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ロリ鬼魔王と落ちぶれ勇者 ──第1章︰人族の勇者編──  作者: 一人記


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第9話「奇怪、奇天烈、お手伝い」

字下げあった方が良いか意見募集中。気軽にどうぞ


燃えている。


街が、燃えている。


「あ、おかあ……さ……?」


立ち込める硝煙と倒れていく家族の姿が、目に焼き付いて離れない。


窓の外は相変わらず朝日が昇っていて、隙間から見える青空に炎の赤がゆらゆらと揺らめいて踊っていた。


『逃げろ!逃げろ!敵襲だ───!!!』


カンカンカンと響く警鈴の鐘の音。

ざすざすという耳に残る、私の大切な街を踏み鳴らす大量の革靴の群れの残響歌。



「どうして、こうなったの……?どうして───?」



そして、私は、自らの眼前に突きつけられた鉄剣を。


震える体で見守ることしか出来ずに───


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ハルキくんッ!そっち行ったッ!頼んだッ!」


「──っ、は、はいッ!分かりましたッ!」


湿気の多い洞窟の中。

通路の奥底から湧いてくる虫型の魔物を、二人で対処して前に進んでいく……その中で、俺はハルキくんの有り難さを改めて実感していた。


───冒険者ギルドカード機能の『職業選択システム』は優秀だ。


その人の生体情報を読み取って、その人がこれまでの人生で学んで出来るであろう職業をピックアップして表示してくれる。

だからこそ冒険者という職業において、とても重視されるのは《ランク》と《職業》の二つであり、どちらも上位ランク上位職業であればある程重宝されるのだ。


「ふぅ……レントさんっ!

やっぱり《魔剣士》って凄いですね!複合職なだけあって戦い方が鮮やかというかなんというか……!」


「ははは、それを言ったら騎士職の《盾術士》も珍しいだろう?やっぱりハルキくんに頼んでよかったよ。信じて正解だった」


俺が戦闘している間、研究員さん達に魔物が行かないよう盾で応戦してくれていたハルキくんだったが……やはり騎士職が選択できるだけあって立ち回りが完璧だった。


シールドバッシュでやって来た《多百足モア・センチピード》を引き離し、再度距離をとって盾を構え直し応戦する所や、俺が来るまでは徹底的に距離を取りながら幾多ある足を潰すのに専念していた所。


そして、俺が他の昆虫魔物を倒してやってきた頃合いを見計らって、ぐっと攻勢に出た辺りが本当に良く周りが見えていて高評価だった。

俺の持論ではあるが、やはり騎士職はこういう所が上手い。経験則的に一緒に戦っていてやり易い相手だ。


「おぉー、このサイズの《多百足》を瞬殺できるんだね、レントくんは。瞬時に頭を潰す判断も見事だし、そのあとの処理も完璧だよ。良い腕前してるねぇ?」


そう言って、地に伏した《多百足モア・センチピード》を解体し、その"コア"を片手に笑うリエルサさん。

どうやら俺の働きがお気に召したようである。良かった。

これでもずっと戦闘訓練ばかりを繰り返してきた人生だったのだ。なんとか認めて貰えて内心ほっとする。


「それに君の連れてきてくれた、ハルキくん……だったかな?彼も良いね。盾職として優秀な部類に入ると思うよ。

……やはり、優秀な者は優秀な者同士で惹かれ合う性質があるのかな?俗にいう"同類"というやつだねぇ、きっと」


騎士職として、盾を構えながら前を先行してくれているハルキくん。その冒険者として大切な警戒心と慎重さを持っているであろう動きを見て、嬉しそうな顔でリエルサさんはそう総評する。


恐らく、棚からぼた餅的な感覚なのだろう。

特に期待していない、という訳では無いが、数合わせで呼んだ冒険者が思ったより優秀で喜んでいるのだ。


だって、この人───この道中で見た限り、たぶん護衛要らないぐらい強いしな。


「っ、おっと危ない。レントくん頭下げてねぇ?」


そんなことを考えていた次の瞬間だった。

ジュン───!という音と共に、やってきていた《偽鉱虫ロック・ビートル》の岩石のような堅い甲殻がぽっかりと撃ち抜かれる。


「ハハハ、やっぱりここの龍脈ダンジョンはおっかないねぇ?

こうやって魔力感知にも引っかからない敵がたまに居るからさ。擬態能力が高すぎるんだよね。虫系は。」


……やはり凄い腕前だ。

恐らく、蝙蝠族として夜目が効くというのもあるのだろうが、それを抜きにしても《魔法銃マギアカノン》の命中精度が凄まじい。


「す、すみません!

僕、索敵し逃してましたっ!申し訳ないですっ……!」


「ははは、いいよぉー。

偽鉱虫ロック・ビートル》は飛び立たないと気がつけない魔物だし。ハルキくんはそのままのペースで進んでねー」


正直、俺が知覚したのと同時だった。

その瞬間、俺が抜剣して接敵しようとする前に、リエルサさんは懐から取り出した丸みを帯びた熱魔法系の銃で魔物を処理したのだ。


「……凄まじい精度ですね。しかも威力も高い。その熱魔法の籠った《魔法銃マギアカノン》は手製ですか?」


「あぁ、魔脈を調べている科学者だからね。この位は作れるし自衛もできるよ。ある程度ね?」


魔力の消失した《魔法銃マギアカノン》に魔力を込めるリエルサさん。

その慣れた手つきを見て、俺はこのダンジョンの探索慣れだけじゃない、リエルサさんの《魔工職マギテック》としての練度の高さを垣間見ていた。


あのレベルの魔導具なら、普通の人であれば数分は魔力注入に時間を要するだろう。

しかし、リエルサさんは数十秒、いや、数秒で次弾を装填できるほどの魔力操作技術を有しているのだ。手練である。俺の造花で培った魔力操作とは地力が違う。


「にゃあぁ、やっぱり気持ち悪いです……!

このダンジョンの魔物さん、何回みても慣れません……キモ過ぎです……!」


白衣の上に少し大きめの皮鎧と、獣人用の耳穴の空いた兜を被ったにゃーちゃんが青ざめた顔で呟く。

まぁ、確かにこれは気持ちが悪い。自然環境型のダンジョンではこう言った虫系魔物が出てくることが多いが、やはり無理な人は冒険者でも無理だからな。


「にゃーちゃん、怖がらなくても大丈夫だよ。

俺が来る前に処理するし、それにリエルサさんも強いし。君の所までは届かせないよ」


「っあ、はい!ありがとうございますです!

レントさんもハルキさんも、ちゃんと守ってくれるので信頼してます!宜しくお願いしますですっ……!」


「うん、解ったよ。

今回の目的地まできちんと送り届けるからさ。安心してね!」


という訳で、俺はそんな風に所員さん一同の近くで護衛兼最終防衛ラインとしての役割を果たしながら、今回の目的地である《禍滝のダンジョン》の最深部───底にあるという《地底湖》を目指して順調に進んでいたのだ。


……なんでも、その《地底湖》の水底にとある機械を設置するらしい。


「魔脈に一番近い場所に、設置する機械、か……一体何なんだろう。少し気になるな……」


まぁでも、それも辿り着いたら分かることだ。

きっとシャルロッタさんの知り合いだし、魔法関係の研究かもしれない。

そしたら、この世界ももっと発展するだろう。良い事だ。

そう考えながら俺は、初任務から2回目の護衛依頼を順調にこなしていた。


ーー


「さぁ、レントくん。ようやく着いたよ。

ここが私たちの最終目的地───《地底湖》さ。」


眼前に広がる大きな湖。

洞窟内だというのに淡く光り輝いている水面を見つめながら、俺は感嘆の声を漏らしていた。


「これ……めっちゃ綺麗ですね……!?

洞窟なのに美しく光ってて、波がそこら中に反響して映し出されてて……なんというか、こう、凄いという感想しか出てこないです……!」


「そうだろう、そうだろう?

この地底湖の水は特別製でね。龍脈から沢山の魔力を供給されて育った、いわば『流体の魔力源』のような状態になってるんだよ。それで、光ってるのさ。」


───魔力はエネルギー体だからね。純粋な熱量が光と同じぐらい高いのさ……と、専門的な所を解説してくれるリエルサさんの言葉を聞きながら、俺は周囲を見渡し再度感動する。


透き通るような透明の水が、緑色に輝いて地底湖の底まで映し出している。壁面にはその水面の動きが投影されて波紋をなびかせては揺らいでおり、ぽちゃんぽちゃんという音と共に冷たい石の壁が波を立てるように動いて見えて目に新しい。


そして、地底湖の壁面や水底に、魔力を多量に含んでいるのだろう《水属性鉱石》の輝きがまるで星空のように広がっているのだ。


一体、この光景だけで何百、何千年の月日が掛けられて生成されているのだろう。

一般的に鉄の鉱石に魔力が浸透して淡く光り輝くまで三十年は掛かるとされているし、ここまでの強い光だと最低でも二百年……いや、もっと経っているかもしれなかった。


「龍脈直上のダンジョンという特殊条件下でしか成し得ない、超自然とダンジョンの神秘的異常性が組み合わされて出来た絶景さ。そうそう御目にかかれない代物だよ。

興味と好奇心を探求する冒険者を生業にしてこれを生きて見られたこと、誇りに思うと良いよ。きっとこれからの冒険を後押ししてくれるさ……良かったね?」


俺もハルキ君も、リエルサさんにそう言われて深く頷くしか無かった。

確かにこれは素晴らしい。

これからの人生で、ふと目を閉じて思い出すだけで心の底がじんと熱くなるような景色であることは間違いがないだろう。


「まさに『理の通じない世界』だな……」


───そう、これは神々の創り出した試練の場とされる、ダンジョンならではの光景だ。

もはやそこに存在する神秘性に、身震いするほどの畏怖さえ感じさせるような……素晴らしい絶景だった。


「でも、そんな場所でもね。

やっぱりダンジョンはダンジョンさ。ほら、あれを見てごらん?」


リエルサさんが指を指す。

指した先は地底湖の水底。光り輝く魔鉱石が塵芥のように存在している、くぼみの様な場所の奥であった。


『ꫝ᥅ꪊ᥅ꪊ᥅ꪊ᥅ꪊ᥅ꪖ……』


───そこには、龍が居た。


脚のような二対の大きな鰭を鳥の翼のように畳んで、警戒するように此方の様子を睨みつけている、首の長い歪な一本角の生えた龍だ。


あれは、下位龍だろうか、中位龍だろうか。


分からない。

しかし、明らかに龍種の特徴である《魔力発動媒体ツノ》を持った龍の姿が、そこにはあったのだ。


「……まさか、龍が居るとは。

竜ならまだしも、これは流石にBランク相当の依頼案件じゃないですか?」


魔物は大きくわけて《A~G》の七つのランクに分けられている。

対応しているのは各七つの等級であり、石級ストーンならGを討伐できる、銅級ブロンズならFを討伐できる、銀級シルバーならEを討伐できる……という様に、簡単な指標として表されているのだ。


───まぁ、その他に規格外を表すSランクというのもあるのだが、これは個人で殺りあう相手ではなく、国家単位で戦わなければならない相手なので今は関係ない。


だから、あの龍を倒すためには、最低でも《指揮級メタル》の冒険者が複数人欲しいのだが───


「ははっ、だからこそ君なんだよ。

あの高潔で偏屈なシャルロッタに認められたニンゲンくん。私は期待しているんだよ。君にね?」


「……そんな、過度な期待をされても困ります。

命を預かり護る身として、この相手では、俺一人では責任を負いきれない。護りきれません」


「うん、護りはハルキくんが居るだろう?

それに私もある程度は援護できるし。大丈夫さ。何とかなるよ。私はそう思う」


リエルサさんの謎の自信に、ハルキくんが『こいつマジか』みたいなぎょっとした目で彼女を凝視している。


わかる。普通の冒険者であれば、Bランクの龍なんて相手したくないのは当然だ。

それにハルキくんは冒険者になりたての銅級冒険者だし、多分俺やリエルサさんに比べて経験が浅い。正直、一番リスクのある立場にいるのは彼だ。そんな顔になってもしょうがない。


「あの、僕、護りきれる自信は……。

あまり……ないというか……」


だからこそ、こんな風に縮こまってしまっている彼を、こんな不相応な場所に連れてきてしまった責任として俺がこの依頼を断らないといけない……。


───いけなかった、のだが。


「まぁまぁそう言わずにさ。

……こっちには、かの《魔族殺しの勇者サマ》が着いてるんだから。どうにかなるでしょ。一人でも?」


そう、口元だけでにやりと笑った目の笑ってないリエルサさんに言われて、俺は……思わず、何も口にできず、固まってしまったのだ。


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