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白蟻女王、黒翼魔姫?に苦戦する

 ■(第三者視点)■


「さ、て。じゃあやりますか」


 イヴォンヌはロザリーの進撃を見送った後、目の前の存在に集中する。


 イヴォンヌは相対する魔導師の女を見覚えが無いとロザリーに説明したが、一部言っていなかった事実がある。敵が背中から生やす漆黒の翼は魔王城で何度も目にしたあの生意気な小娘だったマリエットのものだった筈だ。肌や髪の色もまたマリエット瓜二つであり、体つきや顔つきもイヴォンの記憶するカマトト女のものだった。


 しかし、イヴォンヌはひと目見て目の前の女が魔王の娘マリエットではないと断定した。何故ならイヴォンヌにとってのマリエットは単純に言い表せば女の敵兼男の主人。そんなマリエット独特の蠱惑的な雰囲気を目の前の女からは一切感じないからだ。


(と、言うより無理してマリエットを真似してるって感じがするのよねぇ)


 きっとマリエットの知人程度の間柄であれば彼女をマリエットだと言うだろう。イヴォンヌが魔王の寵姫でマリエットと密接な関係にあったからこそ違和感を覚えられたのだ。それほど巧妙に目の前の偽物は偽装されていた。


 一体何のためにマリエットのように振る舞う? これも魔導王国の策なのか? その思惑が何であれ敵は魔王軍でも並び立つ者が少ないだろう卓越した魔導師に変わりはない。であれば全力で排除するのみだ。


「じゃあ、お手並み拝見といきましょうか」


 イヴォンヌは飛び出して腕をふるった。人間たちが棍棒を用いて使ってきた技、ダブルスマッシュに似た二連続攻撃。それを敵は杖で上手く受け流す。イヴォンヌはすかさずもう片方の腕で強打の棍棒技ハードヒットを繰り出す。これも敵は杖を巧に動かして受け止めた。


 イヴォンヌは敵に魔法を使わせまいと次々と腕を振るった単純な暴力で攻めていく。敵は防御と回避と受け流しを使い分けて対処、逆にお返しとばかりに爆炎魔法フレイムブラストや凍結魔法フロストコフィンを放ってくる。


(こいつ、魔法の腕前は勇者一味の大魔法使いに匹敵するじゃないの……!)


 悪態をつきながらイヴォンヌは体術を駆使して敵と死闘を演じる。さすがの敵も近接打撃戦は不得手らしく、その表情は思わしくない。しかし敵が反撃に放つ魔法はどれもこれも強力なもので、イヴォンヌが回避する度に周りのアリが巻き添えを食ってしまう。


 打撃し続けたイヴォンヌは手応えを感じ始め、他の攻撃に混ぜて共振の棍棒技ツインレゾナンスを放つ。敵はそれも杖で防御しようとしたが、イヴォンヌの手と杖が接触した瞬間、杖が接触箇所を起点に砕ける。


「……!?」

「何度も打ち合ってれば固有振動ぐらい分かるわ。どんな名剣だろうとこの技の前には無力よ」


 敵は大きく飛び退いて距離を置いて凍気魔法グラシアルスパイクを発動。イヴォンヌは両腕を前に構えて防御する。ロザリーと同じく四肢は魔人とは異なる異形のもので防御力は鋼鉄の鎧を遥かに凌ぐ。冷たさは感じるものの凍傷には至らない。


 イヴォンヌは敵が次の魔法を発動する前に地面を蹴って石礫魔法ストーンバレットを発動、土の塊や石が高速で敵に降りかかる。敵は防御魔法マナシールドを発動して防ぎ切るが、その間にイヴォンヌは敵との間合いを詰めていた。


 再び接近戦が繰り広げられる中、突如としてターマイトソルジャー二匹が敵へと大アゴを開いて襲いかかった。完全な不意打ちだったものの敵は咄嗟に両腕を広げて左右同時に爆裂魔法エクスプロージョンをお見舞いして危機を逃れる。


「ふっ。悪いけれど私はロザリーと違って我が子を犠牲にしても全く構わないのよ」


 何故ならナイトメアターマイトは個にして群、群にして個。全ては種族を永遠に反映させるために行動する。ターマイトワーカーから女王に至るまで捨て駒にしてでも種の保存を優先させる習性を持つ。それは真女王すら例外ではないのだが。


 次々と襲いかかるターマイトソルジャーを処理し続ける敵は段々とイヴォンヌへの注意がそれる。それをイヴォンヌは見逃さず地爆魔法アースバーストを発動、周囲にいたソルジャーごと敵を空中へと吹き飛ばした。


「翼の無い人間は空中でやれることなんてもがくぐらいしか出来ないでしょうよ。そのまま死になさい!」


 イヴォンヌは腕を振り回し、渾身の力を込めて握り固めた拳を敵へと突き出した。これも棍棒技フィアーズノックアウトを自分の四肢だけで再現したものだが、威力は人間が棍棒を駆使して行使する技よりはるかに高い。身体能力がそもそも人間とナイトメアターマイトでは雲泥の差なのだ。


 敵が落下するのを見計らって放った拳は、しかし敵が咄嗟にイヴォンヌの立つ大地に向けて放った重力魔法グラビトンウェーブにより足下を陥没させられ体制を崩してしまい、上手く当てられなかった。逆に敵が続けて唱えた火炎魔法フレイムブラストをもろに食らってしまう。


「が……!?」


 さしものイヴォンヌも皮膚の防御力では耐えきれずに怯む。更には炎はイヴォンヌの口元を覆い続けて呼吸を阻害する。慌てふためき炎を振り払おうとしても執拗に絡み続けて燃え盛った。


 着地した敵はすかさずイヴォンヌへと間合いを詰める。途中でターマイトソルジャーが進路を阻むものの敵はソルジャーの大アゴを掻い潜って止められない。イヴォンヌが口から吐いた溶解液でやっと鎮火させた頃には敵に懐に入りこまれてしまっていた。


「しまっ……!?」


 大怪我を覚悟したイヴォンヌだったが、敵の攻撃が彼女に当たることはなかった。


「サンダーフォール!」


 突如として天からの落雷を避けて大きく飛び退いたからだ。

 一体誰がこの危機を救ってくれたのか、と周囲を見渡したイヴォンヌの視界に入った人物は、彼女が驚いている間に隣へと駆けつけていた。


「雷撃勇者……」


 イヴォンヌの盟友ロザリーが救った人間の勇者フェリクス、参戦。

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― 新着の感想 ―
あーこれは少なくとも中身はそういうことですね…可哀想に
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