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ピロートーク

作者: 春風 月葉

 薄暗い寝室、ベッドの上で彼女は言った。

「ロマンチックな恋がしたかった。」私は振り返ることができず、カーテンの隙間から窓の外を眺めた。月が冷たく光っていた。

「世の中は便利になってしまったわ。」彼女は溜め息を吐いた。

「それの何がいけないと言うんだ?」私はグラスの中の氷をカランと転がしながら彼女に尋ねた。

「昔読んだ恋愛小説のような恋はもうできないの…。」彼女の声に怒りや悲しみはなかった。そこにはただ諦めだけがあった。

「私があなたに連絡をしたら返事はいつ返ってくる?」私はこの問いかけに即答した。

「すぐにでも返すよ。君を待たせたりはしない。」

「そうね。だからあなたからの返事を待つ時間はほとんどないわ。」彼女の声は何故か少し寂しそうだった。

「今週、あなたは何日私の声を聞いた?」私は少し考えてから、

「今週はあと二日残っているけど、通話も含めれば今日までで四日は話しているよ。」

「そうね、だからあなたの声も聴き慣れたわ。」彼女の声は晴れない。

「別れましょう。」と彼女が突然言った。私は慌てて、

「どうして?」と聞いた。彼女はフッと笑うと、

「冗談よ。私たちは別れられないわ。」と私の背を撫でた。月は雲に隠れ、寝室からは完全に明かりが消えた。私は彼女の隣に横になった。

 その夜を最後に彼女が私に同じような話をしたことはなかった。あの夜、彼女は私に何を伝えようとしたのだろうか。それはきっと彼女たちが教えてくれるだろう。月明かりの下、私は亡き妻の残した古い恋愛小説たちに皺だらけの手を伸ばした。

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