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第二王女、第一王女に勝利する

 さすがにティファニーが得意にしてるだろう遠距離戦でも三人がかりだと手に負えないらしく、次第に攻撃の手数が少なくなった。するとこちらの攻撃の機会が増えるので更に弾幕の密度が増していき、ますます防御に集中するしかない悪循環だ。


 ティファニーの顔が苦悶で歪むが、アレは……。


「やめなさい、やめて……!」

「お姉様、観念して下さい!」

「あはっ、なぁ~んちゃって!」

「っ!?」


 妾達三人の攻撃が同時に魔法の障壁にぶつかった瞬間、ティファニーの傍から幾重ものマジックキャノンが放たれた。たちまちに妾達の攻撃を貫いて容赦なく襲いかかってくる。妾達は必死に防御と回避を繰り返しながら反撃するも、ティファニーは防御壁を張ったままで一般攻撃魔法を発動していた。


 やっぱそんな気がしたんだ。彼女から漂ってくる汗の匂いから焦りや憤りが感じられなかったからな。調子に乗る妾達の油断を誘って一気に反撃に出る作戦か。随分と底意地の悪いこった。


 事前に察知した妾やイヴォンヌは相手の波状攻撃にも難なく対応。しかしアニエスは不意を突かれたようで直撃を受けていた。


「きゃぁっ!?」


 アニエスの身体が弾き飛ばされて石畳の地面を転がる。妾は翅を羽ばたかせてアニエスの手を掴み、追撃に飛ばされた魔法弾から逃れる。あ、低く飛びすぎてちょっと脚引きずっちゃった。もっと高く飛ぶか。


 アニエスもそれなりには戦えてるんだが、元老院議長って立場から察するにあまり第一線での戦闘経験は無いみたいだな。技量はあっても勘が働いてない。ま、助っ人に一丁前な戦力は高望みか。戦えるだけ良しと割り切るべきだな。


「あ、ありがとうございます……」

「気にしない気にしない。にしてもちょっと開けた場所で戦う相手じゃないなぁ。狭い巣の中に誘い込んだら楽勝なのに」

「……大技を使って一気に勝負をかけます。その間に足止めをお願い出来ますか?」

「別にいいけど……。碌な策じゃなかったら承知しないからな」


 妾はアニエスを地面に下ろしてから翅を広げて跳躍、一気にティファニーとの距離を詰めていく。妾を振り切るべくティファニーも加速、妾を撃ち落とすべく後ろ向きにマジックアローを放つも闇雲に撃ったんじゃあ狙いがいい加減。回避は余裕だ。


 更にはティファニーが向かう先めがけてイヴォンヌが攻撃を仕掛けるものだから相手の行く手は制限されたも同然。かと言って回避優先であまりに右へ左へと動き回ったら追走する妾に追いつかれてしまう。


「くっ! ハエのように鬱陶しいやつね!」

「それはアリの妾らに対する侮辱のつもりかぁ?」

「消えなさい!」

「おっと!」


 ティファニーがぶっといマジックキャノンをぶっ放してきたが当然回避した。自分の周囲に展開出来て飛ばす方向や軌道も自由自在なマジックアローと違ってマジックキャノンは放つ手や杖の向きで何となくどこに伸びるか予測出来るからな。ちなみに後ろの被害は一切考えてない。イヴォンヌがいたら自分で勝手に避けるだろ。


 妾の迎撃に集中したせいでイヴォンヌの放つダークネスショットが続けざまに命中。流石にマジックシールドを維持しきれないのか段々と彼女を包む淡い光が薄くなっていく。堪らなくなったティファニーがイヴォンヌを仕留めようとして、


「サイオニックストーム!」


 アニエスの放った雷を伴った竜巻に飲み込まれた。


 突風と雷撃を懸命にこらえていたティファニーも最後にはなすすべなく猛威に晒されるしかなかった。竜巻の中をぐるぐると回る彼女の有り様を楽しむのもそこそこに、妾も巻き込まれないよう大慌てで離れる。


 やがて竜巻が収まるとティファニーは上空に投げ出され……また油断を誘ってる可能性を考慮してポイゾナブロウを一発お見舞いしとく。無防備に食らったのでどうやら演技はしていないようだ。


「容赦無いわねー」

「ほっとけ」


 中庭の噴水に落ちたティファニーだったが、満身創痍ながらも水の中から這い上がってくる。まだ諦めてはいないようで目が鋭く輝いている。しきりになにか呟いているものの妾の位置からでは小さくて聞き取れないな。


「どうする? このまま仕留めちゃう?」

「いや、ちょっと待った」


 とどめを刺そうと思ったらその前にアニエスがティファニーの傍に歩み寄った。冷たい眼差しで見下ろすアニエスをティファニーが血走った目で睨みつける。ティファニーがなにか仕掛けようとしたようだが、アニエスがその前に手をかざすと何も起きなかった。後で聞いたら体力吸収魔法ライフドレインを発動しようとして、それを攻撃無効のディスラプションウェーフで無効化したらしい。


「罪は償ってもらいます。大人しくして下さい」

「誰が……! あともうちょっと、あともうちょっとなの……!」

「……残念です。王太女だろうと法の裁きを受けてもらいますよ。否応無しにね」

「え、ちょっと、何をするつもりなの? やめて頂戴、やめ……!」


 ティファニーは取り返しがつかないことになるとでも察したような狼狽えっぷりを見せてくるも、アニエスは容赦なくティファニーの頭を手で掴んだ。そしてティファニーに顔を近づけて眼と眼を合わせ……、


「マインドコントロール」


 彼女の野望を打ち砕く決定的な一手を放った。

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