表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/21

第十六話

朝起きるといつも通り朝食を食べた後、着替えて準備をする。いつものように夢見が悪く、さらに昨日の図書館での読書で疲れているのか少し体が重い気がするが気のせいということにしておこう。



「では参りましょう」


「よろしくお願いします」



まずは一階の入口を右手に行った王室礼拝堂だ。礼拝堂は二層で構成され、上階は国王や王族用、1階はそれ以外の信者が利用しているそうだ。


次は二階に上がり様々な部屋を見て回った。ヘラクレスの間やヴィーナスの間などいっぱいあるので説明は省くとする。ちなみに使ってない部屋の方が多かった。



最後は鍛錬場だ。ここでは多くの騎士が訓練をしている。見学も自由らしいので隅の方から見ていた。騎士の皆さんはみんな屈強そうだ。そしてとても真面目に剣の練習に取り組んでいる。



「皆さん魔法は使わないんですか?」



後ろにいるカロリーヌさんに聞く。



「魔法を使う者はあまりいませんね。そもそも魔力が多くないので純粋に自分の力で戦うほうが効率的なのです。身体強化をするものもたまにいますが、そうすると鍛錬場が崩れる可能性があるので」


「なるほど……」



この緻密に計算された防御結界まで破ってぶっ壊すってどれだけ強いの。



「あー!カロリーヌだ!今日こそ勝負だ!今度こそ俺様が勝つ!」



訓練中の騎士一人がカロリーヌさんに気づいたようで木剣を持って突進してくる。見たところ犬獣人みたいだけどなんか弱そう。茶髪に茶目、顔は普通。うーん、小物感がすごい。



「はぁ……アメリー様すみません。少々お時間を……」



ため息をつくと、カロリーヌさんは私を後ろに庇う。


そしてスピードを落とすことなく突っ込んできた騎士を片手で止めた。わー木剣とはいえ素手で抑え込むってすごい。



「ぐっ……!」


「何度言えばわかるんだ。お前じゃ私には勝てない。諦めろ」


「うるさい!いつか絶対勝ってやる!」


「そうか」


「うわっ!」



カロリーヌさんはそれだけ言うと騎士さんを投げ飛ばす。


……なんかチワワに見えてきた。カロリーヌさんに比べたら随分小さいし勝てない相手にキャンキャン吠える感じがすごい似てる。



「痛ぇ……!手加減しろよ!怪我したらどうすんだよ!」


「馬鹿か。そんなヘマはしない」


「ああ!?」


「いい加減にしろ。護衛中なのが見えないのか」


「ちっ……。なんだよ。戦えよ。そっちのお嬢ちゃん、ちょっとこいつ借りていいか?」


「え?えっと……」


「あれ、このお嬢ちゃんも強いじゃん!ちょっと俺と戦えよ」


「は?」



いきなりの申し込みにポカンとしてしまう。


……訂正しよう。チワワと言ったのは間違いだ。チワワは笑って許せるけどこいつはかわいくもなんともないしただ腹立つだけだ。



「いい加減にしろ!アメリー様に失礼だぞ!!」


「は?別にいいだろ?なぁお嬢ちゃん。どうせ暇だろ?ちょっと遊ぼうぜ」


「…………」


「……いい加減にしろ」



絶対零度の声が聞こえ、騎士さんの首には正真正銘の真剣が突きつけられている。



「アベル・リンゼイ。それ以上の無礼は許さない。死にたいのか?」


「わかったよ。悪かったって。ちょっとからかっただけじゃんか。本気にするなよ」



全く反省の色が見えない。腹立つな。



「おい!ヴァレリアン!こいつ回収しろ!」


「はいはーい」



遠くの後ろの方から声がして目を凝らす。熊……かな。ちょっと濃い茶色の髪に同色の目。遠くからでも体が大きいのがよくわかるほど体格が良い。近づいてくるとやっぱり大きい。身長は2mくらいあるんじゃないかな。



「まーたやったのかお前は。いい加減諦めたらどうだ。そもそも経験値が違うんだ。勝てっこないんだよ。すみません、妃殿下。お騒がせしました。こいつには副団長である私がしっかり言い聞かせますので」


「え、あ、はい……」


「ほら行くぞ!」



熊さんに首根っこ掴まれズルズル引きずられていった。



「はーなーせーよー!離せよー!!」



嵐のような騎士さんがいなくなり、鍛錬場はまた先程のように木剣を打ち合う音だけが響いている。



「申し訳ありませんアメリー様。あいつが失礼なことをして……。止められなかった私の責任です」


「いえ、そんな……気にしないでください。それよりいつもああなんですか?」


「はい……私を見かけるたびにあのようにやってきては勝負を仕掛けてくるのです。まだ若く血の気が多くてほとほと困っています」


「若いんですか?」



あの言動だからもしかしたら私より若いのかも、年下なら水を流そうと思ったのだが……。



「ええ、まだ50を過ぎたばかりです」


「え……」


「?どうかいたしましたか?」



固まる私とその様子を不思議そうに見るカロリーヌさんを見てくすくす笑うオフェリーさんの構図ができあがった。そういえば昨日読んだ獣人の本に平均寿命は300歳程って書いてあった。そして大型動物になるほどその寿命は長くなる。



「カロリーヌ、アメリー様は23歳よ」


「え……」



今度はカロリーヌさんが固まった。



「……?」


「……オフェリー、今、何と……?年齢をお聞きしたので間違いでなければ……」


「ええ、アメリー様は23歳よ」


「……」



カロリーヌさんが衝撃を受けたような顔をして固まり、オフェリーさんはニコニコ笑っている。



「そんなに驚くことなんですか?私の国ではとっくに成人してるのに」


「「えっ……?」」



今度は二人して固まった。一体なんだというのだ。



「……何か変なこと言いました?」


「いえ……少々驚いてしまって。そんなにはやく独り立ちしないといけないなんて……」


「アメリー様は苦労されてきたのですね……」



二人の同情するような視線に思わず苦笑いしてしまう。そんな大層なものじゃないんだけど……。



「じゃあこの国での成人はいくつなんですか?」


「だいたい50歳くらいですね」


「だいたい?」



なんだその曖昧さは。カロリーヌさんの言葉に首を捻る。



「はい。種族によりますが本能が発達してくる年齢の平均がその辺なので」



ということは本能が発達するというか目覚めたら成人ということか。……ん?ちょっと待って。



「えっと……じゃあ王宮内にいる獣人たちはみんな50歳以上なの?」


「はい。その通りです。成人していないものはあまり家から出ませんから」


「わぁ……ちなみに殿下って……」


「王太子殿下は123歳です」


「ひゃ、100歳差……」



まさかの年の差に私は衝撃を隠せなかったのだった。

ついにルシアンの年齢が明らかに……!ここで整理しとくと


アメリー:23歳

ルシアン:123歳

オフェリー:187歳

カロリーヌ:164歳

クレマン:115歳


です。ついでに言うとアベル君は53歳となっております。けどみんな20代くらいの若さに見えるので外見だけでは判断できませんね(笑)


王宮の参考はヴェルサイユ宮殿です。興味のある方は是非調べてみてください。いろんな部屋があって面白いですよ。めっちゃキラキラしてます。


そしていつものように、楽しく読んでいただけた方はよろしければブックマーク、高評価、感想、いいねなどよろしくお願いします。誤字脱字を見つけた際は報告していただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ