第二十話
頭を悩ませていると天井から小さな声が聞こえる。
「殿下、オクタヴィアンです。調査が終わったので報告に参りました」
「入れ」
そう言うと音もなく降り立った彼は私が帝国に送り込んだ密偵だ。
「ご苦労だったな。どうだった?」
「はい。番様は5年前辺境の奴隷市場に売られちょうどそこに居合わせた影の長、アシルに買われたようです。恐らくですが番様はとても魔力が豊富でいらっしゃったのでそこに目をつけられたのではないかと……。そしてその後城に連れてこられた番様は地下で拷問まがいの訓練を受けていた模様です」
その言葉に怒りで手に力が入り思わず持っていたカップを握りつぶした。
「っ……!くそ!!やはりあそこにいたのか!!」
カップが割れて破片が床に散らばり落ちる。手のひらが傷だらけになったがいまはそんなこと気にならないほど怒りが湧き立つ。帝国の城の地下にだけはどれだけ頑張っても入ることができなかった。こんなことなら城を壊してでも、外交問題になろうとも押し通せばよかった……!
「おーおー落ち着けって。とりあえず最後まで聞こうぜ」
「…………ああ、続けろ」
「はい。調査をしていたら地下に小さな一室を見つけましたのでそこで生活していたのではないかと推測します。また、5年前より先の痕跡は全く見つけられませんでした」
「……お前の力を持ってしてもか?」
「はい。番様を奴隷市場に売り払った老夫婦を問いつめたところ、何も知らない、突然現れたとのことです」
「突然現れただってー?んな話あるか」
「ああ、まるで神隠しにあったみたいだな……」
「ええ、ですから私どもが調べた限りではそれ以上情報を得ることができませんでした」
「なるほどな。それなら仕方ない。引き続き頼むぞ」
「はっ」
再び天井へ戻っていくのを見送ると視線を前へ戻す。
「どう思う?」
「そうですね……。ここまで情報がないとなるともうこれ以上の情報は出てこないと考えていいでしょう」
「ふむ……」
確かにこれ以上は無理か。私は顎に手を当て考え込んだ。アメリー、君はいったい何者なんだ……?どこから来てどうしてここにいるんだ……?君と話がしたい。会って聞きたいことがたくさんあるんだ。
「殿下?」
「いや、なんでもない」
心配そうな顔でこちらを見るカロリーヌに首を振った。
「カロリーヌ、アメリーを頼む」
「はっ、命に代えましてもお守りいたします」
「ああ、頼んだ」
そう言ってカロリーヌは一礼すると部屋を出て行った。それを見送るとまた仕事机に座りペンを持つ。
「私が近くで守ることはできれば……」
「んなこと言ってもしょーがねぇからさっさとペン動かせ」
「…………」
そんなこと言われても辛いものは辛いのだ。番が近くにいるのにそばにいることも守ることも愛でることもできないなんて。
「アメリー……」
「…………だー!もう、めんどくせーな!とりあえず本でも読んで猫科の勉強でもしろ!ちっとは参考になんだろ!おら、はやく図書館行ってこい!辛気臭くてやってらんねーよ!」
追い出されてしまった。仕方ないので大人しく従うことにする。なんだかんだいってクレマンは面倒見がいい。幼い頃から一緒にいる仲だから遠慮なくものを言ってくれるのだ。
「……すまない、ありがとう」
「おう、いってこい」
机に向かうクレマンの後ろ姿に声をかけるとひらりと手を振られた。案外いい奴なのだクレマンは。私は少し口角を上げると図書館に向かって歩き出したのだった。
ルシアン様はただいま図書館で猫科の本を読み漁っています(笑)アメリーちゃんに逃げられたのとオフェリーさんからの接近禁止令が相当こたえているようです。
そしてストックがそろそろ切れそうで、また話を整理したいのでこれから二週間ほど更新を停止させていただきます。その間これまでのお話を少し改稿するかもしれませんがご了承ください。急いで書いたお話が多く言葉が足りないところが多々あったと思うので加筆修正をさせていただきます。
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