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2023 小野寺ルミ編  作者: 仮面ライター
3/21

2月20日(月)

 今日は朝から株式会社Mサイズさんのオフィスにお邪魔して、先日リモートで参加した打ち合わせの続き等々を行う予定になっている。Mサイズさんの主要取引先、アンドウデザイン事務所さんも含め、年度末の繁忙に加え、近々始まる統一地方選挙関連の仕事も加わる。

 引退の噂もあった哲朗さんのお父さん、原田一朗氏も次の4期目を目指して出馬する方向で調整しているらしい、と里帰りしたばかりの哲朗くんがタレ混んでくれた。ウチの株式会社Nライフも、主に紙媒体、ライター関係、ポスティング周りで忙しくなることは間違いなさそうだ。

「へー。結構、伸びてるんですね」

 先に到着されていた康徳さんは、哲朗さんの後ろで彼のモニターを見ながら呟いた。

「JKパワーだったり、安藤さんも紹介してくれたり、色んな要因があるみたい」

 武藤さんは印刷した資料を持って、私が通された応接スペースにやってくる。哲朗さん、康徳さんもやってきて、武藤さんが自分の端末とモニターを繋いでいる間に、哲朗さんは来客用の紅茶を出してくれた。

「森田さんはストレートでいいけど、小野寺さんにはフレッシュね」

 「そうでした、すみません」と哲朗さんはフレッシュとマドラーも用意してくれる。

「森田さんも小野寺さんも、月曜の朝からごめんね。来週には3月突入しちゃうし、この時間しか空いてなくって。芽衣さん、亜衣ちゃんたちにも謝っといて」

 武藤さんは顔の前で両手を合わせ、康徳さんに「申し訳ない」と頭を下げた。康徳さんは「いえ、大丈夫です」と答える。

「で、申し送り事項としては通常の業務に加えて、イチロウさんの選挙関連が来る見込みです。あとは年度末の駆け込みが去年、一昨年よりちょっと多そうなんで、もしかしたらNライフさんにもお力添えいただくかも、って感じです」

 武藤さんは淡々とモニターの資料をめくっていく。今年に入ってから案件の量も増えている。このところ滞っていたリニューアル案件なんかもやっぱり増えているらしい。

「その上で、森田さんのお姉さんの件と、コビトカバフィルムの件と、朋子さんからの無茶振りの件が飛び交ってる、と。順番に、フードトラックの件から行こうか。どんな感じ?」

 康徳さんが、「独立に向けて具体的な計画立案には至っていない」と話した。案件、ビジネスになるかはまだペンディングだ、と。

「差別化がまだ弱いというか、市場調査が不十分というか」

「小さくトライアルするにしても、パンチが足りない気はするよね」

「あの......」

 私の挙手に、武藤さんが発言を促してくれた。昨日、敬子さんからもらった「医療用テント等を転用する案」を伝えてみる。

「トラックで出向きながら、簡易な出店っぽい空間演出もできれば、テキ屋さん代わりに色々進出できないかなぁ、とか思ったり......」

「でも、飲食スペースも含めてデコるって、結構やってるよね」

 康徳さんの突っ込みがググッと刺さる。確かにコーヒースタンドとかタピオカ、鯛焼き屋さんでも、簡易テントと折り畳み椅子とかは見たことがある。私が意見をまとめている間、武藤さんはジッと考え込むと、

「いや、悪くないんじゃない? トータルプロデュースできれば差別化できるかも」

 武藤さんは、「ほら、安藤さんのところ店舗設計もやってるし」と補足する。話を聞いているだけに見えた哲朗さんが、何かを思いついたように口を開く。

「一輝さんも、賞取られてましたよね? トラックの方は」

「ウチの親父が整備士だ。ツテもあるかも」

 厳しそうな表情をしていた康徳さんも、武藤さん、哲朗さんのやり取りに段々エンジンがかかって来たような顔になっていく。プロデュース、ブランディングまで噛み合えば、メディア事業のウチにもいい話になるかもしれない。

 ふと時計を見ると、まだまだ10時半。午後からオフィスに戻って事務作業のつもりだったけど、これからの予定はリスケできたかな......。

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