表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/39

黒蟻女王、次の都市攻略の仕込みをする

 魔導王国側が本気出してきたからこっちもちょっと本気を出してやった。まずはランチャーアントの遠距離攻撃で敵を混乱させ、次にボーガンアントの中距離攻撃で敵の防御を半壊させ、最後にソルジャーアントでの近距離戦で圧倒する。ま、うちの基本戦術ってやつだな。


 途中で隕石魔法メテオストライクなんてとんでもない大魔法を使ってこようとしてた奴がいたからそれは妾直々に阻止させてもらった。さすが十賢者とかいう御大層な肩書を名乗るだけはある。


 正面の魔導王国軍を短時間で殲滅したので、森や山に布陣する魔導王国軍がこちらを取り囲んではこなかった。本来なら正面軍でこちらを食い止めて森軍と山軍でこちらに三方面攻撃を仕掛けるつもりだったんだろうがね。


「馬鹿だなぁ。わざわざ軍を分けるなんてさ。同時攻撃する前に各個撃破すればいいだけじゃんか」


 だからこっちもあらかじめ軍を三つに分けて、妾らデモンアントの別働隊が山に布陣した連中を強襲、イヴォンヌのナイトメアターマイトの別働隊が森に潜む連中に不意打ちを仕掛けた。即席の陣地を構築してたけど妾らにかかれば積み木の城みたいなものさ。


 それでも今回初めてそれなりに犠牲が出た。まあ戦略面では支障が出ない範囲だしこの程度なら補充がいくらでも効くのだけれど、それでも我が子が亡くなるのは女王として辛いものだ。せめてその躯も妾らの糧となっておくれ。


「それで、人間共の死体はどうするの? さすがにこの量はすぐに食べきれないし巣まで持ち帰るのは手間でしょう」

「一旦進軍は小休止させよう。新しい巣を作って前線基地にするついでに皆を休ませないと」

「あの天撃がもう一度襲ってきたらどうするの? 地面をえぐり出されたら巣穴ごと消し飛ばされちゃうわ」

「あんな威力の戦略兵器は何度も使えやしないって。犠牲が少なくなるよう広く浅く分散すればいい。それに、攻め手自体は緩める気がないし」


 大都市丸ごと吹っ飛ばすあの天撃もそれより遥かに広い大地のどこに妾らが潜んでいるか分からん限りおいそれとは使えまい。ソルジャーアントだって巣穴を掘るぐらいは出来るから、半日もあれば全個体が地中に潜るのだって充分可能さ。


 と、いうわけで掃討作戦もほどほどに妾達は森、山、丘など数か所に新たな巣を作ることにした。魔の森から新たな若い女王と雄アリを呼び寄せて、このつがいが子を生むまでの労働は妾直属の子らが請け負う。


 んで、人間どもの死体は新しい巣に真っ先に作った貯蔵部屋に敷き詰めた。総出で回収したので戦場跡からは死体が綺麗さっぱり消えてなくなった。いやあ、土地が汚染しないよう掃除してやったんだから感謝してほしいぐらいだ。


「さて、じゃあ進軍しよう」

「休ませるって言ったのをもう忘れたの?」

「次の都市は少数だけ連れて行けば済むからな。一緒に来るか?」

「そうね。巣穴作りに私が立ち会ったってしょうがないもの」


 陣地作成は任せて妾らは少数のアリを引き連れて次の都市へと向かった。着いたのは夜明け頃。さすがにここ数日大して休まずの強行軍だったものだからキャリアアントの上で仮眠を取った。仕込みが終わったら爆睡しよう。


 妾らが丘の上から眺める遠くの都市は開けた台地のど真ん中にあった。大河に隣接しておりその規模は直近で攻め落とした地方都市の数倍ほどか。都市を囲う城壁も立派なもので、防御塔や結界も城塞都市並の警固さに見えた。


「あれを攻め落とすとなったら苦労しそうね。隠れる場所が無いからソルジャーに突撃させても防御塔の雷撃魔法の的になるばかりよ」

「かと言って巣穴を直下まで掘るのも時間がかかりそうだし、河が近くにあるせいで土壌が柔らかそうで苦労しそうだ」

「で、子らに犠牲を強いたくないから搦め手を使うつもりなんでしょう?」

「そ。水源をあの河に依存してるなら実にやりやすい」


 と、言うわけで妾らは目標の都市には目もくれず、河のやや上流までやってきた。中々の急流なようで、時々前を横切る流木はそれなりの速さで河を下っていく。都市への生活用水は河から用水路を分岐させて都市中に行き渡らせているようだな。


 さ、じゃあ例のブツを投げ込め投げ込めー。ワーカーアントが団子状のブツを次々と河へと沈めていく。ターマイトカタパルトも河の向こう側へと投げ込んでいく。団子は河に溶け込んで流れていくものもあれば川底へ沈むものもあったりと様々だ。


「はい、じゃあこれで作業終了ー。あとは数日後の結果待ちってところか」

「この程度? もっと河をせき止めるぐらいに入れなくて大丈夫?」

「いいのいいの。人間ってろくに耐性無いからこれで充分効くさ」

「ま、じっくりと拝見させてもらおうじゃないの」


 団子状のブツが溶け込んだ濁流はいつものように水の恵みをあの都市へと与えていく。それが生命の潤いではなく死への片道切符を運んでくることになると果たして何人が想像しているだろうか?


 さて、次の仕込みは子らに任せて、妾は寝る! 城塞都市攻略からこれでもかってぐらい働いたからくたくたなんだよ。あとはバレないよう一旦退却しながら遠くで都市が破滅へ向かっていくのをただ待つだけだ。おやすみなさい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ