 妾は対峙する二人の間に割り込んで双方に座るように促した。妾を挟んで睨み合いを続ける二人も妾が一向に退かないのを見て取って諦めたようで、それぞれベッドと床に腰を落ち着けた。


「イヴォンヌ。彼は数日前に妾が拾った勇者一行だったフェリクスだ。ま、紹介するまでもないか」

「ええ。良く存じてるわよ」

「フェリクス。彼女はナイトメアターマイトの真女王イヴォンヌだ。元々魔王様の寵姫だったけれど今は客将として副官を務めてもらってる」

「……ああ。何度も戦った相手だ」


 やっぱりか。魔王様の寵姫だったイヴォンヌがうちに来たのは魔王様が討伐された後。勇者一味を何度も追い詰めながらも仕留めきれず、魔王城での最終決戦では命からがらの脱出だったらしい。


 本来うちらデモンアントと彼女らナイトメアターマイトって犬猿の仲だからなぁ。妾とイヴォンヌが互いの女王や子らに言い聞かせてるから共生してるに過ぎない。ま、害は無いのでもし勢力範囲が拡大してもどっちかが巣を別にすることは無いと思うんだけどさ。


「じゃあ改めて自己紹介だ。妾はロザリー。デモンアントの真女王にして魔王様より魔王軍第三軍団長を拝命した将軍だ」


 で、仕方ないのでネタばらし。だって正体明かさないとフェリクスもイヴォンヌも引き下がってくれそうにないだもの。こういう時に物を言うのが立場よ立場。


「そうか……貴女が軍団長だったか」

「で、魔導王国で囚われの身になってる魔王様の御息女って誰さ? 妾は知らなくてもイヴォンヌなら知ってるだろうから教えてくれ」

「……マリエット」

「げっ。あのかまとと小娘ぇ?」


 マリエット? 知らんね。というか魔王様の家庭事情なんてとんと興味なかったから頭の中に無いや。いつぞやそうぼやいたら他の軍団長に敬意が足りないってげんこつ食らったけれどさ。


 どうやらイヴォンヌは知ってるようで露骨に顔をしかめてきた。イヴォンヌはわりかし好き嫌いがはっきりしてる方だけれど、こうまで嫌悪感を顕にするのも相当珍しいぞ。ちょっと興味が湧いてきたぞ。


「で、マリエットが何ですって?」

「魔導王国に掴まっててフェリクスは救い出したいんだとさ。で、妾らを頼ってはるばるやってきたってわけ」

「追い返しなさいよ。他の魔王軍残党にでも頼ることね」

「いやもう無理でしょう。城塞都市を攻め滅ぼしたんだからもう進むしかないぞ」


 どの道魔導王国とは完全に敵対した。どちらかが滅ぶまで戦うしかない。そのついでに魔王姫を救えようが救えまいが知ったこっちゃない。別に魔王様には忠誠を誓っていても他の連中と違って妾はそのご家族なんてどうでもいいんでね。


「フェリクス。妾らは魔導王国を攻め滅ぼす」

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