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ねずみのすもう

 むかし、むかし、ある山奥におじいさんとおばあさんが住んでいました。

 とても貧しかったので、二人は、めったに町に買い物に行くこともありませんでしたし、お風呂に入ることも月に一回でした。

 おじいさんは小さな畑で働き、おばあさんは家で針仕事をしていました。

 ある日、おじいさんが焚き木を集めに山に行くと、何か聞きなれない音がするので、木の陰からのぞいて見ると、二匹のねずみが相撲の稽古をしているではありませんか。

 小さなねずみは、いつも大きなねずみに土俵の外に投げ出されていました。小さなねずみをよく見てみると、何と、それはおじいさんの家に住んでいるねずみでした。

 家に帰ると、おじいさんは見たことをおばあさんに話すと、

「まあ、ねずみが相撲をしてたんかい。」とおばあさん。

「おばあさん、大きいねずみは長者さんちので、小さいねずみはうちのじゃ。」

「おじいさん、小さいねずみがかわいそうじゃの。餅をこしらえて食べさせましょう。」

「それがいい。」

 おばあさんは、正月用のもち米を洗って、蒸して、臼の中に入れ、おじいさんが、木ねでもちをつき、おばあさんがもちを手ですばやくひっくり返しました。

 それがすむと、おばあさんはもちを手ごろな大きさに千切り、おぼんに並べて、棚にのせました。

「さあ、小ねずみ。好きなだけもちを食べて、大ねずみを負かしておくれ。」とおばあさん。

 その晩、さっそく小ねずみは棚のもちを見つけ食べました。

「うまいな。こんなにおいしいもの食べたことないな。」と小ねずみは言うと、次から次へと食べて、とうとう全部食べてしまいました。

 次の日、おじいさんは、ねずみの相撲を見に山に出かけました。

 一回戦、大ねずみ、「押し出し」の勝ち。

 二回戦、小ねずみ、「投げ落し」の勝ち。

 三回戦、大ねずみ、「つり出し」の勝ち。

 四回戦、小ねずみ、「押し出し」の勝ち。

 おじいさんは、とても満足そうでした。

 ねずみは、何回も稽古して疲れて、木の下に座り込みました。

「小ねずみ君、たった一日で、どうやってそんなに強くなったんだい。」と大ねずみ。

「おじいさんとおばあさんがこしらえてくれたもちを食べたんだ。」と小ねずみ。

「僕も、そのもちを食べないなあ。君の家に行っていいかい。」

「うちは、とても貧乏なんだ。お金を持ってきたら、食べられるよ。」

 おばあさんは、おじいさんが帰って来ると、さっそくたずねました。

「今日のすもうはどうでした。」

「いい取り組みだったよ。小ねずみはと大ねずみと互角に戦った。」

「こしらえたもちが役にたってよかったの。」

「ところで、大ねずみもおばあさんのもちが食べたいそうじゃ。今日ももちをこしらえてくれないかの。」

「お正月にもちが食べられなくなるけれど、いいですよね。」

 その晩、大ねずみが大きな袋を担いでやってきました。

「これが、おじいさんとおばあさんがこしらえたもちなんだ。さあ、食べて。」

「実にうまい。こんなおいしいもち初めてだ。」

 大ねずみと小ねずみは、お腹一杯になるまで食べました。

 おばあさんは、二匹のねずみに相撲の赤いまわしも作っておきました。

 朝になると、棚の上にお金が一杯入った袋がのっていました。

 おじいさんとおばあさんは、幸せな新年を迎え、町に買い物に出かけ、毎日お風呂に入りました。

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