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プロローグ

久しぶりに小説を書いたので文章が荒い・読みにくいなどというところが多々あると思いますが楽しく読んでいただけたら幸いです。よろしくお願いします。

今宵は曇天。わずかな月明かりさえも差し込まない夜の暗い森の中を一つの影が横切る。そして少し遅れて二つの影が追随する。三つの影の全身は黒いローブで覆われ、その表情は窺い知れない。全員手に剣を持っており、さらに懐には暗器を忍ばせている。そう影の正体は暗殺者、それも全員手練れだ。現在任務のため暗殺対象の元に音もなく駆けている最中であった。


夜目のきく先頭者が遥か先の暗殺対象の姿をとらえ、拘束の呪文を唱えると一気に速度を上げる。それに付随して後の二人も遅れをとるまいと加速するが彼の者はすでに目標に接触するところだった。


そして遅れてひらけた場所に出た彼らが目にしたのは剣を片手に拘束された対象から後ずさる先頭を走っていて本当ならとっくに任務を果たしていた者。



「なにをしている!さっさと『殺せ』!!」



黒いローブの一人が護衛が集まる前に任務を終わらせたいがためとっさに魔力を込めた命令をしたものの返ってきたのは苦悶の声のみ。さらにあろうことか剣を落とし胸をおさえる。命令に逆らおうとすることで胸にある隷属の刻印が心臓を縛りあげているのだ。しかし命令には抗えなかったのか震える手で懐から暗器を取り出し振りかぶる。



「……ごめん……なさい……」



懺悔の声は暗殺者に似合わないほどにか細く、弱々しい女のものだった。そして手に持っている暗器を振り下ろすと……辺りに鮮血が飛び散った。




***




「うっ……」



時は変わり、ここはオスナン帝国のとある貴族邸。たった今一人の男が音もなく背後から刺され小さなうめき声をあげて絶命した。



「……任務完了」



息絶えたのを確認し、無機質な声でつぶやく。そう彼女が今殺した男こそ今回の暗殺対象だったのだ。


彼女の名前はアメリー。オスナン帝国の“影”に所属している暗殺者だ。影とは皇帝の命令によって動く諜報機関である。三部隊に分かれており、諜報活動や偽装工作などを行う暗部、近衛騎士とともに陰から皇帝の護衛をする親衛隊、そして暗殺を行う暗殺部というわけだ。


さらにこの世界には魔法があり、科学技術はあまり発展していないがその代わりに魔法具というものが存在する。魔法具は魔力を流すと一定の効果を発揮する道具であり、日常生活で使うものから戦争に使われる兵器まで幅広いものがある。そして今彼女が手にしたものも魔道具の一つであり、登録された相手と連絡が取れる通信の魔道具だ。



「任務、無事達成いたしました」



彼女は報告を終えるとすぐにその場を立ち去った。まもなく暗部の死体処理班が到着するだろう。



「最悪……血がついた……」



先程の声とは打って変わって心底嫌そうな声とともに少し眉を寄せる。彼女は血が苦手なのだ。ではなぜ彼女は暗殺者なんてやっているのか。それはひとえに彼女が獣人であり奴隷であるからだ。


獣人とは動物と人間の特徴を併せ持つもののことを言う。総じて身体能力が高く、生まれ持った獣の力を引き出す事ができる。獣人といっても人型や半獣人……人型に動物の耳と尾がついた姿をとるものが多く、完全な獣の姿をとることはあまりない。彼女もまた例外ではなく、猫のような耳に尻尾を持っていた。


そしてここオスナン帝国は人族至上主義であった。獣人は奴隷として扱われており、人権など与えられていない。鉱山で働くものから戦闘奴隷まで様々な用途で売買されている。


といっても実は獣人以外にも奴隷はいる。奴隷には主に三種類あって、一つ目は犯罪を犯したものや借金を抱えたものが強制的になるものでこれは主に肉体労働を課せられる事が多い。二つ目は戦争で捕虜になった者や奴隷狩りにあった者たちでこちらは戦いに駆り出されることが多い。あと一つは彼女もその一人であるのだが、獣人という理由だけで奴隷に落とされ強制的に奴隷にさせられる。


奴隷は主人の許可なく死ぬことはできないし、主人の命には絶対服従しなければならない。さらに主人が死ぬと自動的に隷属の刻印が発動して死に至る仕組みになっている。


そしてもう一つ奴隷には致命的な欠陥がある。それが呪いによるものだ。呪いは文字通り相手を呪うものであり、奴隷契約の際に隷属の刻印とともに必ずかけられる。奴隷は主が命じない限り自らの意思で行動することができないのだ。さらに主人となった者の命令に逆らうと心臓に激痛が走り、耐えきれず死んでしまうものもいる。


呪いを解く方法もあるにはあるのだが不可能に近い。というのも解呪の成功率が低い上に呪いを解除するには膨大な魔力と複雑な術式が必要となり、奴隷一人にかけるだけで国を傾ける程の大金がかかるのだ。つまり実質解くことは不可能である。ゆえに奴隷は主人に一生尽くすしか選択肢がない。


そんなこんなで彼女は奴隷として生きていて、今日も命じられるがまま誰かを殺すために夜の街を駆け抜けるのだった。

読んでくださりありがとうございます!楽しく読んでいただけた方はよろしければブックマーク、高評価、感想、いいねなどよろしくお願いします。また、誤字脱字を見つけた際は報告していただけると助かります。

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