②
「ありがとう、地蔵さん」
ぱぁっと笑顔で明るくなったお嬢ちゃん。
うんうん、子供は元気で笑顔で居るのが一番だな。
「では、行こう」
「うん!」
もちろん、私は地蔵なので歩けるわけがない、だけども私には神様から貰ったハイスペックな能力があるのだ。
移動することぐらい容易い容易い。
「地蔵さんってお空飛べるの?」
「ああ、地蔵に出来ないことはない」
私は空中に浮遊することが出来るのだ、ついでにお嬢ちゃんも疲れてるだろうからお嬢ちゃんの浮かしてあげる。
空を自由に飛びたいと言う人間の時の願いが叶ったのは嬉しいかもしれないな。
「わあー! 私も浮いてる!」
「さあ、お兄ちゃんを探しに行こうか」
「ありがとう!」
お嬢ちゃんは嬉しそうにはしゃいでいるので私は地蔵サーチを発動する、地蔵サーチとは地蔵である私を中心に何キロ先でも探知が出来る能力だ。
魔力の波長が一度でもわかれば誰がどこに居るかもわかる。
今は初めて会った人間がお嬢ちゃんが最初なのでお嬢ちゃんの波長しかわからないが、魔力があれば人間を探すことなんて簡単なのだ。
早速地蔵サーチを使ってみると動き回ってる人間が居ることがわかったのでそっちの方に向かってみることにした。
「ふむ、見つけたのはいいが」
「お兄ちゃん!!」
人間の魔力の波長の他に魔力を感じていたがまさか魔物に追いかけられてるとはな、10歳にも満たない子供ではあんな熊の魔物を相手には出来ないだろう。
ここは地蔵である私の出番だな。
「地蔵ウォーター」
魔法を使うには人間は詠唱をしているらしいが地蔵である私には必要ない、熊の毛皮は人間は換金することが出来るので気を使って毛皮を傷つけないように熊を倒す。
何、魔物でも生き物だ。
熊はエラ呼吸が出来るわけもなく酸素がなければ死んでしまうので水の塊で熊の顔を覆っただけ、それだけで死んでしまうのだ。
「お兄ちゃん!」
追い掛け回されて疲れたのかお兄ちゃんが倒れてしまってのでお嬢ちゃんを下ろしてあげればお嬢ちゃんはお兄ちゃんに駆け寄って行く。
子供なのにこんな森に来なくてはならないとは大変だな。
「ミシェル!? どうしてここに居るんだ?」
「お兄ちゃんが心配で探しに来たの……」
「馬鹿っ、森には魔物が居るから危ないって言っただろ!」
「だって……だってぇ……」
お兄ちゃんが無事で安心したのかぐすぐすとまだ泣き出しそうなお嬢ちゃん、お兄ちゃんもお嬢ちゃんを心配してるんだから説教は仕方ないな。
おお、熊も死んだのか大きな体も倒れてしまったな。
私には必要ないからあの死体はあの兄妹にあげるとしようか、子供だけでは持って行くのが大変だろうから私の地蔵収納に仕舞っておいておこう。
「うむうむ、無事でよかったな」
「っなんだ、この魔物は!?」
私が兄妹に近付いて行くとお兄ちゃんは私からお嬢ちゃんを守るように後ろに庇う、妹を庇おうとするなんて良いお兄ちゃんだな。
魔物と勘違いされたのは少しショックではあるが、この世界には地蔵なんて居ないのだから魔物であるゴーレムと勘違いしてしまうのは仕方ないのかも知れないな。