①
静かな森の湖の畔に私は今立っていた、地蔵の体で座ることなんて出来ないのだが……あの村から去ってから数日が経ったが次はどこの街に行こうかと考えている。
救いを求める者は多いが全員を助けれるわけもないので善人で人の力ではどうしようもない悩みを抱えてる人を探すしかないな。
「こうも静かで鳥の鳴き声が聞こえてくるなんて眠たくなってくるな。 睡眠欲は全くないが」
地蔵に睡眠は必要ないからな、こうも何徹出来る体ならば前世に欲しかった気もするが前世のことを考えていても仕方ない。
それにこんないい天気なのだから今は前世のことも役割のことも忘れてのんびりしていよう、聞こえてくる鳥たちの鳴き声、木の葉ずれの音、バシャバシャと音を立てる湖。
……ふむ、バシャバシャ?
「誰か助けてー!」
「いかん、誰かが溺れているようだ」
のんびりし過ぎていたせいか人が溺れて居ることにも気づかなかったのは私のミスだな、すぐに助けてあげないとこのままでは溺れてしまうだろう。
地蔵念力を使い、溺れていた少女を浮かせて私の近くまで移動させる。
「助かっ……ひっ!」
「無事で良かったな」
少女は私の姿を見て少し怯えた様子で逃げ出そうとしたが助けたのは私だと気づいたのかその場に座り込んだまま頭を下げる。
「助けて下さりありがとうございました。 私の名前はエリザベート・アルソンでございます」
「私は地蔵のアヴニールだ」
「……アヴニール様は私を見て何も思いませんか?」
「そうだな、まずは風邪を引かないように服を乾かそう」
湖で溺れていたので服も髪も濡れてしまっている、いくら日差しが暖かいとは言えこのままで居たら確実に風邪を引いてしまうだろう。
私の言葉に驚いた様子のエリザベートだったが私には関係ない、風の魔法と火の魔法を上手く使いエリザベートの服や髪を乾かす。
ついでに地蔵鑑定をしてエリザベートの体にどこも異常がないかも確認するが風邪を引いてるとかそんな感じはなかった。
一番の問題はあれだな。
「これは……こんな簡単に魔法を使う方がいらっしゃるなんて……」
「何かしら訳ありのようだな、よかったら話してみるか? 知らない地蔵の方が話しやすいだろう」
「……」
エリザベートは思いつめたような表情をしているし、そして何よりエリザベートの顔には大きな火傷の跡がある。
地蔵鑑定をした私には何故こんな火傷の跡があるのかを知ってはいるが、勝手に鑑定したことを本人に言ってしまうのはマナー違反だ。
話したくないのであれば話さなくても良い、心理カウンセラーになれるほど地蔵人生を過ごしてるわけではないからな。
しかし、人に話した方が楽になれることもあるだろう、それはエリザベートが決めれば良い。
折角の可愛らしい顔なんだからその火傷の跡は治すつもりではいるがな。
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