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Pants1 転生とパンツ

 「すまない。本当にすまない」


 目の前で長い白髭の男性がしきりに謝っている。姿は人間に似ているが、真っ白なトーガに身を包み、素肌はなぜかうっすら発光している。いかにも「神様」といった感じだ。


 「…おたくはどちら様でしょうか?それにここは一体…」

 

 俺とその老人がいるのはどこまでも何もない真っ白な空間だった。いわゆる精神世界という奴だろうか。老人が語りだす。


 「わしは人間界と魔生界を繋ぐ仕事を任されている者じゃ。まあ神みたいなものと思ってくれ」


 「神」


 「生物の魂というのは、消えてなくなったりはせぬ。一つの世界で役目を終えたらまた別の世界で生を受け、それをずっと繰り返す。いわば輪廻じゃ。お前さんも一つの世界で一つの人生を終え、今また別の世界で生まれ変わろうとしておる」


 「はあ」


 「で、わしは魂が滞りなく世界を行き来できるよう管理する神々の一柱なのじゃが…今回はちょいと手違いが起きた。それがお前さんじゃ。結論から言うとお前さんの来世はパンツじゃ」


 「へー、パンツ……パンツ!?」


 神サマの言うことには、俺は死んだが魂は別の世界で生まれ変わる。要は異世界転生するってことだろう。それは理解できたが…パンツとはこれまたどういうことなんだ?


 「わしにもよく分からんのよ。転生時の手違いはこれまでも前例があるが、人間がパンツに転生するっていうのは…流石に初めてっていうか…そうはならんやろっていうか…」


 あまりにも訳が分からない状態だが、それはこの神様も同じらしい。困っているのが自分だけじゃない時ってちょっと安心する。


 「転生先は前世での強い熱意や執着が影響するらしいんじゃが…なんじゃ、お前さんそんなにパンツに恨みでもあったのか?」


 なるほど、そういうことか。確かに死ぬ間際にあんなにパンツの事考えてる人間なんてのもそうそういないだろう。ちくしょう、俺は死んだ後まであのパンツに振り回されるのか。


 「一度決まった転生先は絶対に変えられん。とはいえこのまま君を魔生界へ送り出すのはあまりに不憫じゃ。そこでせめてものお詫びにできる限りの優遇措置を講じておいたよ」


 「優遇措置…チートスキルとかですか?」


 「そうじゃな、まず全てのスキル・能力パラメータは限界まで解放しておいた。もっともパンツにステータスを振ってどこまで役に立つのかは分らんが…うまく使いこなしてほしい。それともう一つ、ユニークスキルをつけておいた」


 「ユニークスキル?」


 「変身能力じゃ。動物でも自然物でも、なんでも好きなものに姿を変えられる。もっともこれは本来上位種族のための能力じゃから、元人間現パンツの君には一日三分程度が限界じゃろうが…」


 「得してるのか損してるのかイマイチよく分かんないっすね…」


 「ともかくわしにできるのはここまでじゃ」


 突然俺の後ろに真っ黒な穴が現れた。穴の向こうには大小無数の光がきらめいて銀河のようになっている。穴はゴウ!!!と音を立て、俺の体を吸い込み始めた。


 「少しでもお前さんの第二の人生、いやパン生が有意義なものになることを願っておるよ」


 「別に言い直さなくていいすよ!…あ!!一個聞き忘れてた!!!」


 「む、なんじゃ!?重要なことか!?」


 神が血相を変える。穴は凄まじい力で俺を無限の闇に引きずり込もうとする。


 ああそうさ、死ぬほど重要なことさ。巨大な引力に全身を引きちぎられそうになりながら、俺は渾身の力を込めて叫んだ。


 「俺が転生するのは!!!男のパンツですか!!!???それとも女のパンツですか!!!???」


 「…………………………………え?ああそうじゃな、えっと、お―――――」


 その瞬間、俺の体は完全に穴の中に吸い込まれて真っ黒な奔流の中に放り出されてしまった。水洗便所のウンコのように激流に押し流されながら、俺は慟哭した。


 「一番だいじなところおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 そこで俺の意識はパッタリと途絶えた。


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