表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/106

金の椿(つばき)

 むかし、むかし、お殿様のお城で盛大な宴が開かれました。お殿様は、大勢を招いて、食べたり、飲んだり、歌ったり、話したり、宴は真夜中になっても続いていましたが、客の奥方たちはお疲れでした。

 お殿様の子供がお腹の中にいる奥方もたいそうお疲れで、うかつにも大勢の客の前でおならをしてしまいました。

 おならの音を聞いたお殿様は、かんかんに腹を立て、

「この恥知らずめ。人前でそそうをするとは。お前は、もうわしの妻ではない。さっさと出て行け。」

 お殿様は、妻を小船に乗せると、海に放り出しました。

 数日後、気を失った妻を乗せた舟は小さな島にたどり着きました。

「まだ息をしているぞ。生きているぞ。」と漁師。

「身ごもっているぞ。」と別の漁師。

 親切な島の人達は、女の世話をし、小さな家まで建ててくれました。

 まもなく女は、その家で元気のいい男の子を産みました。女の人は物静かでしたが、男の子は活動的で、島の子供達と朝から晩まで遊びました。

 男の子が十二歳になったある日のことです。男の子は母親に尋ねました。

「みんなにはお父さんがいるのに、どうして僕にはいないの。」

「実を言うと、お前はお殿様の子供なのです。お前がお腹にいるとき、私はみんなの前でおならをしてしまった罰でこの島に来たのです。」

 男の子は、母親の反対を押し切って、父に会うことにしました。

 次の朝、男の子は、旅立ち、三日三晩寝ずに舟を漕ぎました。

 山の上に父の大きなお城が見えてきて、舟から下りると、美しい椿を見つけました。

 男の子は、手に椿の枝を持ってお城に歩いて行きました。

「金の椿はいらんかね。金の椿はいらんかね。」

 男の子は、そう言いながら、お城の周りを歩きました。

「金の椿はいらんかね。金の椿はいらんかね。」

 その声を聞いて、

「何と。金の椿だと。すぐにあの子をここに連れて来なさい。」

 お殿様家来に命じて男の子を呼びましたが、汚い男の子が持っていたのはただの椿の枝でした。

「うそを申したな。それは金の椿ではなく、普通の椿だ。覚悟せい。」

 息子は父親の顔を見て、

「この椿は、おならをしたことの無い人が植えると金の花が咲きます。」

「冗談を申すな。この世の中におならをしない人間などおるものか。」

 と父親は、大声を上げて子供に言いました。

「それでは、どうして母を島流しにしたのですか。」

「お前は、まさかわしの息子か。すまんかった。あの時はわしが馬鹿だった。許してくれ。」

 お殿様は息子に詫びると、妻をお城に連れ戻し、息子は、父、母と一緒に幸せに暮らしました。

ブックマークよろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ